二千年以上も読み継がれた最古の兵法書、『孫子』。人間に対する鋭い洞察、組織の統率法を示した古典を丹念な解説を添えて、訳出。
出版社:講談社(講談社学術文庫)
『孫子』は以前に岩波文庫版で読んだことがあるのだが、なんとなくは理解できるものの、観念的な内容が多く、イメージするのが難しかった。
今回読んだ学術文庫版の方は、岩波と違い、詳細な注釈が加えられている。読み比べて気付いたのだが、やはり古典には可能な限りの解説は必要である。他の人は知らないが、知識のバックボーンのない、無関係な分野の人間にとって、解説の有る無しの差はきわめて大きい。
「孫子」は戦術的なものというより、戦略的な面を述べる点が多いような気がする。
戦わないで相手を屈するのがいい、それが基本姿勢ととらえていいだろう。戦争は必要だが、しないに越したことはない、という観点は、僕がもっている浅はかな戦争のイメージを覆すものがある。
戦いについて語る箇所も、人の心の機微を読み、その心理をうまく操るようにしているという印象を受け、新鮮な印象を受ける。
勝つ以上は客観性を重視し、理知的に判断する。その思考法は現代においても通用する普遍的なものだろう。二千年もの古くからそのような思考法が形成されていたということに興味をひきつけられた。
いくつかの格言も目を引き、勉強になる。一度は読んでおくべき古典である。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
実際講談社学術文庫版は解説が丁寧で、理解しやすいです。シンプルなスタイルの岩波もありですが、こっちの方が初心者向きだな、と感じました。