(紫苑)
○ 鶴首を一気呵成に引き上げし織部のあをはあたりをはらふ
織部焼の中で、器物の表面全体、またはその一部に青緑色釉(銅緑釉)を掛けたものを「青織部」と言う。
本作中の「織部のあを」とは、「青織部」を指して言うのであり、本作の作者・紫苑さんは、「青織部」の「鶴首」の花差しなどが、名人上手を以って謳われている陶工の巧みな轆轤捌きによって完成する瞬間を目にして、本作を詠んだのでありましょう。
〔返〕 俗塵を払ふかのごと鶴首の立ち上がりゆく青織部の瓶 鳥羽省三
(髭彦)
○ 列島をレイプのごとに犯しゆく核なりなりて成り余るもの
「列島をレイプのごとに犯しゆく」という表現は、被災地・福島を父祖の地とする髭彦さんにとっては、決して大袈裟とは言えない表現でありましょう。
〔返〕 途上国をレイプの如く犯し行く経済大国金権大国 鳥羽省三
一昨日の朝日新聞に夜の森公園の桜の満開風景を告げるカラー写真入りのニュースが掲載されておりましたが、私は、本作の作者・髭彦さんと夜の森公園との深い関わりなどを思い浮かべながら、興味深く読ませていただきました。
(矢野理々座)
○ 九分九厘成るのが得な敵陣で成らぬ香車のように生きたい...
将棋で、成れる状況下に在っても、敢えて成らぬまま駒を指し進めることを指して「不成(ならず)」と言う。
「不成」は、「香車」ならずとも「王将」以外の駒であったならば、それぞれ指す場面が在り得るのであるが、本作の作者・矢野理々座さんにとっては、直線的かつ特攻隊的に前進する以外に使いようの無い「香車」が「不成」のままであることに対して男性的かつ直情的な格好の良さ、乃至は潔さを感じて、「九分九厘成るのが得な敵陣で成らぬ香車のように生きたい」と詠んだのでありましょう。
〔返〕 100%貰うのが得な袖の下を貰わないで居る目明しが好き 鳥羽省三
(久哲)
○ 「まあ君は成功でした」と聞かされて手頃な箱に梱包される
本作の作者・久哲さんは、何を以って「『まあ君は成功でした』と聞かされ」たのでありましょうか?
また、「手頃な箱に梱包され」て、何処の港から北の王国に船出して行ったのでありましょうか?
「題詠2011」に参加している歌人の中の何方かが、久哲さんの作品に見られる「意味離れ」「ストーリー離れ」を絶賛しておりましたが、私としては、そうした点は「久哲短歌」の欠陥のように思われる。
何事も程度問題であり、本作の如く、読者に程々の疑問を抱かせ、作品世界に誘うような作風は歓迎される。
〔返〕 「本作は成功でした」と鳥羽は言う手頃な評を加えて褒める 鳥羽省三
(いちこ)
○ 哀れ君ヘルマンヘッセを読みながら遊ぶことなく成長したのか
作者の極めて素朴な人間観や人生観が窺われて、それなりに興味深い内容の一首である。
本作の作者・いちこさんは、ドイツの文学者「ヘルマン・ヘッセ」に対して、一種独特な固定観念、即ち、彼を聖人視しているように思われる。
ノーベル文学賞やゲーテ賞を受賞し、二十世紀前半のドイツ文学の最高峰を以って謳われる「ヘルマン・ヘッセ」には二度に亘る離婚歴が在り、彼とて、一生涯苦悩し思索に耽っていたわけではありません。
かく申す私も、彼の代表作『車輪の下』や『ガラス玉演戯』ぐらいは読みましたが、その私とて、決して「遊ぶことなく成長した」わけではありません。
〔返〕 「いいちこ」は大分方言で「良し」の意味「いちこ」の短歌もなかなか宜しい 鳥羽省三
(砂乃)
○ 瓶詰のザワークラウト割高の成城石井に山と積まるる
私はドイツワインが大好きですが、ドイツ料理のレストランに出掛けるとワインのつまみとして必ず出される「ザワークラウト」は口に入れる気もしません。
あの酸っぱいだけが取り柄の食べ物の何処に魅力を感じて、世間の人々は「瓶詰のザワークラウト」を買うのでありましょうか?
その「瓶詰のザワークラウト」が「成城石井に山と積まるる」風景こそは、まさしく一見に値する珍風景でありましょう。
したがって、本作の作者の着眼点は真に卓越したものである、と言わざるを得ません。
ところで、「成城石井」と言えば、もう一つ決して忘れてならないのは、駐車場に並んでいる車がほとんどがベンツなどの高級外車であることであり、その運転者の中には、足の爪先まで厚化粧した醜悪な女性が多いことである。
彼女らは、一体どんな理由で、田園都市線青葉台駅前の狭い道路でベンツのタイヤを廻して、わざわざ「割高の成城石井」まで遣って来るのでありましょうか?
〔返〕 正常な価格の店とは思えぬが成城石井で買うやつも居る 鳥羽省三
(五十嵐きよみ)
○ ひらがなで成り立っているあこがれをどうか漢字に置き換えないで
一つの言葉のイメージが、「ひらがなで成り立っている」か漢字やカタカナで「成り立っている」かは、人さまざまの思い入れがありましょう。
本作の作者・五十嵐きよみさんにとっての「あこがれ」という言葉のイメージは、「ひらがなで成り立っている」のである。
それにも関わらず、五十嵐きよみさんの短歌作品中の「あこがれ」という語を、作者の五十嵐きよみさんご自身の深い思い入れをも斟酌しないで、勝手に漢字で「憧れ」と書き替えて発表する不見識な編集者が居るので、五十嵐きよみさんは、本作を通じて激しく抗議をしているのである。
〔返〕 漱石が『こころ』に寄せた思い入れその奥底の心は知れず 鳥羽省三
啄木が『あこがれ』に寄せた憧れを想いもせずに『あこがれ』を読む
(鳥羽省三 )
○ 成田山大阪別院明王院大願成就のお不動尊よ
寝屋川市内の観光案内のパンフレットのコピーみたいなものである。
〔返〕 東京別院東京本願寺の大谷派からの分離独立騒動 鳥羽省三
○ 鶴首を一気呵成に引き上げし織部のあをはあたりをはらふ
織部焼の中で、器物の表面全体、またはその一部に青緑色釉(銅緑釉)を掛けたものを「青織部」と言う。
本作中の「織部のあを」とは、「青織部」を指して言うのであり、本作の作者・紫苑さんは、「青織部」の「鶴首」の花差しなどが、名人上手を以って謳われている陶工の巧みな轆轤捌きによって完成する瞬間を目にして、本作を詠んだのでありましょう。
〔返〕 俗塵を払ふかのごと鶴首の立ち上がりゆく青織部の瓶 鳥羽省三
(髭彦)
○ 列島をレイプのごとに犯しゆく核なりなりて成り余るもの
「列島をレイプのごとに犯しゆく」という表現は、被災地・福島を父祖の地とする髭彦さんにとっては、決して大袈裟とは言えない表現でありましょう。
〔返〕 途上国をレイプの如く犯し行く経済大国金権大国 鳥羽省三
一昨日の朝日新聞に夜の森公園の桜の満開風景を告げるカラー写真入りのニュースが掲載されておりましたが、私は、本作の作者・髭彦さんと夜の森公園との深い関わりなどを思い浮かべながら、興味深く読ませていただきました。
(矢野理々座)
○ 九分九厘成るのが得な敵陣で成らぬ香車のように生きたい...
将棋で、成れる状況下に在っても、敢えて成らぬまま駒を指し進めることを指して「不成(ならず)」と言う。
「不成」は、「香車」ならずとも「王将」以外の駒であったならば、それぞれ指す場面が在り得るのであるが、本作の作者・矢野理々座さんにとっては、直線的かつ特攻隊的に前進する以外に使いようの無い「香車」が「不成」のままであることに対して男性的かつ直情的な格好の良さ、乃至は潔さを感じて、「九分九厘成るのが得な敵陣で成らぬ香車のように生きたい」と詠んだのでありましょう。
〔返〕 100%貰うのが得な袖の下を貰わないで居る目明しが好き 鳥羽省三
(久哲)
○ 「まあ君は成功でした」と聞かされて手頃な箱に梱包される
本作の作者・久哲さんは、何を以って「『まあ君は成功でした』と聞かされ」たのでありましょうか?
また、「手頃な箱に梱包され」て、何処の港から北の王国に船出して行ったのでありましょうか?
「題詠2011」に参加している歌人の中の何方かが、久哲さんの作品に見られる「意味離れ」「ストーリー離れ」を絶賛しておりましたが、私としては、そうした点は「久哲短歌」の欠陥のように思われる。
何事も程度問題であり、本作の如く、読者に程々の疑問を抱かせ、作品世界に誘うような作風は歓迎される。
〔返〕 「本作は成功でした」と鳥羽は言う手頃な評を加えて褒める 鳥羽省三
(いちこ)
○ 哀れ君ヘルマンヘッセを読みながら遊ぶことなく成長したのか
作者の極めて素朴な人間観や人生観が窺われて、それなりに興味深い内容の一首である。
本作の作者・いちこさんは、ドイツの文学者「ヘルマン・ヘッセ」に対して、一種独特な固定観念、即ち、彼を聖人視しているように思われる。
ノーベル文学賞やゲーテ賞を受賞し、二十世紀前半のドイツ文学の最高峰を以って謳われる「ヘルマン・ヘッセ」には二度に亘る離婚歴が在り、彼とて、一生涯苦悩し思索に耽っていたわけではありません。
かく申す私も、彼の代表作『車輪の下』や『ガラス玉演戯』ぐらいは読みましたが、その私とて、決して「遊ぶことなく成長した」わけではありません。
〔返〕 「いいちこ」は大分方言で「良し」の意味「いちこ」の短歌もなかなか宜しい 鳥羽省三
(砂乃)
○ 瓶詰のザワークラウト割高の成城石井に山と積まるる
私はドイツワインが大好きですが、ドイツ料理のレストランに出掛けるとワインのつまみとして必ず出される「ザワークラウト」は口に入れる気もしません。
あの酸っぱいだけが取り柄の食べ物の何処に魅力を感じて、世間の人々は「瓶詰のザワークラウト」を買うのでありましょうか?
その「瓶詰のザワークラウト」が「成城石井に山と積まるる」風景こそは、まさしく一見に値する珍風景でありましょう。
したがって、本作の作者の着眼点は真に卓越したものである、と言わざるを得ません。
ところで、「成城石井」と言えば、もう一つ決して忘れてならないのは、駐車場に並んでいる車がほとんどがベンツなどの高級外車であることであり、その運転者の中には、足の爪先まで厚化粧した醜悪な女性が多いことである。
彼女らは、一体どんな理由で、田園都市線青葉台駅前の狭い道路でベンツのタイヤを廻して、わざわざ「割高の成城石井」まで遣って来るのでありましょうか?
〔返〕 正常な価格の店とは思えぬが成城石井で買うやつも居る 鳥羽省三
(五十嵐きよみ)
○ ひらがなで成り立っているあこがれをどうか漢字に置き換えないで
一つの言葉のイメージが、「ひらがなで成り立っている」か漢字やカタカナで「成り立っている」かは、人さまざまの思い入れがありましょう。
本作の作者・五十嵐きよみさんにとっての「あこがれ」という言葉のイメージは、「ひらがなで成り立っている」のである。
それにも関わらず、五十嵐きよみさんの短歌作品中の「あこがれ」という語を、作者の五十嵐きよみさんご自身の深い思い入れをも斟酌しないで、勝手に漢字で「憧れ」と書き替えて発表する不見識な編集者が居るので、五十嵐きよみさんは、本作を通じて激しく抗議をしているのである。
〔返〕 漱石が『こころ』に寄せた思い入れその奥底の心は知れず 鳥羽省三
啄木が『あこがれ』に寄せた憧れを想いもせずに『あこがれ』を読む
(鳥羽省三 )
○ 成田山大阪別院明王院大願成就のお不動尊よ
寝屋川市内の観光案内のパンフレットのコピーみたいなものである。
〔返〕 東京別院東京本願寺の大谷派からの分離独立騒動 鳥羽省三