心理セラピストのひとりごと

『象徴的イメージ統合療法』という心理療法を行っています。日々の中で感じたことを書いていこうと思います。

海洋冒険家 白石康次郎さんの言葉

2018年02月17日 | この人の言葉
海洋冒険家で白石康次郎さんという方がおられます。


白石さんは、ヨットでの単独無寄港無補給世界一周に挑戦して二度失敗した後、26歳の時に成功し史上最年少記録を樹立しています。176日間の航海でした。


また、ヨットで世界一周をするレースにも何度も参加しています。それもシングルハンドといってたった一人単独で航海をするレースです。


たった一人で航海するので、その間、たとえどんなことが起ころうとすべてを自分一人で対処していかなければなりません。一人ですから、海に落ちても、もうそれで終わりです。


ですから、シングルハンドのレースでは、どんなに辛くてもどんだけしんどくても、船には逃げ場がないから、耐えるほかありませんし、とにかくやらねばならない作業を着実にしていくしかありません。


それから、ヨットレースに参加しても賞金は少なく赤字にしかならない上に、何億ものお金が必要になります。したがって、資金はスポンサーに頼るしかありません。そのため、基本的に一人でスポンサー探しに尽力しなければなりません。


私はたった一人で一切逃げ場のないレースに参加している白石さんがどのような思いを持って、何を大事にして生きているのかに大変興味を持ちました。


そこで、彼が著している本を読みました。その中から、心に響いた言葉を少しここに紹介したいと思います。私たちの人生も結局はシングルハンドのレースと同じようなところがありますから。


『「人生で大切なことは海の上で学んだ」 白石康次郎著 大和書房』より
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【マストの一番上にある風速計が壊れて修理のため】マストに登るときは、乗る前と降りたときに必ず、大会本部に報告しなければならないと決められている。命綱をつけていくが、なかには、マストの上でパニックを起こしてしまい、スタック(動けなくなってしまうこと)してしまうことがあるからだ。


そうなったら、もう、自分ではどうにもならない。この場合は近くにいる船に、すぐに助けに来てもらうことになるが、それでも救助まで二、三日はかかるだろう。


僕のヨットのマストは十九メートル。途中、スプレッダーという腕のように出ている部分のないタイプ、てっぺんまで一気に上り切らなければならない。ヘルメットをかぶり、激しく揺れる中を、登山道具を使って一歩一歩、確実に登っていく。


マストのてっぺんでは吹き飛ばされないように注意しながら計器を交換し、古いテープを剥がし、シャフトを固定しているネジを外す。この間も、マストにしっかりとしがみついていなければならないから、すべての作業は片手作業で行うことになる。


だが、とにかく、交換工事は完了。


それから、また、強い風にあおられながら、一歩一歩、マストを降りる。マストは登る時よりも降りるときのほうがずっと大変なのだ。十cmぐらいずつ小刻みに足を動かし、二時間以上かけて、命がけの作業を終えた。


崖っぷちに立った時、一番いけないのはパニックに陥ることだ。南氷洋でマストに上る。そんなこと、陸で想像するだけで嫌になる。だが、やるしかない!しかも、単独行だ。やるのは自分しかいない。これもどうしようもない事実なのだ。


そんな時は、目の前の一つ一つの作業に集中し、他の事を考えないようにする。一歩、また一歩と足を出す。テープを剥がすときはそのことだけに。ネジを止める時はネジに全神経を集中する。


目の前のことを一つ一つ進めていけば、どんな難題だっていつかは終わっている。乗り越えることができるのだ。



焦ったり、先を見て、不安になったりすることは避けること。
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【山脈のような波と立ち向かうときと】同じぐらい怖いのが、意外にも、毎日の小さなストレスなのである。例えば、身につけている物が濡れたとしよう。濡れた衣服を身につけていて、気持ちがいいはずがない。こうしたことがモチベーションにも微妙に影響する。


こうした小さなストレスをバカにしないことも大事なのだ。「どんな場合も最善を尽くす」。これは、細部にまで貫徹してこそ、より輝く言葉なのである。


だから、カッパを着るときにも、水の浸入を防ぐためにタオルを首に巻いたり、肌荒れを防ぐためにベビーパウダーやハンドクリームをつけることも怠らない。船内もできるだけいつも整理しておく。シートはきちんとまとめておけば、急いで作業するときに足に絡まり、転倒するという事故を防げる。部品の一つ、工具の一つも使ったら、必ず、元あった場所に戻す。急いで何かをしなければならない時に、探し物をするほど、ストレスフルなことはないからだ。


困難な修理を終えた後など、僕だってくたくたに疲れる。でも、まあ、いいだろう。多分OKだろう、後でちゃんとやろう。こうした気持ちでいい加減な対処をして、何も起きなかったことは一度もない。むしろ、後で何十倍にもなって、自分の身に降りかかってくるのがオチだ。


だから、ちょっとでも気になることがあったら、その場で解決しておくことを鉄則にしている。
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ヨットで世界一周するというような場合、荷物はグラム単位で一つ一つチェックし、できるだけ積載重量を少なくするように工夫する。多くなればなるだけスピードが鈍り、レースでは不利になるからだ。そうでなくても、半年以上の長旅だ。積まなければならないものは無尽蔵と言いたくなるほど多い。


ただ、僕はその中にも風鈴とかシャボン玉セット、ドナルドダックの帽子、本も数冊、好きなCD、落語家のCDなど、気持ちをやわらげるものを持っていく。これらは、僕にとっては必需品だと思うからだ。最初の世界一周の時には、当時、つき合っていた彼女の香水を持っていった。落ち込むと、それを枕に振りかける。すると、元気が出てきそうな気がしたからだ。


日本人は努力とか根性という言葉がやたらと好きだ。もちろん、それも重要なことだ。だが、乗り越えられるものと、乗り越えられないものがある。どんな言葉よりその状況を「楽しむ」という言葉の方が力を持っていると僕は信じている。
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シングルハンドだから、誰も見ていない。それをいいことに、泣いてしまうこともある。


海水をもろにかぶって出てしまった衣服を、大揺れのヨットの中でおろおろしながら着替える。そんな時、「オレは何で、こんなつらいことやっているのか」と自分で自分を呪うことだってある。


もう逃げ出したい。そう思うこともしょっちゅうだ。


だが、どこに逃げていけばいいのか。海に飛び込めば、待っているのは死だけなのだ。


そんな時は、水平線のさらに向こうに視線を放つ。


「いまある幸せを満喫しなさい」。古くからのサポーターが送ってくれたメールにあった一節だ。


つらくなったら、僕は知ってることだけに心がける。そして、自分がいま、子どもの頃から夢見ていた、海を渡っているという事実に集中する。


すると、やがて、「いい年をして、夢の最中にあるなんて、幸せだ」と考えられるようになってくる。


“今泣いたからカラスがもう笑った”ではないが、自分で自分の復活を仕掛けていく。
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人生、自分が幾ら頑張ったところでどうにもならないことは山ほどある。そんな時は、次のいい風が吹いてくるまで待つ他に方法はない。待っていれば、いつかきっと、いい風が吹く日が巡ってくる。
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つらい、逃げ出したい。しばらく休みたい。心がそう求めてる時は、しばらく現実から離れてみるのもよい。間をはずすことも大切なのだと思う。
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何かちょっとした違和感がある。でも、まあ、これでもいいかと妥協して出航すると、必ず、途中で不具合を起こすのだ。
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人生、生きていればいろいろあるに決まっている。だが、そのほとんどは、愚痴ったところでらちがあかず、取り返しのつかないことばかりだからだ。
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時にはあきらめることも必要だ。ただ、僕のいう“あきらめる”はギブアップすることではない。投げ出すことでもない。
「明らかに見極める」。これが本当の意味である。



この“あきらめ”の境地に達すると、次に僕が取るべき行動が明るく照らし出されて見えてくる。
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どんなに失敗しても恥をかいても、いつか自分の風が吹いてくる日が来ることを信じて待ち続ける。そして、その間は、ひたすら、その日のために、自分に力をつけていくのだ。そうしなければ、いざ、自分の風が吹いてきたとき、その風をつかみ、風に乗ってグイグイ前進してはいかれないからだ。
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ここまで転記してみて、白石さんの声とか雰囲気を実際に感じてみようと思って、YouTubeを検索してみました。明るく、元気で、純粋な人柄がしっかりと伝わってきました。いずれも元気が出るお話しでしたので、文字起こししてみました。


YouTube動画「海洋冒険家・白石康次郎の夢と挑戦」より
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白石:(友達に)『俺は生まれてこの方ずっと楽しいよ』といっています。


インタビュアー:どうやったら白石さんみたいに生きられるんですかね?ずっと楽しく。


白石:自分の心のコンパスに従うことです。ねじ曲げない。やりたいことやるの。ほとんどの場合、『やりたいことばかりやっているとダメになる』と、誰かに教わったんだろうね。うちの親からは教わらなかったの。『おまえが決めろ』といって、決めたことには一切文句を言わなかったの。僕は、そのまんまで育ったの。
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変化を恐れない。落ち込むこともあるんだということを知ることです。落ち込んじゃいけないではなく、落ち込むこともあるんです。不運なこともあるし、調子の悪いこともあるんです。


レースは80日間あって、2000時間です。その中ではいいことも、悪いこともあるわけで、悪いことになっても当然です。だけど、必ずよくなるんです。それまでの間をどうするのか、悪い時の流れでは気の流れが悪くなって、自分の感や第六感が鈍くなるので、コンピューターが示した進路に従います。一番無難な進路を選んで落ち着いて進むのです。調子がよくなった時には、人間の感の方が当たります。自分がパッとひらめいたことが当たります。そういうときは直感を信じた方がいいです。


ずっと悪いことはないのです。治まらなかった嵐は一度もありませんでした。悪いからとかいいからとかいって、変化を恐れないで。そういう時なので、悪い時には悪いように走って、いい時には調子に乗らないように、ただひらめきを信じて進めばいいのです。
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(子どもたちへの冒険授業において)
白石:夢の見つけ方、夢の場所だけ教えときます。夢っていうのはどこにあるかというと外にはないのです。


世界一周したいと思ったのは誰が思ったの?


子供:自分。


白石:夢っていうのはどこにあるの?


子供:自分。


白石:そう、自分の心の中にあるの。


子供:頭の中じゃないの?


白石:頭の中にある夢は捨てたほうがいい。なぜかっていうとね。頭っていうのは必ず計算します。損得勘定をはじき出します。この夢やったら得かな。格好いいかなもてるかな。それに走ります。


心の中に思ったものに従うことです。
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YouTube動画「人間最高の力」より
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絶対に敗北に負けない屈辱に負けない。いつも笑顔で、スポーツでは、体の筋肉を動かすが、負けたら顔の筋肉を動かすんですよ。どんなにつらかろうが苦しかろうが笑うんです。決して愚痴らないで言い訳しないで笑って対処するんです。
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ヨットは好きだけど、才能がなくて苦手な方です。一番びっくりしたのは船酔いが激しかったんです。衝撃的な事実です。今でも船に乗ったら吐くのです。一週間吐き続けるんです。ヨットは一人ですから、交代要員がなく二十四時間吐き続ける。地獄の苦しみです。


最初は逃げてたの。何とかこの苦しみを弱点を克服しようと思って、手のツボや耳のツボを押してみたり、いろんなことをやってみたが全然直らなかった。何千回も吐くから、ある日、もう船酔い直すのやめた。俺は船酔いするんだ!吐くんだ!と思った。どうせ吐くんだったら楽しく吐こうと思った(笑)

(中略)

(船酔いも)抵抗しないで、受け入れる。受け入れると、何が起こったかというと、船酔いの主導権を握ったんです。いままでは逃げていたんですよ。逃げていたの。楽しく吐けることで主導権を握れる。


結局人間というのは好きなことをやる!欠点を補うのではなくて、好きなことをやるんですね。『好きなことをやったら不幸になる』『好きなことばっかりやったら不幸になる』そんな大人の言葉にだまされないで下さい。そんな大人にだまされないで。


思い通り行かないという大人には、『あなたの思い方が間違っているんだよ』。計算通り行かない?『あなたの計算が間違っているんだよ』。好きなことを変える必要はないんですね。では、どういう風に思えば自分の夢が叶うのかな。どういう風に計算すればこの目標が叶うのかな。


やっぱり、人間に一番強い、最強の力は好きなことをやる。つまり、笑顔ですよ。平和ってね、笑顔で出来ているのですよ。幸せって笑顔で出来ているのですよ。失敗だ、成功だ、そんなことはどうでもいいのです。幸せになるためには笑顔です。それが一番、人間にとって強い力じゃないかと思います。
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よろしければ、お人柄が感じられる動画もご覧下さいませ。動画で見た方が伝わるものがたくさんあります。なんだか、とても元気になります!自分が好きなことをストレートにやっている、波動のいい、滞りが少ない人のエネルギーです。


YouTube「人間最高の力」15分47秒  
YouTube「海洋冒険家・白石康次郎の夢と挑戦」31分35秒
こんなものもありました。
YouTube「NHKグッと!スポーツ 2017年8月22日 孤高のヨットレーサー 白石康次郎」48分58秒

ホリスティック・セラピー研究所 http://holistic-ti.com
心理や人間存在についての専門的な内容は、HPの「こころのこと」に載せていきます。



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俳優 ロビン・ウィリアムズの心

2018年02月08日 | この人の言葉
私は映画が好きで、子供の頃から数多くの映画を観てきました。


好きな俳優や女優も何人かいます。その傾向を自分的に分析してみると、何か深い精神性を感じられる人に惹かれるようです。


その中の一人に、ロビン・ウィリアムズさんがいます。


大変残念ながら、2014年に自ら命を絶たれて亡くなりました。そのニュースを聞いて、大変なショックを受けたのを覚えています。


妻のスーザン・ウィリアムズさんが、彼の死後に明かしたのは、直接的な死は鬱病のためではなく、「レビー小体型認知症」と呼ばれる変性性認知症と闘っていたということです。


レビー小体型認知症は、「認知症のうち、大脳皮質の神経細胞にレビー小体と呼ばれる構造物ができることで起こるもの。物忘れのほかに幻覚症状がある。また、手足がこわばり、運動障害が生じるパーキンソン病に似た症状を伴う」ようで、アルツハイマー型認知症の次に多い神経変性認知症といいます。


ロビンさんの症状は自殺の数カ月前から悪化して、重い不安発作のほか、筋肉の硬直やドアの位置を誤算によって頭をぶつけるなどの症状を患っていましたが、検視解剖がなされるまでは、担当医師らも病名を特定することはできなかったといいます。


最近は、このレビー小体型認知症という病名も、あちこちで耳にします。


特に私の好きなロビンさんの映画は、『ミセス・ダウト』、『グッド・ウィル・ハンティング』です。『グッド・ウィル・ハンティング』では心理セラピスト役でしたので、感じるものがありました。


どちらもよい映画ですので、よろしければ観て下さいませ。


ロビンさんのあの深い愛を讃えた眼差しは、自分自身が大きな苦しみ、痛みを知っている人の眼差しです。


確か、父親の仕事の関係で子供の頃から引っ越しをかなりの回数されていたことをインタビューで聞いた覚えがあります。そして、独りぼっちで孤独でもあったようです。


私には、彼のあのユーモアの奥には、人から嫌われないように、好かれるために、一生懸命おもしろく表現する傷ついた人の姿も見えました。


私の心理療法の現場での経験でもわかっているのは、特に小学校を2回以上転校している人は、そこで嫌われるとおしまいなので、過剰に好かれるためのいい子を演じるようになってしまいます。それは、転校回数が多いほど、ロビンさんのようにおもしろさを持っている子はその傾向を顕著に表すようになります。


ただ、ロビンさんの眼差しからは、それだけではないもっと深い何かが伝わってきます。


心よりロビンさんのご冥福をお祈りいたします。


この記事を書くきっかけになったのは、ネットでたまたま見つけたロビンさんの生前の逸話です。以下にご紹介します。

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2014年8月11日。その日私は、子どもたちと一緒に外にいた。子どもたちはワゴンの中で「さようなら、ごきげんよう」を歌いながら、アイルランドにがらくた集めの旅にでかけるという空想の遊びをしていた。


突然、親しい友人たちからメールが送られてきた。ニュースの通知もきた。ロビン・ウィリアムズの死去を伝えるニュースだった。信じられなかった。


ウィリアムズの死を「どうせまた、ハリウッドスターにありがちな依存症が原因だろう」だと片付ける人もいるかもしれない。


実は私には、まだ誰にも話したことのないロビン・ウィリアムズとの思い出がある。大切すぎて、夫にも、親友にも、親にも姉妹にも、誰にも言えなかった。


だけど今、あの時のことを話すべき時だと感じる。


最初の夫グレッグが自死した後、私は彼の遺灰を撒く旅にでた。それは彼の望みだったし、私も傷付いた心を何とか落ち着かせたかった。


私は当時ウェストハリウッドに住んでいたけれど、サンフランシスコ近くに引っ越すことを考えていて、月に1回はオークランドにいる親友を訪ねていた。飛行機でオークランドに行くのは、かなり時間がかかった。


9/11の後はTSA(運輸保安局)の検査が厳しく、遺灰が入ったタッパーを持って飛行機に乗るのは容易ではなかった。そして私はロサンゼルス空港で、威圧的なTSA職員に遺灰を廃棄するよう命令された


私はカンカンに怒って、ヒステリーを起こした。最終的に警察がやってきて、いつも所持している夫の死亡証明書を確認して遺灰の所持は許可されたが、涙が止まらなかった。


私は空港の片隅のテーブルに座り、泣きはらした顔を見られないように壁の方を向きながら、気持ちを落ち着かせようと、ウィスキーをロックで飲んでいた。


その時、私の肩に誰かが手が置いた。そして柔らかな声が聞こえた。「大丈夫ですか?あなたのことが少し気になって。一人で旅行されているようですね。TSA職員とのやりとりが目に入ってあなたが気になり、大丈夫か確かめたくて」


私は涙を流しながら、声の主を見た。信じられなかった。ロビン・ウィリアムズだった。彼はロサンゼルス空港を普通に歩き、泣いている私にわざわざ声をかけてくれたのだ。


私は息を整えて、ウィリアムズに夫のことを簡単に話した。彼の目が少し潤んだ。さらに柔らかな声で、彼はこう言った。


「依存症って本当に厄介です。心の病やうつ病は、色々と厄介な問題を引き起こす。あなたの旦那さんの経験したつらさ、そしてあなたが今経験しているつらさを聞いて、私もとてもつらい。でもあなたには、家族や友人、愛する人たちがいるようですね。それはあなたにとって、少しは救いなんじゃないかな?」


私と同じ飛行機に乗る予定だったウィリアムズは、一緒にゲートまで付き添ってくれた。


ウィリアムズはとても穏やかで優しい人だった。私たちを笑わせ、泣かせてくれた。彼は自分の心に抱えた闇に、正直だった。自分の間違いや欠点を隠そうとしなかった。彼は明らかに痛みを抱えていた。


「心の病や重いうつ病は、厄介な問題を引き起こす」。その通りだ。


ウィリアムズは、退役した軍人や現役の兵士たちをサポートした。入院している子供たちや、助けを必要としている友人や家族に手を差し伸べた。空港でヒステリックに怒っている見知らぬ人にも。


ゲートに向かう途中、彼は通り過ぎた人や、私に厳しく接したTSA職員の物まねをして私を笑わせてくれた。侮辱するようなやり方ではなく、ユーモアのあるやり方で。


そして彼は私に、「あなたはとてもいい笑い方をする。とても素敵な笑顔だ」と言ってくれた。別れる時、彼はあの毛むくじゃらの腕で温かくハグしてくれた。彼の言葉とハグに、私はものすごく元気づけられた。


あの空港での時間を、私はいつも思い出す。どん底にいた私を救い出し、元気づけてくれた。ウィリアムズは、人生で最もつらい時間にいた私を支えてくれた。


ロビン・ウィリアムズは優しくて面白い人だった。


彼の死は、言葉にできないくらい悲劇的だ。私たちを笑わせてくれたウィリアムズは、自分自身が抱える闇と闘っていた。


どうか今、ここでは手に入れられなかった心の平安を感じながら、天使たちを笑わせていますように。


ウィリアムズ、あの日そばにいてくれてありがとう。あなたは、私が必要としていた天使でした。あなたはあの時、自分の経験から話してくれたのでしょう。心から感謝します。


あなたが亡くなったニュースは、本当につらかった。あなたを失った痛みは、簡単には消えない。


ハフポストUS版から 筆者:ケイト・ライアン・オッシャー 
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ホリスティック・セラピー研究所 http://holistic-ti.com
心理や人間存在についての専門的な内容は、HPの「こころのこと」に載せていきます。



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