2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

天才アケタ

2007-10-21 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  
  久ぶりに天才アケタと飲んだ。今回はオランダから来たジャズ評論家を交えての激論、場末=旗の台の夜は熱く燃えた。

  議論のテーマは、小澤征爾からカール・シューリヒト、レニー・トリスターノ、シュトックハウゼン…などあちこちを飛び回り、いつものように結局は何の結論も出ないままお開きとなった。

  その席で、アケタズ・ディスクの新譜をもらった。「シチリアーノ」というアルバム。AKETAのピアノのほかに、藤井義明(サックス)、翠川敬基(チェロ)というトリオの壮絶なライブである。何が壮絶なのか?なんと、プレーの途中で藤井と翠川の口論~殴り合いが始まり、その様子がCDに収録されているのだ。

  殴り合いの真の理由は、天才アケタにもはっきりとは分かっていないらしい。藤井と翠川が、3曲目の「シチリアン・マフィア・ブルース」の途中でただならぬ雰囲気になっても、アケタだけは粛々とピアノを引き続けている姿が目に浮かんで可笑しい。

  アケタズ・ディスクはアケタ自身の筆による軽快なライナーノートが付いていて、これが演奏と同じくらい楽しいのだが、「シチリアーノ」のライナーノートには、藤井と翠川が、ライブ開始前から揉めはじめていた様子が書いてある。ライブ本番が始まる前に、フリージャズか、4ビートかを巡って、ライブハウス近くの飲み屋で二人が揉めはじめているくだりには驚ろかされる。ライブが始まる前に酒を飲んで喧嘩がはじまり、それが演奏の途中に再燃するなど、音楽を生真面目に考えているひとには許せない話かもしれない。

  奏者同士の喧嘩という話は、やはりマイルスとモンクのクリスマスセッションを思い出させる。1954年12月、マイルス・デイビスとセロニアス・モンクが共演した唯一無二の録音。一触即発状態でスタジオに入った二人の恐ろしーい歴史ドキュメントであるが、これは別の機会に書く。

  何はともあれ、アケタズ・ディスクの「シチリアーノ」は、ふやけた日本の音楽界に楔を打ち込む超強力盤である!お奨めです。

  *天才アケタ=明田川荘之(あけたがわ しょうじ)。ジャズ・ピアニストにして、西荻窪にあるアケタの店のオーナー。アケタの店に隣接する工房で制作されているアケタ・オカリーナは、日本製オカリナの最高峰である。アルバム「シチリアーノ」の中でも天才アケタのオカリナ演奏が聞ける。
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