虹はポケットの中に

再スタート
何度でも生まれ変わる
自分の音を探す旅

ライク・ア・サブタレイニアンズ17

2012-02-07 16:16:24 | ライク・ア・サブタレイニアンズ1
雪音はなかなか現れなかった
歩道わきにボロボロのジムニーsj-30(ボクの愛車だ)を寄せて
停めて待っていた、心配になって携帯をポケットから出したところで、
窓を「コンコン」って雪音が笑っていた
ドアを開けて雪音をナビシートに座らせた「どのくらい待った?」
「たくさん」「んもぉ、急いだんだよぉ」「じゃ、行こうか」「出発ぅ~」
あくまでも脳天気である・・・・・
夕方の込み合った街中を抜け、目的のお店へと向かった
初デートなのでお互いに少し緊張していた
雪音は、いつもよりおしゃれをしてきたみたいだった
お店に着いて、車をパーキングに停めて、車外に出て気が付いた
普段はコンバースなんかをつっかけている雪音が
ちょっと素敵なパンプスを履いていた
指差して「・・・それ・・」って言うと雪音が
「ごめんね、これ選んでて遅れちゃったの・・今日はどうしても
パンプスでデートしたかったの・・・」
「許す」と、ボク 「普段履かないから・・変じゃない?」
「すごく似合ってるよ、かわいい」
多少、バカップルである
ボクとのデートのために、精一杯おしゃれをしてきた雪音が愛おしくて
たまらなかった
ますます恋の深みにハマっていったのは言うまでもない

ライク・ア・サブタレイニアンズ16

2012-02-05 19:56:45 | ライク・ア・サブタレイニアンズ1
そして、雪音に恋をしているって気が付いた途端にボクは日毎に、まるで底が無くて長い長い
「恋」という穴に落ちて行った 落ちていくことは心地良いものだったけれど・・

ボクたちの毎日は、とても良い空気で流れて行った
ボクらは、飲み、食べ、働いたあとの時間は、キスをして、いちゃいちゃしていた
幸せってこれを言うんだろうなってそんな日々だった
雪音が「あたし、お給料日なんだ・・・ごちそうするから食事に行こ」
って言うのでボクはすぐにOKして、お互いの仕事が終わってからの時間に
待ち合わせることにした
いつものように、何を食べるかを決めるちょっとした「サスペンス」の後、
結局、和風の居酒屋にボクが連れて行くことになった
思えば、これがボクと雪音の「初デート」になった

当日、ボクは早めに待ち合わせ場所に着いて、雪音を待っていた

ライク・ア・サブタレイニアンズ15

2012-02-04 19:35:25 | ライク・ア・サブタレイニアンズ1
いつものように、ボクたちはビールの空き缶を山のようにテーブルの上に積み上げ、ワインボトルを
床に転がして前後不覚で眠った
出勤時間が朝早い、ボクが先に目を覚ました
雪音はまだ眠っている 非常に喉の渇きを憶えたボクは冷蔵庫からスポーツドリンクを出して
グラスになみなみと注ぎ、一気に飲んだ(ずいぶん飲んだからなぁ)
落ち着いたところで、部屋を見回すと、昨晩、確実にあちこちに脱ぎ散らかしたはずの
ボクのTシャツや、ジーンズがきちんとたたんであった
これにはボクは感激してしまった
着替えていると雪音が眼を覚ました「・・・・ミノルさん・・おはよ・・」
「起きたのか?もう少し寝てなよ」「うん、でもやることあるから」
そう言って雪音はキッチンで何かを始めた
しばらくすると、「ミノルさん、どうぞ」渡されたのはあたたかいコーヒーだった
ボクはコーヒーをすすり、仕事へ行く準備をした
時間になったので「じゃ、そろそろ行くね」と、玄関で靴を履こうとしたらいつものように
雪音がお弁当を渡してくれた「今日はサンドウィッチにしたの」「ありがとー」
「期待大ヤモンド」と、ボク「あんまり期待しないでね」雪音が言ったけれど
美味しいに決まってる(←完全に呆けている)
予想を裏切ること無く、とっても美味しくいただいた
サンドウィッチは、軽く焼いてあって香ばしかった
仕事が終わると、一目散に雪音の部屋へ帰った
夕食は雪音がフィレ肉のポアレを作り、バゲット、ワインとチーズで食事にした
まるでフレンチレストランのような味だった
相変わらず、ワインボトルは空になり、そろそろ寝ようか、って時にベッドの枕もとを見ると
真新しいパジャマがたたんで置いてあった「ミノルさん、寝るときそれ着てね、今日買ってきたの」
ただ、これだけのことが重なったせいなのか、ボクはこの時、自分が雪音に、まるで10代の若者のように
恋に落ちていることに気が付いたんだ

ライク・ア・サブタレイニアンズ14

2012-02-03 16:48:42 | ライク・ア・サブタレイニアンズ1
雪音の部屋の住人になって間もないころ、ボクたちが初めて、近所のスーパーに買い物に行った時の話・・・
「明日の朝のパンが買いたいの・・・それに、ビールもあんまり無いし、「じゃ、買いに行こう」と、ボクらは
歩いて3分ぐらいのスーパーへ行ったんだ
雪音って感情を表に出すのがちょっと下手だと、自分で言っていたけれど、でも
とってもうれしそうなヴァイヴレーションは伝わってきた
そんな近い距離でも、行き帰り、ボクたちは、しっかりと手をつないで歩いて行った
さんざん店内をぐるぐるして、目当てのパンとビール(もちろんモルツだ)
そしてポテトチップと、マクビティのチョコレートビスケットをボクのリクエストで買い、
部屋に戻った
帰ってまず、冷蔵庫から残っていたビールを出して乾杯したのは言うまでもない
ぽつり、雪音が「あたし、一緒に買い物行ってすごく嬉しかったんだ」「おれも嬉しかったよ」
「あたしたちお互いに気持ちを表すのが下手な恥ずかしがり屋同士だよね」って
いきなり雪音が言ったのでボクは驚いた、付き合い始めてこんな短期間で雪音は
ボクのことをかなりわかってくれていた
ビールを飲みながら、食事はテキトーに済ませ、ボクたちは寝るまでの残りの時間を
「いちゃいちゃして」、過ごした

ライク・ア・サブタレイニアンズ13

2012-02-02 18:40:17 | ライク・ア・サブタレイニアンズ1
お腹も満たされて、適度に酔ったボクたちは雪音のマンションに帰った
雪音は、お持ち帰りした、あの、激辛の炒め物を冷蔵庫にしまいながら、にやりと笑って言った
「お弁当に入れてあげるね♥
「やめなさい」「や~だ」「え~っ・・・また絶品ハンバーグがいい~」
「そんなに美味しかった?」「うん、最高だった」
「・・・うれしい・・・また作ってあげる」
「そうだ、ミノルさん、これ、」「何?」「合鍵・・作ってきたの」と、
少し恥ずかしそうにボクに鍵を渡してくれた
この時のボクは心臓が口から飛び出しそうなくらい血が沸騰していたけど
自分のキーホルダーにそのカギを仲間入りさせた
雪音がかけていたCD、JUDEの「ロバの馬車」が耳に残った
もちろん、鍵を受け取ると同時に、雪音を抱きしめてキスをした

こうして、ボクは雪音の部屋の住人になったんだ

ライク・ア・サブタレイニアンズ12

2012-01-31 20:57:02 | ライク・ア・サブタレイニアンズ1
ボクたちは、雪音のマンションからそう遠くない中華料理屋に入った
夕方で、まだ時間も早かったせいか、客はボクたちの他には二組しかいなかった
席を、小上がり(当然だよな)に決めて、雪音と向かい合ってメニューを広げた
思ったよりも小奇麗な店内だった
でも、やっぱり、三国志のコミックは全巻揃っていた・・・お約束・・・
まず、ビールだよねってことで 青島ビールをオーダーして
とりあえずかんぱ~い
「何食べる?」中華おこげ、青梗菜の炒め物、なんかを注文した
雪音が、「中国唐辛子と骨付き鶏肉の炒め」が食べたいと言ったので
とりあえずそんな感じで二人の宴は始まった
、「中国唐辛子と骨付き鶏肉の炒め」が絶品だったけど、めっちゃ辛かった
食べきれないので、お持ち帰りのパックをお店からもらって
残りは持ち帰った
飲み倒すような感じでもなかったので、お腹が満たされたところで
お店を出た、それでもけっこう飲んだので、お会計したら
ボクの財布はかなり軽くなった
雪音と一緒にいれるから、そんなことは気にならなかった

ライク・ア・サブタレイニアンズ11

2012-01-30 21:05:14 | ライク・ア・サブタレイニアンズ1
ある日、雪音の部屋へ行くと、雪音はベッドに寝転がって
ボクがあげた本を読んでいた
「雪音、おもしろいかい?」「うん、でもさ」
「何?」 「これって、あたしたちみたいなところがあるね
だから・・・っていう訳じゃないけど、おもしろいよ」
「地下街の人びと」はパワフルな物語だと思う、
ケルアック独特の文体で、主人公の恋愛が、リアル感を持って
伝わってくるよな
哀しくも鮮やかで、それでいて少しほの暗い、ビートジェネレーションの
日々が語られている、
「ミノルさんの感想?」
「うん、おれは読んでいてそう思った」
雪音がポツリと「やっぱりあたしたちみたいだよ」
本が一区切りついたらしく、雪音は「夕飯何食べよっか?」
なんて訊いてくる
無難なところで中華食べに行こうぜと提案
「あたし、行きたい連れて行って」即答だった
ボクたちはいそいそとお出かけした

ライク・ア・サブタレイニアンズ10

2012-01-28 21:50:27 | ライク・ア・サブタレイニアンズ1
ビールを飲みながら雪音が言った「ミノルさん、あたし何か本が読みたい」
「ん~、ちょうど持ってるよ、これ」「面白い?」「おれは大好き」
「じゃあ貸してくれる?」「いいよ、文庫本だし、あげるよ」
「ほんとぉ?」「やった、やった」雪音流の最高の喜び方らしかった
「何て本?」「地下街の人々」ケルアックだよ原題は「サブタレイニアンズ」
って言うんだけど「ふぅ~ん、読んでみていい?」
ボクは文庫本を雪音に渡したポケットに突っこんでたからボロボロに近かった
それでも、雪音は嬉しそうだった
こんなに喜んでくれるなんて、ボクも良い気分だった
大好きな作家の本だったし、好きなことを共有できると思ったから
なんだか、秘密を共有したみたいだろ?

ライク・ア・サブタレイニアンズ9

2012-01-27 21:05:54 | ライク・ア・サブタレイニアンズ1
お昼休みになって、雪音の持たせてくれたお弁当をどきどきしながら開いた
中身は、雪音お手製の小さなパンが二個入っていた
自販機で買った缶コーヒーを飲みながらパンをひとくちちぎって口にした、
うまいな、これ 
雪音は「うまくできなかったの、ごめんね」なんて言っていたけれど」
最高に美味しかったんだ
そして、おかず(らしい)ランチボックスを開けてみると思わず言っちゃった
「うわぁ、ハンバーグだぁっ」・・・・子供のような喜びようである
ハンバーグの横にはイチゴが3粒入っていたボクは嬉々としてハンバーグに手を付けた
贔屓目だろうが、絶品だった
全部ぺろりとたいらげてからボクはポケットから文庫本を取り出した「地下街の人々」
ジャック・ケルアックの本・・ボクはアランシリトーなど、ピカレスク的な話が好きだったので
いつもジーンズのポケットに入れていた雪音のお弁当が美味しかったので、
「缶コーヒーってやっぱりあんまり美味しくない・・・」
そんな気持ちが妙に残った昼休みだった
でも、大満足の昼食を終えて、午後の仕事をこなし、ぼくはまっすぐに雪音のマンションへ
車を走らせた
ボクが帰ると、雪音は冷蔵庫から冷えた缶ビールを渡してくれた「はい、飲むでしょ?」
プシュっと開けてボクらはまず、「かんぱ~い」日も沈まないうちから
上機嫌な二人であった

ライク・ア・サブタレイニアンズ8

2012-01-26 20:50:08 | ライク・ア・サブタレイニアンズ1
とても自然だった、ボクたちはまるでそれが決まっていたかのように
唇を合わせた
ボクが引き寄せるのと同時にゆきねは眼を閉じたし、ボクもごく、自然に
顔を近づけていった
お互いに抱き締め合いながら、唇は離さずに、長い、長いキス
ゆきねの唇はとても柔らかくて、ボクはゆきねに包みこまれるような錯覚を憶えた
唇を離しては触れ、何度も繰り返した
これがボクの一生忘れられないキスのうちのひとつになった
ただ、キスと抱きしめることを繰り返してボクたちは眠った

「ねえ、ゆきねってどんな字書くの?」
「雪の音って書くの」静かに雪音が言った
「すてきな名前」そう言いながらボクは雪音の髪を撫でた
「ほんとぉ?そう言ってくれるのミノルさんだけだよ」
「うれしい・・・ありがとう」雪音が照れている
朝になってボクが仕事に行こうとすると
雪音はボクより早く起きていて、あったかいコーヒーを淹れてくれた
寒い冬の朝にそれはとってもうれしかった
「じゃ、そろそろ行くね」と靴を履きかけた時に雪音が「これ、作ったの」
って包みをボクに持たせた「お弁当なの」「ほんとに?すごいうれしいよ」
幸せ絶好調になった「いってきま~す」
その日は昼休みが待ち遠しくてにやにやしながら上機嫌で仕事をしたのは
言うまでもない