臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

日暦(10月11日)

2016年10月11日 | 我が歌ども
○  「毒を食らはばその皿までも」喰らへ先駆者・古河市兵衛  鳥羽省三

○  含羞は微笑みに似て非なる哉ドナルドキーン氏は解せず含羞 

○  是と非との違ひ黙して知事殿は落し所を覗つて居り

○  汝もまた〈石の別荘〉に行く身なれ春な忘れそ蘇り来よ

○  吾は平塚市民に高らかに告ぐ!汝ら挵蝶を撲滅すべし!

○  玉藻よし讃岐の国の粟島で孫を抱きて笑まふ喜多さん

○  誕生日と漢字で欠けぬ雪穂さんがなんぞ歌人を僭称せむや

○  寡婦汝の気持ちをよそに秋空に繋がり睦むアキツ妬まし

○  まあ、まあ、あるごど、あるごど、たまげたな!晩翠校歌の千本しめじ!

○  斯くなればもはや行動あるのみぞ!覚醒せよ今!諏訪兼位氏!

○  この秋も招待状の届かざる敬老の日は吾には無縁 

今週の「朝日歌壇」から(10月10日掲載分・其のⅡ)北方四頭以南最笑の短歌論評、連日出血大公開!乞う、ご期待!

2016年10月11日 | 今週の朝日歌壇から
[高野公彦選]
○  一年に二百億円の維持費食べ二十年間働かぬ「もんじゅ」  (名古屋市)諏訪兼位

 1994年の〈初臨界〉以来、次世代エネルギーの開発及び確保に苦慮する我が国としては、件の高速増殖炉「もんじゅ」こそは〈夜空に輝く希望の星〉であり、唯一無二の〈本願大菩薩様〉だったのである。
 それだけに、〈ナトリウム漏れ事故〉に因り10年以上運転停止状態になっている現在に於いても、国民大衆から圧倒的な非難の声を浴びせ掛けられながらも、我が国の政府及び関係機関は、未だにその廃棄に踏み切ることが出来ないでいるのでありましょう。
 そうした現状に在って、歌人を含めた我が国のインテリ層及び一部の市民層は、是を廃棄する為の具体案を自らが提起し、提示する事が出来ないで居ながらも、是に〈金食い虫〉だとか〈諸悪の根源の似非菩薩様〉だとかという悪名を奉り、是をただひたすらに笑い者にしているばかりなのである。
 つらつらと思ってみるに、上掲・諏訪氏作と類似したような趣旨の短歌作品が、朝日歌壇の入選作として紙面に掲載された事が、この間、どれだけの多くの数に達している事でありましょうか。
 この点を、掲出作品の作者・諏訪兼位氏の場合に限ってみましても、彼・諏訪兼位氏は、過去に於いて、言葉を変えたり、語順や作風を変えたりしての、幾分かの表現上の工夫は凝らしてはいるものの、掲出作品とほとんど同一趣旨であり、自己模倣作として、常套的発想に依る作品として、常套的表現に依る作品として、朝日新聞の読者に謗られ、嫌悪され、非難されても文句一つ言えないような類似作品を何首か朝日歌壇に投稿し、入選作として紙面に掲載されているはずである。
 こうした諏訪兼位氏の権力に対する抵抗精神を示した詠歌姿勢は、何も「もんじゅ」の廃棄問題に限らず、例えば、憲法改悪問題や、自衛隊海外派兵問題や、災害発生時の関係当局の対策の遅れや無策に対する抗議などの場合でも、本質的には何ら変わる事が無く、そうした諏訪氏の不変不動の姿勢は、ともすれば象牙の塔の中に籠りがちな他の科学者たちのそれとは大きく異なり、〈諏訪兼位氏こそは戦う科学者の良き手本〉、氏の権力に対する抵抗精神こそは〈我が国科学界の類稀なる良心〉という見方を、私・鳥羽省三を含めた朝日新聞の多くの読者の方々がして来たように私には思われるのである。
 従って、私・鳥羽省三の似非高速増殖炉「もんじゅ」の廃棄問題に関する考え方は、本作の作者・諏訪兼位氏のそれとほぼ同一であり、氏に対しては、これからも〈この問題に対して声高にご発言なさって欲しい〉と願い、否、それ以上に、〈この問題の解決を図る為に、氏の抜群の行動力を示して欲しい〉と、私は強く願っている次第なのである。
 しかしながら、我が国有数の科学者である彼・諏訪兼位氏が、この問題に対して、〈格好の歌材を発見した〉とばかりに喰らい付き、並み居る歌人ちゃんに伍して、もはや程度の低い模倣作品に過ぎないような短歌作品をお詠みになり、投稿せんとするに及んでは、私としては、到底、見逃す事が出来ません。
 ましてや、朝日歌壇の選者諸氏が、斯くの如き〈またぞろ〉の凡作を入選作として紙面に掲載するに及んでは、決して、決して許容する事が出来ません。
 事は、掲出作品の、文芸作品としての評価の問題であり、「一年に二百億円の維持費」を「食べ」ながら「二十年間働かぬ」似非高速増殖炉「もんじゅ」の評価の問題ではないからである。
 [反歌]  斯くなればもはや行動あるのみぞ!覚醒せよ今!諏訪兼位氏!  鳥羽省三


○  軽井沢駅にて「あさま」待つ列に佇む微笑ドナルドキーン氏  (宝塚市)萩尾亜矢子
 
 是を以て、我が国の文学関係者は、「日本人・ドナルドキーン氏の謎の微笑」と謂うのでありましょうか?
 [反歌]  含羞は微笑みに似て非なる哉ドナルドキーン氏は解せず含羞  鳥羽省三


○  先駆者の明治の気骨見えてくる田中正造の一本歯下駄  (熊谷市)内野 修

 「おっおっ!おっ!天狗様が足尾の山さ登って行くぞ!天狗様は一本歯の下駄を履いで、銅山の方さ、むしょうに怖い顔して、ぐいぐいと早足して登って行くぞ!皆の衆見てけろや!」
 [反歌] 「毒を食らはばその皿までも」喰らへ先駆者・古河市兵衛  鳥羽省三


○  子を失くした人は「石の別荘へ行ってきます」と花を抱えて  (東京都)上田結香

 「石の別荘」とは、作中の「子を失くした人」の墓所。
 斯く申す私にも「石の別荘」がありますが、その墓石には「春な忘れそ」との五文字が刻まれている。
 [反歌] 汝もまた〈石の別荘〉に行く身なれ春な忘れそ蘇り来よ  鳥羽省三


○  挵蝶わがワイシャツに来て止まる信号青に変わるひと時  (平塚市)西 一村

 冒頭の一語「挵蝶」に「せせりちょう」とのルビあり。
 動詞「挵る」は、「ほじくる・つつく」という意である。
 とすると、件の「挵蝶」は「わがワイシャツに来て止ま」り、「信号」が「青に変わる」までの「ひと時」を、彼・西一村さんの背中やお臍の辺りをつついたり、ほじくったりするのでありましょう。
 だとすれば、彼「挵蝶」こそ、ほんとにほんとに気色悪い昆虫ではありませんか!
 [反歌] 吾は平塚市民に高らかに告ぐ!汝ら挵蝶を撲滅すべし!  鳥羽省三


○  玉藻よし讃岐の国におもむきて孫を抱けば小さくも重し  (八尾市)水野一也

 「孫を抱けば小さくも重し」とは、お孫様の可愛さを愛でる時の定番である。
 [反歌] 玉藻よし讃岐の国の粟島で孫を抱きて笑まふ喜多さん  鳥羽省三


○  晩翠の作なる校歌惜しみつつ双葉休校す人住めぬゆゑ  (郡山市)渡辺良子

 「彼の土井晩翠作を校歌とする学校なんぞはこの広い日本各地の随所に、まるでパリのシャンゼリゼ通りに落ちている犬の糞ほどにもありますから、その中の一つや二つの学校が、例え廃校や休校になったとしても、作者の遺族としては屁でも無いのかも知れませんよ!」などと、全くの部外者の私が口にしてしまったら、多くの方々を悲しませ、轟々たる非難の声を浴びる事になりましょう。
 [反歌] まあ、まあ、あるごど、あるごど、たまげたな!晩翠校歌の千本しめじ  鳥羽省三


○  中空をシオカラ・ムギワラむつみ飛ぶ夫婦別姓みたいなトンボ  (下野市)若島安子

 ご主人様のお名前は「塩辛蜻蛉」で、奥様のお名前は「麦藁とんぼ」。
 期せずしてセカンドネームは「トンボ」と同音になりましたが、それでもご立派な「夫婦別姓みたいなトンボ」です。
 本作の作者のお名前は〈若島安子〉さん。
 そのお名前からして、いかにも寡婦然としていらっしゃいますから、「むつみ飛ぶ夫婦」に焼いてんのかしら?
 [反歌] 寡婦汝の気持ちをよそに秋空を繋がり睦むアキツ妬まし  鳥羽省三


○  この秋の「敬老の日」は彼岸入り暦は老いをからかっている  (東京都)北條忠政

  「暦は老いをからかっている」との発見は素晴らしいが、それも高齢者特有の〈僻み根性〉ゆえの発見なのでありましょうか?
 

○  十五夜だ月の女王のたん生日雲のきゅうでんゆっくり開く  (熊谷市)茂出木雪穂

 本作の作者・茂出木雪穂さんは、一体全体、小学校の何年生なのかしら?
 それにしても、「きゅうでん」との〈ひらがな書き〉はともかくとしても、〈誕生日〉を「たん生日」と書くとはね!   
○  誕生日と漢字で書けぬ雪穂さんが何ぞ歌人を僭称せむや  鳥羽省三