(牛 隆佑)
先輩の苦労自慢にそうっすねそうっすねえと頷いている
「そうっすねそうっすねえと頷いている」ところが、本作の作者・牛隆佑さんのお人柄の善いところであり、悪いところでもある。
牛隆佑さん、「苦労自慢」ばっかりしている「先輩」にいつまでも付き合って居ると、勤務先でのあなたの先行きがどんづまりになりますよ。
そろそろ本腰を入れて仕事に励み、来春はその「先輩」をリストラの対象にしましょう。
〔返〕 後輩の苦労話は一喝す「君はヒヨコだ苦労はこれから」 鳥羽省三
(間宮彩音)
良薬は口に苦しと言うけれど子どものころは甘い気がした
確かにそのような気もしますが、昨今の処方薬はカプセル入りになったりしていて、全般的に苦みを感じなくなりました。
〔返〕 良薬は口に苦しは過去のこと平成この方良薬甘い 鳥羽省三
(中村あけ海)
もしかして秘書課は苦界? 先輩は結婚退社を身請けと呼ぶが
まさしく「秘書課は苦界」であるに違いない。
何故ならば、「身請け」される以前に、代表取締役社長とか専務取締役とかという名の「楼主」によって、たっぷりと味見されているからである。
〔返〕 もしかして庶務課は大奥? 最古参社員のお局新卒いびり 鳥羽省三
(アンタレス)
苦も楽も酸いも甘きも知り尽くし流す涙よ鹹きに徹す
つい先日、<北欧グルメツァー>とかいう名の旅行から帰って来たばかりの知人を前にして、「中国の五行説では、<酸・苦・甘・辛・鹹>の五つの味を<五味>と言うそうだ。また、同じ<五味>でも、仏教の教えで言う五味とは、牛乳を精製する過程で生じる五段階の味、<乳味→酪味→生酥味→熟酥味→醍醐味>のことである」などと、ウイキペイデア仕込みの俄か知識を披瀝し、ことの序でにと調子づいて、「仏教で言う<五味>の最終段階の味である<醍醐味>とは、今で言えば、本場物の上等のチーズの味でありましょうか?」などと言ったら、「省三さん、あんたは本場物のチーズの味を知っているんですか。あれは、あんたの体から匂って来る腋臭みたいな匂いがして、とても食べられたもんじゃなかったですよ」と言われてしまいました。
そう言われてみれば、私の食べるチーズは、雪印か森永か小岩井かの<6Pチーズ>ばかりでした。
でも、私は腋臭ではありませんよ。
誓って言います。
知ったかぶりも時と場合によりけり、本当に笑っちゃいますね。
本作の作者・アンタレスさんの体内には、中国の<五行説>で言う<五味>が骨の髄まで染み渡っているのでありましょうか?
〔返〕 苦も辛も酸きも甘きも知らずして流す涙のただ鹹(しほから)きこと 鳥羽省三
(髭彦)
彼の国の首領称ふる狂乱にイズムの末路苦く思ひぬ
「彼の国」と呼ぶ国は、人によってさまざまでありましょうが、「首領」様の鎮座まします「彼の国」はあの国だけでありましょう。
かつて「世界史」や「倫社」をご教授なさって居られた本作の作者・髭彦さんとしては、「狂乱」を極める「彼の国」での「イズムの末路」は、確かに気がかりであり、苦々しく思ったり、憎々しく思ったりもするのでありましょうか?
〔返〕 我が国の首相をめぐる狂乱に亀井静香の末路思ひぬ 鳥羽省三
(庭鳥)
おじさまが吐き捨てている「あいつらは苦労知らずのハナタレども」と
私は今朝の今朝まで、本作の作者・庭鳥さんを、鶏冠をかぶった中年男性とばかり思っていたのであるが、「おじさまが吐き捨てている」などという言い方から推測すると、もしかしたら庭鳥さんは、妙齢の女性なのかしら?
〔返〕 新卒が吐き捨てている「おじさまの加齢臭いや」などとぶつくさ 鳥羽省三
(西中眞二郎)
吾の知らぬ幼き日まで抉り出す友と飲む酒苦くて旨し
竹馬の友と飲む酒でしょうか?
本作の作者としては、「吾の知らぬ幼き日まで抉り出す」のも、彼ら一流の精一杯のリップサービスだと思っているから、「友と飲む酒」は「苦くて」かつ「旨し」なのでありましょう。
一見、歌人ちゃんの作品めいた作風ではあるが、歌人・西中眞二郎さんがこの一首に託した感慨は見せかけ以上に深く、「酒」と一緒に飲み干す苦渋の味はかなり濃厚である。
〔返〕 向きになり主客のあらまで抉り出す金一封は徒になりけり 鳥羽省三
(わたつみいさな)
募金請う人らの前を俯いて苦い色した帽子をかぶる
「俯いて苦い色した帽子をかぶる」が効いている。
<何々募金><蟹かに募金>と、そのうるさい事、五月蠅いこと。
本当に「帽子」を被って俯いて逃げるしか手がありませんね。
〔返〕 「赤い羽根五百円です」と言いながら自治会長が集金に来る 鳥羽省三
(邑井りるる)
人様の涙を頂戴いたすほどの正しい苦悩に欠けてきました
「苦悩」に「正しい苦悩」も<正しくない苦悩>も無い、と思っていた評者でしたが、「人様の涙を頂戴いたすほど」の「苦悩」は「正しい苦悩」だと、今回初めて教わりました。
ご教授賜わった<邑井りるる>さんに、感謝感激雨霰です。
〔返〕 人様のお金にお手手出すほどに暮らしに困っておりはしません 鳥羽省三
(リンダ)
甘ったるい言葉のあとの苦言ほど本音に聞こえ怒らせたくなる
「甘ったるい言葉」を言わせたのも、その「あとの苦言」を言わせたのも、<リンダ>さんという熟女の手管なのである。
それなのにも関わらず、「本音に聞こえ怒らせたくなる」とは、とんでもないことです。
遊び慣れた熟女の手管に翻弄されている男性のなんと愚かなことよ。
〔返〕 甘ったるい睦語の後に本音言い「それがなんだ」とどやされちゃった 鳥羽省三
(砂乃)
転職は苦渋の選択だったろう海を離れて漁師退く君
本作の作者・砂乃さんに対する評者の要求水準は高い。
上の句の「転職は苦渋の選択だったろう」はともかくとしても、「海を離れて漁師退く君」という、かなり良く出来た下の句にさえも過剰表現を感じ、「もう一工夫あって然るべきか」などと、余計なことを言ったりするのである。
〔返〕 転職は苦渋の選択だったろう船を下りにし鳥羽一郎の 鳥羽省三
(理阿弥)
なお慣れぬ苦みなりノン‐アルコール麦酒でさへも酒呑みのもの
「ノン‐アルコール麦酒」は、「酒呑みのもの」でも<下戸のもの>でもありません。
あれは、一ダース買ってもコップ一杯も呑めない代物であります。
〔返〕 十勝産砂糖大根原料の乙類焼酎本格派です 鳥羽省三
(水絵)
何も無い苦労話に花咲かす 戦後世代の陽だまりにいて
「戦後世代」の居場所は、まさに「陽だまり」であり、彼や彼女の話す「苦労話」は、苦労も何も無い「苦労話」でありましょう。
でも、これからはそうは行きませんよ。
〔返〕 何も無い苦労話は無駄話 戦後世代の井戸端会議 鳥羽省三
(鮎美)
鈴蘭の花の可憐であるものかかくまで苦き早春の酒
ついうっかり斜め読みをして、「かくまで苦き早春の酒」を、「鈴蘭の花」を原料にした「酒」かと思って吃驚しました。
何かの諭しみたいですけど、あの「可憐」な「鈴蘭の花」は、猛毒を持っているんですよ。
いいえ、本作の作者のことではありませんよ。
「可憐」と言われるお年頃では無いと思われますから。
〔返〕 清流を泳げる鮎に毒ありと思う人無し噛み付きもせず 鳥羽省三
(飯田和馬)
柑橘の苦みがのこる強く強くあるべきとして人を殴って
最近読んだ週刊誌に、「エリート教育には多少の暴力が必要だ」などとあった。
この一首から推測するに、本作の作者・飯田和馬さんは、どうやら<暴力肯定派>でも、<暴力容認派>でもなさそうである。
〔返〕 甘夏にさへ残り居る苦味かな今年の桜早々に散れ 鳥羽省三
(南葦太)
眠い って決めつけられる 必殺の苦み走ったイイ顔なのに
「必殺の苦み走ったイイ顔」は、他人、特に女性が下す評価であるから、勝手に自己評価してはいけません。
そんな「顔」をしていたら、「あっ、南葦太さんは眠いみたい」って決め付けられるに決まっていますよ。
新しい職場では、特にご注意を。
〔返〕 必殺の苦み走ったイイ顔と独り決めしてにやにや笑う 鳥羽省三
(虫武一俊)
切れそうで切れない架線 片隅にたしかに苦悩は残り続ける
「切れそうで切れない」のは「架線」のみならず。
簡単に断ち切ってしまって<無足場>などと澄ましていてはいけませんよ。
「片隅に」どころか、全面的に「苦悩は残り続ける」ことになってしまいます。
〔返〕 悩みつつ切ってしまった関係の笑窪にはつか残れる苦悩 鳥羽省三
(青野ことり)
気がかりがひとつ過ぎてもまたひとつ 母というのは苦しい生きもの
とは言いながら、それを楽しんでいるのが「母という」ものである。
〔返〕 楽しみが一つ過ぎたらまた続く三日やったら母やめられぬ 鳥羽省三
(高松紗都子)
その毒がいつか薬に変わるとき飲めるといいね苦き言の葉
「苦き言の葉」を「薬」に出来る人は、「毒」を「薬」として「飲める」人であるから、本作の作者の切なる願望はきっと叶うことでありましょう。
〔返〕 この毒を薬に出来る人になら国を預けていいとも思う 鳥羽省三
(すいこ)
透明を握る苦しさ雨の日の通学路に咲く傘の色々
「透明を握る苦しさ」というものは確かに在る。
それは、見透かされている「苦しさ」、無防備な「苦しさ」である。
折りからの「雨」の中、「通学路」には、赤や青や黄色の「色々」の「傘」の花が咲いているが、その「傘」の花の下には、「色々」の色で装って防備した可愛い少女たちの顔が在るのだ。
〔返〕 透明のレインコートに包まれて雨の中行く身構えもせず 鳥羽省三
(すくすく)
苦しさは半分こして楽しさは倍にしてゆく君と二人で
その心掛けや良し、でも「そうは烏賊の足」ってところかな。
「こして」の「こし」は、「濾し」なのか「越し」なのか?
〔返〕 苦しみは半分越えた残るあと半分は楽しみながらやれ 鳥羽省三
(珠弾)
49「死」と「苦」しみを一身に負って助っ人ガイジン参上
読売ジャイアンツの背番号「49」は「助っ人ガイジン」ゴンザレスである。
今年の彼は絶不調、故に「49『死』と『苦』しみを一身に負って助っ人ガイジン参上」とは、まさしく言い得て妙なる一首ではある。
〔返〕 「42」黒人初の大リーガー<ジャッキー・ロビンソン>永久欠番 鳥羽省三
先輩の苦労自慢にそうっすねそうっすねえと頷いている
「そうっすねそうっすねえと頷いている」ところが、本作の作者・牛隆佑さんのお人柄の善いところであり、悪いところでもある。
牛隆佑さん、「苦労自慢」ばっかりしている「先輩」にいつまでも付き合って居ると、勤務先でのあなたの先行きがどんづまりになりますよ。
そろそろ本腰を入れて仕事に励み、来春はその「先輩」をリストラの対象にしましょう。
〔返〕 後輩の苦労話は一喝す「君はヒヨコだ苦労はこれから」 鳥羽省三
(間宮彩音)
良薬は口に苦しと言うけれど子どものころは甘い気がした
確かにそのような気もしますが、昨今の処方薬はカプセル入りになったりしていて、全般的に苦みを感じなくなりました。
〔返〕 良薬は口に苦しは過去のこと平成この方良薬甘い 鳥羽省三
(中村あけ海)
もしかして秘書課は苦界? 先輩は結婚退社を身請けと呼ぶが
まさしく「秘書課は苦界」であるに違いない。
何故ならば、「身請け」される以前に、代表取締役社長とか専務取締役とかという名の「楼主」によって、たっぷりと味見されているからである。
〔返〕 もしかして庶務課は大奥? 最古参社員のお局新卒いびり 鳥羽省三
(アンタレス)
苦も楽も酸いも甘きも知り尽くし流す涙よ鹹きに徹す
つい先日、<北欧グルメツァー>とかいう名の旅行から帰って来たばかりの知人を前にして、「中国の五行説では、<酸・苦・甘・辛・鹹>の五つの味を<五味>と言うそうだ。また、同じ<五味>でも、仏教の教えで言う五味とは、牛乳を精製する過程で生じる五段階の味、<乳味→酪味→生酥味→熟酥味→醍醐味>のことである」などと、ウイキペイデア仕込みの俄か知識を披瀝し、ことの序でにと調子づいて、「仏教で言う<五味>の最終段階の味である<醍醐味>とは、今で言えば、本場物の上等のチーズの味でありましょうか?」などと言ったら、「省三さん、あんたは本場物のチーズの味を知っているんですか。あれは、あんたの体から匂って来る腋臭みたいな匂いがして、とても食べられたもんじゃなかったですよ」と言われてしまいました。
そう言われてみれば、私の食べるチーズは、雪印か森永か小岩井かの<6Pチーズ>ばかりでした。
でも、私は腋臭ではありませんよ。
誓って言います。
知ったかぶりも時と場合によりけり、本当に笑っちゃいますね。
本作の作者・アンタレスさんの体内には、中国の<五行説>で言う<五味>が骨の髄まで染み渡っているのでありましょうか?
〔返〕 苦も辛も酸きも甘きも知らずして流す涙のただ鹹(しほから)きこと 鳥羽省三
(髭彦)
彼の国の首領称ふる狂乱にイズムの末路苦く思ひぬ
「彼の国」と呼ぶ国は、人によってさまざまでありましょうが、「首領」様の鎮座まします「彼の国」はあの国だけでありましょう。
かつて「世界史」や「倫社」をご教授なさって居られた本作の作者・髭彦さんとしては、「狂乱」を極める「彼の国」での「イズムの末路」は、確かに気がかりであり、苦々しく思ったり、憎々しく思ったりもするのでありましょうか?
〔返〕 我が国の首相をめぐる狂乱に亀井静香の末路思ひぬ 鳥羽省三
(庭鳥)
おじさまが吐き捨てている「あいつらは苦労知らずのハナタレども」と
私は今朝の今朝まで、本作の作者・庭鳥さんを、鶏冠をかぶった中年男性とばかり思っていたのであるが、「おじさまが吐き捨てている」などという言い方から推測すると、もしかしたら庭鳥さんは、妙齢の女性なのかしら?
〔返〕 新卒が吐き捨てている「おじさまの加齢臭いや」などとぶつくさ 鳥羽省三
(西中眞二郎)
吾の知らぬ幼き日まで抉り出す友と飲む酒苦くて旨し
竹馬の友と飲む酒でしょうか?
本作の作者としては、「吾の知らぬ幼き日まで抉り出す」のも、彼ら一流の精一杯のリップサービスだと思っているから、「友と飲む酒」は「苦くて」かつ「旨し」なのでありましょう。
一見、歌人ちゃんの作品めいた作風ではあるが、歌人・西中眞二郎さんがこの一首に託した感慨は見せかけ以上に深く、「酒」と一緒に飲み干す苦渋の味はかなり濃厚である。
〔返〕 向きになり主客のあらまで抉り出す金一封は徒になりけり 鳥羽省三
(わたつみいさな)
募金請う人らの前を俯いて苦い色した帽子をかぶる
「俯いて苦い色した帽子をかぶる」が効いている。
<何々募金><蟹かに募金>と、そのうるさい事、五月蠅いこと。
本当に「帽子」を被って俯いて逃げるしか手がありませんね。
〔返〕 「赤い羽根五百円です」と言いながら自治会長が集金に来る 鳥羽省三
(邑井りるる)
人様の涙を頂戴いたすほどの正しい苦悩に欠けてきました
「苦悩」に「正しい苦悩」も<正しくない苦悩>も無い、と思っていた評者でしたが、「人様の涙を頂戴いたすほど」の「苦悩」は「正しい苦悩」だと、今回初めて教わりました。
ご教授賜わった<邑井りるる>さんに、感謝感激雨霰です。
〔返〕 人様のお金にお手手出すほどに暮らしに困っておりはしません 鳥羽省三
(リンダ)
甘ったるい言葉のあとの苦言ほど本音に聞こえ怒らせたくなる
「甘ったるい言葉」を言わせたのも、その「あとの苦言」を言わせたのも、<リンダ>さんという熟女の手管なのである。
それなのにも関わらず、「本音に聞こえ怒らせたくなる」とは、とんでもないことです。
遊び慣れた熟女の手管に翻弄されている男性のなんと愚かなことよ。
〔返〕 甘ったるい睦語の後に本音言い「それがなんだ」とどやされちゃった 鳥羽省三
(砂乃)
転職は苦渋の選択だったろう海を離れて漁師退く君
本作の作者・砂乃さんに対する評者の要求水準は高い。
上の句の「転職は苦渋の選択だったろう」はともかくとしても、「海を離れて漁師退く君」という、かなり良く出来た下の句にさえも過剰表現を感じ、「もう一工夫あって然るべきか」などと、余計なことを言ったりするのである。
〔返〕 転職は苦渋の選択だったろう船を下りにし鳥羽一郎の 鳥羽省三
(理阿弥)
なお慣れぬ苦みなりノン‐アルコール麦酒でさへも酒呑みのもの
「ノン‐アルコール麦酒」は、「酒呑みのもの」でも<下戸のもの>でもありません。
あれは、一ダース買ってもコップ一杯も呑めない代物であります。
〔返〕 十勝産砂糖大根原料の乙類焼酎本格派です 鳥羽省三
(水絵)
何も無い苦労話に花咲かす 戦後世代の陽だまりにいて
「戦後世代」の居場所は、まさに「陽だまり」であり、彼や彼女の話す「苦労話」は、苦労も何も無い「苦労話」でありましょう。
でも、これからはそうは行きませんよ。
〔返〕 何も無い苦労話は無駄話 戦後世代の井戸端会議 鳥羽省三
(鮎美)
鈴蘭の花の可憐であるものかかくまで苦き早春の酒
ついうっかり斜め読みをして、「かくまで苦き早春の酒」を、「鈴蘭の花」を原料にした「酒」かと思って吃驚しました。
何かの諭しみたいですけど、あの「可憐」な「鈴蘭の花」は、猛毒を持っているんですよ。
いいえ、本作の作者のことではありませんよ。
「可憐」と言われるお年頃では無いと思われますから。
〔返〕 清流を泳げる鮎に毒ありと思う人無し噛み付きもせず 鳥羽省三
(飯田和馬)
柑橘の苦みがのこる強く強くあるべきとして人を殴って
最近読んだ週刊誌に、「エリート教育には多少の暴力が必要だ」などとあった。
この一首から推測するに、本作の作者・飯田和馬さんは、どうやら<暴力肯定派>でも、<暴力容認派>でもなさそうである。
〔返〕 甘夏にさへ残り居る苦味かな今年の桜早々に散れ 鳥羽省三
(南葦太)
眠い って決めつけられる 必殺の苦み走ったイイ顔なのに
「必殺の苦み走ったイイ顔」は、他人、特に女性が下す評価であるから、勝手に自己評価してはいけません。
そんな「顔」をしていたら、「あっ、南葦太さんは眠いみたい」って決め付けられるに決まっていますよ。
新しい職場では、特にご注意を。
〔返〕 必殺の苦み走ったイイ顔と独り決めしてにやにや笑う 鳥羽省三
(虫武一俊)
切れそうで切れない架線 片隅にたしかに苦悩は残り続ける
「切れそうで切れない」のは「架線」のみならず。
簡単に断ち切ってしまって<無足場>などと澄ましていてはいけませんよ。
「片隅に」どころか、全面的に「苦悩は残り続ける」ことになってしまいます。
〔返〕 悩みつつ切ってしまった関係の笑窪にはつか残れる苦悩 鳥羽省三
(青野ことり)
気がかりがひとつ過ぎてもまたひとつ 母というのは苦しい生きもの
とは言いながら、それを楽しんでいるのが「母という」ものである。
〔返〕 楽しみが一つ過ぎたらまた続く三日やったら母やめられぬ 鳥羽省三
(高松紗都子)
その毒がいつか薬に変わるとき飲めるといいね苦き言の葉
「苦き言の葉」を「薬」に出来る人は、「毒」を「薬」として「飲める」人であるから、本作の作者の切なる願望はきっと叶うことでありましょう。
〔返〕 この毒を薬に出来る人になら国を預けていいとも思う 鳥羽省三
(すいこ)
透明を握る苦しさ雨の日の通学路に咲く傘の色々
「透明を握る苦しさ」というものは確かに在る。
それは、見透かされている「苦しさ」、無防備な「苦しさ」である。
折りからの「雨」の中、「通学路」には、赤や青や黄色の「色々」の「傘」の花が咲いているが、その「傘」の花の下には、「色々」の色で装って防備した可愛い少女たちの顔が在るのだ。
〔返〕 透明のレインコートに包まれて雨の中行く身構えもせず 鳥羽省三
(すくすく)
苦しさは半分こして楽しさは倍にしてゆく君と二人で
その心掛けや良し、でも「そうは烏賊の足」ってところかな。
「こして」の「こし」は、「濾し」なのか「越し」なのか?
〔返〕 苦しみは半分越えた残るあと半分は楽しみながらやれ 鳥羽省三
(珠弾)
49「死」と「苦」しみを一身に負って助っ人ガイジン参上
読売ジャイアンツの背番号「49」は「助っ人ガイジン」ゴンザレスである。
今年の彼は絶不調、故に「49『死』と『苦』しみを一身に負って助っ人ガイジン参上」とは、まさしく言い得て妙なる一首ではある。
〔返〕 「42」黒人初の大リーガー<ジャッキー・ロビンソン>永久欠番 鳥羽省三