2007年9月から翌年6月までのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団コンサートスケジュールが届いた。
9月はバレンボイムと共にイギリスのプロムスに出演、ロンドン(2回)、ダブリン(1回)と公演をこなした翌々日には、スイスのルツェルン音楽祭で4日間の公演を行う。その後もEU圏内はもとより、ニューヨークのカーネギー・ホールでの演奏会が組まれるなど、相変わらずの東奔西走ぶりである。
日本人も大挙して押しかける正月のニュー・イヤー・コンサートの指揮は、ジョルジュ・プレートル。いよいよ御大登場である。
このスケジュール表で目を引いたのは、来年の3月29日と30日の定期演奏会プログラム、スウィングル・シンガーズとの共演で、ルチアーノ・ベリオの「8つの声と管弦楽のためのシンフォニア」が取り上げられている。
ベリオはイタリアを代表する現代音楽の作曲家。1925年に生まれ、2003年に没した。「シンフォニア」は1968年の作品。第2次世界大戦の後、世界が混沌に向かう頃に書かれた。初演のときから、声楽部はスウィングル・シンガーズだったと思う。1969年、私はスウィングル・シンガーズの来日公演を聞いているので(「シンフォニア」の演奏ではなく、彼らが本職とするジャズのコンサート)、その1年前に書かれた作品だと思うと、感慨深いものがある。
学生時代、イタリア文化会館に入り浸っていたおかげで、ベリオの作品はよく聞いていた。とくに、様々な楽器(声楽も含めて)のために書かれた「セクエンツァ」は、何度も聞くことになった。
ベリオの奥さんで、アルメニア系アメリカ人のキャシー・バーベリアンが来日したときも、西武劇場(いまのパルコ劇場)に駆けつけた。ここでも多くのベリオ作品が歌われたが、レノン=マッカートニーの「イエスタデイ」「ミッシェル」「涙の乗車券」の斬新な発想?にはたまげた。編曲はベリオだったと思う。
「シンフォニア」の第三章は、マーラーの「復活」のほかに、様々な音楽(バッハ、ベートーベン、ドビュッシー、ストラビンスキーなど)がコラージュされている。とりわけ、声部にはキング牧師の言葉や、パリの5月革命のときの学生の落書きなどが書き込まれている。
音楽は混沌を表明しながら、とてつもなく美しい。この美しさの意味が、未だに分からない。カオスを浄化する音楽の力とは?
(写真は、スウィングル・シンガーズ 現在のメンバー)