それはもう、15年以上前のはなし
その日、休みだったぼくは
少し遅く起きて、近所のコンビニへ「朝メシでも買いに行こう」
っと思って玄関のトビラを開けた
少しまぶしい光とともにそいつはいたんだ
ボサボサの毛をした真っ黒いネコ
ぼくは履きかけの靴をつっかけてそいつの側に立った
そいつは急に顔を上げてぼくを見た
眼が合ってしまった・・・瞬間、そいつは
ぼくに向かって「にゃぁ」と一声
何を思ったかぼくはそいつに話しかけた
「コンビニ行くけど一緒に来るか?」
するとそいつはぼくの問いかけに
間違いなく「にゃあ」と返事をしたんだ
ぼくはそいつの側にしゃがみこんで
アタマを撫でてあげた
「よし、行くか」と言うと「にゃあ」と返事
嘘みたいだがほんとである
ぼくが歩き出すと、後ろをちゃんとついてきている
でも遅いので、時々立ち止まって追いつくのを
待ってあげる
結構な時間をかけてコンビニに着いた
入口の前で、「買い物してくるからちょっと待ってなよ」
と言った、もちろん「にゃあ」と返事が返ってきた
ぼくは独りでコンビニへ入って、サンドウィッチとタバコと
飲み物を買って出てきた、・・・ちゃんと・・・いた
店の前に、ぼくが見つけた時みたいにうずくまっていたんだ
「お待たせ~帰ろうな」「にゃあ」
必ず返事をする良い子である
そして帰ってきた、哀しいお別れの時である
「ごめんな、うち、アパートだから飼ってあげられないんだ」
この時はそいつは初めて返事をしなかった、立ち去り難いようで
「にゃーにゃー」泣き続けていた、切ない鳴き声だった
ぼくは心を鬼にして家の中へ入った 残り物のごはんにかつお節で
「ねこまんま」をつくってあげた
しばらく夢中で食べていたのだが次にドアを開けてみると
もう、そいつはいなかった なぜだかとっても悲しかった
何年か、そこに住んでいたがそれ以来そいつには会わなかった
会話をする黒ネコのおはなし