私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「危険なプロット」

2014-01-12 20:59:54 | 映画(か行)

2012年度作品。フランス映画。
「スイミング・プール」のフランソワ・オゾン監督が贈るサスペンス。才能ある生徒の作文指導を始めた国語教師が、彼の書く物語に引きこまれ、抜き差しならない状況に陥って行く。
監督はフランソワ・オゾン。
出演はファブリス・ルキーニ、クリスティン・スコット・トーマスら。




凝った構成の映画である。

国語教師ジェルマンは、クロードという生徒の文才に目をつけ、彼に自分が体験したできごとを書かせ、小説の書き方を指導する。そしてクロードの実体験を描いた文章に小説的な演出を付け加えることをアドバイスする。
その結果、小説内のできごとなのか、現実に起きていることなのかの境界が少しずつぼやけていくこととなる。
ざっくりとまとめるなら、そういうことになるだろうか。

クロードは友人の勉強の面倒を見ることになるが、その過程で友人の母親に恋をする。
友人一家や夫婦の関係を描くあたりの展開は、なかなかおもしろい。それは本当なのか、っていう境界が見えず、刺激的である。


物語の演出には、ジェルマンが指摘したような部分も見られ、それもおもしろい。

物語は説明しすぎるな、っていう感じのセリフがあるが、実際クロードやジェルマンの生活も決して説明しすぎていない。
クロードが友人の母に恋をしたのは、彼の不幸な家族関係が影響している点や、ジェルマンがクロードに執着するのは、過去に彼が小説家として挫折したことが原因である点などは仄めかす程度だ。
それがジェルマンの演出理論をなぞっていて、おもしろい。

そしてそこから、彼らの心の機微が見えてくるあたりは良かった。


だがクロードたちが行なっているのは、鍵穴から他人の生活を覗き込むものでしかない。
そこには真実ばかりではなく、観察者の妄想や空想も混じり込んでいる。
それはあくまで語り手の脳内の物語でしかない。

だからだろう。最終的にジェルマンは現実の家庭生活で、失敗することとなる。
それもクロードに執着しすぎて、妻の悩みにちゃんと向き合っていなかったのが大きい。
その皮肉がなかなか苦い。


というわけで、物語としては非常にまとまっている作品と感じた。
ただ映画内の物語と同様、映画も脳内で考えられた物語という感があり、心にぐっと届くまでには至らなかった。そこが残念と言えば残念だろうか。

しかし発想は鮮やかで、手際良く見せてくれる。良質の作品と感じた次第だ。

評価:★★★(満点は★★★★★)

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