虹はポケットの中に

再スタート
何度でも生まれ変わる
自分の音を探す旅

ロックンロールのつくりかた8

2012-05-11 20:22:23 | ロックンロールのつくりかた
人づてに聴こえた噂によると、
ボクたちのデヴューライヴは何故か評判が良かった
これを機に、マサとボクのスタジオセッションは
より、熱が入っていった
それに伴って、レコーディングもしていった
ある日、マサの部屋に行ったら、ボクたちの
共通の友人、「アイコ」も一緒にお茶かなんか飲んでいた
ボクとマサは、アイコそっちのけで自分たちのバンドの話ばかりしていた
「ドラマーいないんだよなー」って話になったとき、
「あたし、やるよ」ってアイコが言った
アイコはドラムの経験はゼロであった
ピアノを少しやっていたくらいでバンド経験もほとんど無い
もっとも、周りにはボクとマサのようなバンドマンばかりだったので
「空気」みたいなものは感覚的に知っていた

マサが持ってきた次のライヴは、なんと、イギリスのアブストラクトな
ミュージシャンとの共演の話だった、ボクたちは高揚した
アイコのデヴュー戦がこれに決まった

ロックンロールのつくりかた7

2012-05-08 20:04:08 | ロックンロールのつくりかた
ほんの20分ぐらいの短い演奏だった
ただただ、ボクとマサの呼吸だけが張りつめていた
アイコンタクトで演奏が終わるタイミングを計った
思ったよりもお客さんが来ていたことに、機材を掃けて
店の前の路上に出て、初めて気づいた
しばらく会っていなかった友人の顔もあった
骨董屋の店内で、ノイジーなライヴ、
その奇妙なシチュエーションの余韻にボクたちは浸っていた
パラパラと、徐々にみんな帰り出し始めた
マサとボクは「お疲れです」「お疲れ様」と、言いあった
こうしてボクたちの最初のライヴは終った
帰り際に、「今日の音、録音したんで、あとでCDに
焼きますね」と、マサが言った

このライヴをきっかけにして、ボクとマサは転がるように
ロックンロールをつくっていくことになる

ロックンロールのつくりかた6

2012-05-05 20:19:06 | ロックンロールのつくりかた
観客は、まばらで、照明も無く、暮れきらない夕暮れの明かりだけで、
「そろそろ始めてくれ」と、店の人からGOサインがでたので、
ボクとマサはギターをぶらさげた
店内は静かだった
演奏は、もちろん何も決めていない・・即興である
しかもエレクトリックギター2本というセットだ
ボクたちはギターをぶらさげたままで、タイミングを伺い、互いの呼吸を謀っていた
張りつめた糸のような空気、ノイズと、時折のハウリング誰もが息をのんで
瞬間を待っていた
最初の一音を出したのはマサだった
地図の無い「音の積木のような夜会」が始まった

マサのフレーズにボクは、フィードバックで呼応していった
最初からファズのゲインは、フルだった

ロックンロールのつくりかた5

2012-05-03 17:38:54 | ロックンロールのつくりかた
マサの知り合いの、骨董品店が催事でデパートに出店するので、
空になった店内でライヴをやっちゃおうという話だった
骨董品、それだけで何故か、わくわくしてしまう・・・・
周りの店が閉店後、ということでライヴの開始は夜の8時くらいだという
ボクたちは当日までになんとなく友人関係に告知した
いよいよライヴ当日、ボクとマサは、ボクのボロボロのジムニーに
それぞれのアンプ、(マサはジャズコーラス)(ボクはヴァイブロラックスリバーヴ)と
ギターを積み込んで
人気の無い、夜の骨董屋へ着いた
機材を下ろして軽くセッティングと音出し
をしてから
とりあえず一丁先の安い焼き鳥屋で、ビールと焼き鳥で
このバンドの初ライヴに乾杯した

軽く一杯で、あたりが暗くなってきたので
ボクとマサは会場に戻った
静まり返った店内には、電源を入れっぱなしのアンプから、チリチリと
ハムノイズが今夜の予感を告げていた

ロックンロールのつくりかた4

2012-04-30 21:41:34 | ロックンロールのつくりかた
それから、ボクとマサは定期的にスタジオに入って、セッションをするようになった
何度か続けていくうちに、初めは、ばらばらだった音が
相手の演奏の癖がわかるようになってくると、ピッタリと合う瞬間が増えてきたんだ
きっと、互いに、何かしら手応えみたいなものを感じていたんだと思う
そのうち、マサはスタジオにレコーダーを持ち込んで、毎回のセッションを
記録するようになった
セッションと言えば聞こえはいいが、その日の気分や、イメージで、全くの即興演奏
だった、でもこれが、功を奏したのだと後になって思った
回を重ねるごとに、息は合って、フレージングなどの、
感覚は研ぎ澄まされた
ある日、スタジオでマサが言った「ライヴの誘いがあるんだけど・・・やりますか?」

「機は熟した」
ボクはリヴァーヴのスイッチを「カチリ」と踏んだ

ロックンロールのつくりかた3

2012-04-25 16:07:33 | ロックンロールのつくりかた
次の週に、マサは「週末に曲を持っていくので、録音しましょう」と、
連絡をくれたマサは続けて「・・・あの、たぶん、終電無くなっちゃう
と思うので泊まっていい?」
「もちろん、また旨いワイン用意しとくよ」
週末の夜遅くなってからマサは、ギターを背負って、両手には
アンプやエフェクト類の機材をぶらさげてやってきた
ボクたちは早々に「結線」し始めた
機材、といっても4トラのMTRにリヴァーヴユニットや、コンパクトエフェクター、
チープなリズムボックスを組み合わせただけだった
ただ、マイクだけはsure beta-57を使った
マサが弾き語りのように歌い出し、ボクはアドリブでギターを合わせていった
音数は少ないけれど、シンプルでとてもいい感じのデモが録れた
4曲ぐらい録ったところで0:00をまわってしまったのでレコーディングを
中断して、ボクはワインのコルクを抜いた
「今日はキュヴェ・ミティークだぞぉ~」「これ、旨いんだよな」

今日も真夜中に、男二人でグラスを合わせて乾杯であった

列車は夜通し前進し続けた

ロックンロールのつくりかた2

2012-04-24 14:11:26 | ロックンロールのつくりかた
結局、ワインは2本とも空いてしまい、マサは帰れなくなって
ボクのところに泊まることになった
話は尽きることなく、お互いの考える音楽のこと、
これからこのバンドをどんなふうにやっていくか、
何が良くて、何が良くないか、とか、
かっこいいこととかっこわるいことについて、とか、まるで
これから始まるロックンロールの細かい部品を創るように
ボクらは話した
眼を輝かせて、キラキラした「夢」を語ったその夜から
ボクとマサのバンドは動き出した
唐突にマサが「ボク、作った曲が少しあるので、
次に来るときに持ってきますよ、デモテープつくりましょう」
そしてボクとマサは二人でロックンロールの列車を
発車させた

新連載 ロックンロールのつくりかた1

2012-04-23 21:49:57 | ロックンロールのつくりかた
 
「ぼくと、一緒にバンドやってくれませんか?」
突然、マサが言った
「ん?」ボクはきょとんとしてマサの顔を見た
「あの・・・、テキトーじゃなくて、わりと真剣な感じで・・」
「いいよ」と、少し考えてボクは言った
「メンバーは、二人でやりたいんです、他の音は、いらないっちゅうか・・・・」
ボクはギター弾き、マサもギターだった「どうですか?」
「いいと思うよ、かえってかっこいいんじゃないか?」
それからボクとマサはいろいろなことを話した
ヴェルヴェットやルー・リードのこと、ノーニューヨークや、裸のラリーズの話
話し出すと止まらなくなるのでボクたちはとりあえず
安い赤ワインを一本空けて飲みだした
この、新しい音への旅の始まる予感にボクたちはわくわくしていた
ワインボトルはすぐに空になった
ボクは次にフランスのヴァン・ド・ペイを選んで
コルクを抜いた

止まることの無いロックンロールの夜に乾杯するために