臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

日暦(10月19日)

2016年10月19日 | 我が歌ども
○  キッチンで胡瓜を刻む音がする因果な姉よまた出て来たか?

○  独り寝のあまりに侘し彼の人の夢は今宵も堂々巡り

○  一対一蓮舫さんよ遣りなさい!鈴木庸介落としちやならぬ!

○  土俗派振りて短歌史を渡り来しも真実は叙情派ならむ

○  この秋も去り往く今はなつかしく傾く月に見蕩るるばかり

○  写し絵に笑みを浮かべて居られるも幾多の恥辱忍ぶるならむ

○  消して点け消して点けてのLED消さずじまひで明けにけるかも

○  花も香もありてめでたきこれの世に香をば厭へる米川千嘉子

○  霧に咽ぶ南鳩ヶ谷の五右衛門橋の袂で逢ひしをみな真知子

○  朝の廊下ゆつくり吾は歩むともたつた五秒で玄関に着く 

○  蚤・虱・蜱に苦しみ蕉翁の一夜宿れる尿前の関 

○  眉毛描き厚化粧して壇上に小池知事殿六十五歳

 

今週の「朝日歌壇」から(10月17日掲載分・其のⅢ)掲載遅延多謝!平身低頭!

2016年10月19日 | 今週の朝日歌壇から
[馬場あき子選]
○  空爆で傷を負いたる少年の目はシリアより我等を見つむ  (石川県)瀧上裕幸

 人間は、特に私たち日本人は、「何処からか、或いは何方からか、常に眺められているという意識」を持ちたいものであり、そうした意識を持たない時の私たちは、「人を人とも思わないような傍若無人の振る舞いに及んだり、〈カロリー控えめのケーキ〉で人気のデパ地下に行列を作ったりする」のでありましょう。
 本作の作者・瀧上裕幸さんは、言わば〈覚醒の人〉であり、であればこそ、彼は決して、決して「人を人とも思わないような傍若無人の振る舞いに及んだり、〈カロリー控えめのケーキ〉で人気のデパ地下に行列を作ったり」はしない男性でありましょう。 
 「瀧上裕幸さんに限らず、私たち日本人は常に、『空爆で傷を負いたる』『シリア』の『少年」の『目』で以て『見つ」められている存在であることを忘れてはいけません」とは、斯く申す、私自身に向けられて発せられた自戒の言葉でありましょう。 


○  変声期だみ声交ざるハーモニー自覚はないのに男子の絶妙  (芦屋市)室 文子

 「変声期」の「だみ声」が「交ざるハーモニー」が何故に「絶妙」ならむ?
 文意不明、言葉足らずの凡作である。
 本作の作者・室文子さんは、或いは、自ら「自覚」せざるままに「変声期」の「男子」合唱部員に恋心を抱いているのかも知れません。


○  沖縄のサタキリ洞の旧石器人オオウナギ釣りモクズガニ焼き  (愛知県)赤羽一郎

 「沖縄の→サタキリ洞の→旧石器人→オオウナギ釣り→モクズガニ焼き」と、それらしき語や語句、道具立てを並べ連ねただけの凡作である。  


○  寂しさに胸に手にくる秋蠅よ我は良寛の御手にふれたし  (いわき市)馬目弘平

 「寂しさに胸に手にくる秋蠅」を目にして「我は良寛の御手にふれたし」と乞い願う作者。
 ものみな滅ぶ秋ともなれば、「蠅」も「我」人間も何かに縋り付きたくなるものと思われる。
 

○  冷房の管はずされてし穴ひとつプレス作業所閉鎖せし壁  (岐阜市)後藤 進

 「着眼点が素晴らしい!」との一言あるのみ。
 [反歌]  萎え果てし我が去りゆけば穴ひとつ空閨かこつ吾妻哀しき  鳥羽省三


○  独房に昼の光の射すときは活字立ち来るマルクスを読む  (ひたちなか市)十亀弘史

 なるほど、「昼の光の射すとき」の「独房」に「読む」本は「マルクス」でなければなりません!
 仮に、「昼の光の射すとき」の「独房」に「読む」本が、あの秋本治作の人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』だったりすると、「活字」が「立ち来る」ような不可思議な現象は起こりませんからね!
 [反歌]  マルクスを読んだりしたら逮捕だぞ!どうせ読むなら『バカボンのパパ』!  鳥羽省三


○  ギラギラは退職とともに消え失せてキラキラとなる第二の人生  (下関市)乗安 勉

 私見を述べさせていただきますと、「第二の人生」こそは「ギラギラ」と目を輝かせて生きて行きたいものです!
 [反歌]  ギラギラと目を輝かせサンマ選る秋刀魚の嘴黄色くあらず  鳥羽省三 


○  高三のねえちゃんせっせとつるしてる五人の笑ったてるてる坊主  (富山市)松田わこ

 「高三のねえちゃん」の高校では、明日、学園祭でも行なわれるのかしら?
 そんなことはどうでも宜しいが、ねえちゃんの梨子さんも妹のわこちゃんも、「自分たちがいつも空爆で傷を負いたるシリアの少年の目で以て見つめられている存在であること」を忘れてはいけません。
 [反歌]  姉ちゃんは盲滅法吊るしてる照る照る坊主所詮迷信  鳥羽省三