朝起きて、久しぶりに佐藤しのぶの声でも聞こうかな、と思って〈YouTube〉を開こうとしたら、出し抜けにあの前川清の野郎が現れて、あろうことか十曲も歌い続けに歌ったのである。
私はどちらかと言うと、前川清の声よりは佐藤しのぶの声が好きなタイプの人間なので、その間、「早く終わってくれ!お願いだから止めてくれ!頼むから歌い終わってくれ!」といった思いで、彼の歌声に耳を塞いでいたのでありましたが、その裡に、彼の歌う曲の歌詞がそのまま安手の短歌になっている事に気が付いたのである。
以下の言葉の羅列は、前川清が歌う歌謡曲の詞を換骨奪胎して詠んだ短歌紛いの短歌である。
○ アカシヤの甘い香りに誘はれてほつつき歩いた札幌の街 鳥羽省三
○ 身を任せ燃えて火となる柔肌の甘い香りに誤魔化されるな
○ 神戸屋のフランスパンは美味しいが明日は要らない今夜が欲しい
○ うまい嘘ひとつ吐けないあたいでも夢の続編ぐらいは見たい
○ アカシヤの甘い香りに誘はれて中の島まで歩いてみたい
○ 限りあるこの世なりせば時折は優しい花で包んでほしい
○ 泣きたくも泣くに泣けない夜はひとり夢を肴に飲めばよろしい
○ 変はり行く景色の中でひたすらに夢を探した神戸の街で
○ いつまでも逢はず愛せる恋ならばいついつまでも金は要らない
○ 胸ふかく傷を宿して怯えてた僕に明日などあるはずもない
○ 止せ止せよ慰めなんかいらないよどうせ私は噂の女
○ 嘘と泪の染み付いた女だけれど捨てたりしないで下さい
○ 札幌の街の噂にされちやへば褪せてしまうよ唇さへも
○ この春を恨むことさへ諦めて生きるしかない噂の女
○ 話すなと甘える指にからみつく酔ひどれ男の煙草の煙
○ さみしさをなだめすかしてもぐり込む床に染み付くあなたの匂ひ
○ ああせめて夢のかけらを散りばめむ逢はずに愛して下さるならば
○ 長崎は行けどせつない石畳ぬれて今夜も雨降るばかり
○ 男どち掌をもて愛せたら女なんかはもはや不要さ
○ 女どち指先をもて癒し合ひ男なんかは要らないと言ふ
○ 傷ついた心がさらに醜くて巧い嘘つく相手探した
○ 神戸まで無理矢理足を運んでは濁つた水に捨てた泥靴
○ 訪ねても冷たい雨が身に沁みて夜の丸山こころ乱れつ
○ 今更に酒に恨みはないもののオランダ坂は今日も雨降る
○ 降る雨よ愛しき人は今どこでどうして居るか教へてほしい
○ 捨てたはず恋も命も長崎の頬を濡らしてそぼ降る雨に
○ 飲んでああ飲んで酔い痴れ乱れても長崎は今日もまた雨だつた
私はどちらかと言うと、前川清の声よりは佐藤しのぶの声が好きなタイプの人間なので、その間、「早く終わってくれ!お願いだから止めてくれ!頼むから歌い終わってくれ!」といった思いで、彼の歌声に耳を塞いでいたのでありましたが、その裡に、彼の歌う曲の歌詞がそのまま安手の短歌になっている事に気が付いたのである。
以下の言葉の羅列は、前川清が歌う歌謡曲の詞を換骨奪胎して詠んだ短歌紛いの短歌である。
○ アカシヤの甘い香りに誘はれてほつつき歩いた札幌の街 鳥羽省三
○ 身を任せ燃えて火となる柔肌の甘い香りに誤魔化されるな
○ 神戸屋のフランスパンは美味しいが明日は要らない今夜が欲しい
○ うまい嘘ひとつ吐けないあたいでも夢の続編ぐらいは見たい
○ アカシヤの甘い香りに誘はれて中の島まで歩いてみたい
○ 限りあるこの世なりせば時折は優しい花で包んでほしい
○ 泣きたくも泣くに泣けない夜はひとり夢を肴に飲めばよろしい
○ 変はり行く景色の中でひたすらに夢を探した神戸の街で
○ いつまでも逢はず愛せる恋ならばいついつまでも金は要らない
○ 胸ふかく傷を宿して怯えてた僕に明日などあるはずもない
○ 止せ止せよ慰めなんかいらないよどうせ私は噂の女
○ 嘘と泪の染み付いた女だけれど捨てたりしないで下さい
○ 札幌の街の噂にされちやへば褪せてしまうよ唇さへも
○ この春を恨むことさへ諦めて生きるしかない噂の女
○ 話すなと甘える指にからみつく酔ひどれ男の煙草の煙
○ さみしさをなだめすかしてもぐり込む床に染み付くあなたの匂ひ
○ ああせめて夢のかけらを散りばめむ逢はずに愛して下さるならば
○ 長崎は行けどせつない石畳ぬれて今夜も雨降るばかり
○ 男どち掌をもて愛せたら女なんかはもはや不要さ
○ 女どち指先をもて癒し合ひ男なんかは要らないと言ふ
○ 傷ついた心がさらに醜くて巧い嘘つく相手探した
○ 神戸まで無理矢理足を運んでは濁つた水に捨てた泥靴
○ 訪ねても冷たい雨が身に沁みて夜の丸山こころ乱れつ
○ 今更に酒に恨みはないもののオランダ坂は今日も雨降る
○ 降る雨よ愛しき人は今どこでどうして居るか教へてほしい
○ 捨てたはず恋も命も長崎の頬を濡らしてそぼ降る雨に
○ 飲んでああ飲んで酔い痴れ乱れても長崎は今日もまた雨だつた