いとゆうの読書日記

本の感想を中心に、日々の雑感、その他をつづります。

米原万里の「愛の法則」

2008年03月17日 | その他
 この本は以前このブログで記事にした「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」の著者米原万里さんの4つの講演の話が掲載されています。

 第一章の「愛の法則」は、時々「えっ!」といいたくなるような、でも爽やかな毒舌の万里さんの論理に圧倒されるやら苦笑するやら・・・。

 人類という生物のオスとメスの微妙なかけひきが、戦争など世の中の大きな変化と平和な社会の繰り返しの中でより社会に適応した遺伝情報となって受け継がれていくのかなってところでしょうか。
 万里さんの「男はサンプルだ!」には思わず「ああなるほど」と苦笑してしまいました。まあ、人間の場合は現実的に考えるとややこしくなりますが・・・。


そう思いながら、私はダーウィンの次の言葉を思い出しました。

”It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent, but the one most responsive to change."

「最も強い種が生き残るのではなく、最も知的な種が生き残るのでもない、最も変化に対応できる種が生き残っていくのである。」


 第二章は第一章と共に万里さんが闘病生活の中での講演です。次世代に伝えたい強烈なメッセージを感じます。

 世間では盛んに国際化だとかグローバル化だとか叫ばれているのに、21世紀になっても日本という島国はどこかアンバランス。万里さんはその点について、「日本は非常に堅牢な天然の国境に囲まれています。」と表現しています。

 明治以降、森有礼さん辺りに始まって、政界、財界、文壇 その他いろいろなところで活躍したお偉方たちが「英語を第二公用語へ」と提言してきたようです。私だってこれには、「えっ!何で!」と言いたくなります。世界に誇れる文化を沢山持っている日本で話されている言語を疎かにする様な発言は何事かと思いきや・・・。実は、大真面目にお偉方たちが「日本語廃止、英語採用論」を言いたくなるほど、言葉の壁に多くの日本人が悩まされてきたってことでしょうか。

 それでも、肝心の一般大衆はいつもかなりノーテンキ。これも天然の国境の所為なのでしょうか。
 
 最近は英語を話せる日本人が非常に多くなってきました。とはいっても東京に訪れた海外からの友人や知人には「東京は思っていた以上に英語が通じない。」とよく言われますが・・。

 万里さんはまた、英語一辺倒の日本の外国語教育にも警鐘を鳴らしています。私もこれは確かにそうだと思いながらも英語以外の外国語はほとんどわからないので辛いところです。 いくら最強の言語だからと言っても、否、最強の言語だからこそ、英語を通してしか得られない情報にはやはり限りがあるってことですね。

 第三章、第四章は少し以前の講演ですが、とても興味深いものでした。異文化の中で生活し、他の言語を学んだ人が感じる共通点、また通訳者として活躍されていた万里さんの苦労がよく伝わってきました。

 通訳という仕事の難しさをちょっとユーモラスな話題を例にわかりやすく展開されています。他の人が言った言葉を万里さんが講演で取り上げたものですが、「シツラクエンではなくトシマエンでした。」と言うところから始まる話題は面白かったです。まあ駄洒落みたいなものなんですけれど、日本語の奥行きですね。私も外国人の友人に日本語の洒落を英訳するのに苦労します。だらだら話すと面白さは伝わりませんから。私なんかいろいろ言いまわしを変えても通じない時は結構簡単にあきらめてしまいますが、通訳という職業だとそうはいきませんね。

 言葉の微妙なニュアンスはどの言語も伝えるのは大変です。人によって語彙や経験など背景が違うので、それによってまた理解のされ方が違います。まず、わかることから取り組んでだんだん精度を上げていけるようになりたいものです。

 21世紀は、日本人が日本語を疎かにせず、天然の国境にも甘んずることなく、グローバルな社会を目指していくことが大切でしょう。



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