臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

一首を切り裂く(075:朱・其のⅠ・根本大塔の朱のおぼろなる)

2012年04月02日 | 題詠blog短歌
(西中眞二郎)
〇  霧深く杉の木立に雨降れば根本大塔の朱のおぼろなる

 作中の「根本大塔」とは、弘法大師空海上人及びその弟子であり甥でもある高野山第二世真然大徳に拠って、真言密教の根本道場として建立されたと伝えられている、高野山・金剛峰寺の「根本大塔」を指して言うのでありましよう。
 創建当時の建物は火災に拠って既に失われており、現在の「根本大塔」は、昭和十二年に「空海入定1100年」を記念して建立された鉄筋コンクリート造りの建物である。
 樹齢数百年の「杉」の大樹の「木立」を隠すようにして「深く」立ち込めた「霧」に濡れながら参道を行く時、前面に現れる「根本大塔」の「朱」は、「霧」に洗われたようにして「おぼろ」に霞んで見えるのでありましょうか?
 〔返〕  胎蔵界大日如来像を中にして金剛界四仏像の厳めしさ   鳥羽省三
      塔内の円き柱に描かれた仏画は堂本印象画伯の筆なり


(飯田彩乃)
〇  眦に凛と朱を引くお望みとあらば妾(わらわ)は聖にも邪にも

 「眦に凛と朱を引く」飯田彩乃さん。
 「お望みとあらば妾(わらわ)は聖にも邪にも」(ならむ)と、粋がって居られますが、作中の「妾」を「めかけ」と読まれたらたまらないので、「わらわ」と振り仮名を施したのでありましょう。
 「眦に凛と朱」を引き「お望みとあらば妾は聖にも邪にも」なろうとのお覚悟をなされたご立派な女性が、作中の「妾」の一字を「わらわ」と読まれようが「めかけ」と読まれようが、本質的にはあまり関係ないことではありませんか?
 覚悟が足りませんよ!
 〔返〕  <処女・彩乃> 眦を凛と朱に引いて聖にも邪にもならむと嘯く   鳥羽省三


(野州)
〇  朱の橋を渡る少女を遮って両手を広げていた夏休み

 本作の作者・野州さんの幼少年期のお住まいは、栃木県日光町であったのでしょうか?
 〔返〕  数多き日光名所の一つにて朱塗りの橋を今も忘れず   鳥羽省三