今日の女王サマ

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ビル・エモット『日はまた昇る』

2006年03月20日 | 映画&本&音楽&TV
1990年『日はまた沈む』で日本のバブル崩壊を予測した、英国「エコノミスト」誌編集長の最新作です。 図書館で10冊ほどリクエストしたんですけど、最短で手元にやってきました。ほかに借りたいと希望している人が少なかったか?

『日はまた沈む』でバブル崩壊とその後の長い低迷期を予測した人が、今度は日本の回復を予測しているという。こういうことは内側(日本国内)にいる人間としては「なんとなく明るいぞ。回復しているんだろうな。しかし実際はどうなんだろう」と思っているところに、外(海外)から「そうなんだよ。安心して期待していいよ」と言ってもらえるみたいな気がして、ワクワクしながら読んだのですが、目新しいことは書いてありませんでした。

私は、自分が派遣社員だから「非正規雇用者の増加が、(人件費の節約で)企業の収益を押し上げもしたけど、需要が弱体化した」というところに注目しました。企業が正社員として雇用しない限り、低賃金は続き、技能を身につけられない若者が増え、生産性が損なわれ、経済成長は望めないというものです。

だから最近は少しずつ雇用が増えていますね。しかし、新卒の雇用だけ増えても、バブル崩壊以後あまりいい目を見なかった若者たち(既に30代になっている)は置き去りにされたままなのでしょうか。

『日はまた昇る』は小泉政権にも触れています。小泉首相は現状維持の究極の守護神であった自民党を改革の党に作り変えた、と述べています。確かに今までの自民党とは少し違っていました。猪瀬直樹と竹中平蔵という対照的な民間人2人を登用し改革に力を入れています。公務員の数と給与の削減、8つの政府系金融機関の改革と再編です。健康保険制度と年金制度の改革もやりたかったんだろうな。

本の中で小泉さんは9月に任期が切れた後、政界そのものから引退するだろうと書かれています。ものすごい見切り方ですね。いやエモット氏ではなく小泉さんの見切り方ですよ。

小泉首相が熱心に行う靖国参拝。これに関しても、14人のA級戦犯を別の戦没者慰霊施設に移して靖国と切り離すことを提言しています。また、中国や韓国の変化も必要だと。

日本と中国が和解し、共同慰霊祭のような儀式を行うのに絶好の機会というのがあるそうです。それは2007年7月12日、南京侵攻70周年の日だそうです。
しかし、来年までに両国が意識を改めるのは難しい。2001年10月以来、小泉首相は中国を訪問していないし、中国も1998年以来訪日はありません。

今後の日本は女性の労働力を大切にしなさいと書いてあります。まだそれほど危機感がないのは、労働力が不足しているという実感がないことですね。
非正規労働者で女性でもある私はもう少し早く日が昇って欲しかったなと思っています。蛇足ですが、ビル・エモット氏は「エコノミスト」誌を勇退することを明らかにしています。今後は執筆活動に専念し、日中関係を取り上げた新作を準備しているそうです。『日はまた昇る』では書き足りなかったのね。

あ~、今夜はカタイ話をしてしまいました。160ページ足らずの本でしたが、なかなか内容が頭に入って来ないので手こずりました。
『日はまた昇る』のあとは519ページもある桐野夏生の『DARK-ダーク』です。ページ数はすごいけど、こっちの方が断然読みやすい。所詮私の頭はエンタテインメント系を求めるのね。