2012年度作品。イタリア映画。
若き女性からの鑑定依頼を受けた美術競売人が不可解な事件に巻き込まれていく姿を描く、『ニュー・シネマ・パラダイス』のイタリアの巨匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督によるミステリー。
監督はジュゼッペ・トルナトーレ。
出演はジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェスら。
ラストのどんでん返しにしてやられたと素直に思えた。
後味は悪いが、物語の運び方自体は悪くない作品である。
主人公はヴァージルという名の鑑定士である。
ヴァージルは女っ気のない、孤独な男だ。そんな彼に遺産の鑑定依頼が持ち込まれる。しかし依頼人は部屋に閉じこもり姿を見せない。いらだちながらも、ヴァージルはその女依頼人クレアのことが気になっていく。
ストーリーとしてはそんなところだ。
正直見ている最中は、なぜそんなにこの女にかまうのか理解できなかった。
傍で見ている分には、情緒不安定で周囲を振り回すメンヘラにしか見えないからだ。
病気には同情するけど、彼女に時間をかける理由はない。我ながら冷たいとは思うがそう感じてしまう。
しかしそこは恋。恋愛経験の乏しいヴァージルはどんどんクレアにはまっていく。
それはクレアが若いということもあるし、後から振り返るに、クレアのような女がヴァージルの好みだったのだろう。
さてそんなヴァージルだが世間的には成功者だ。
しかし恋にのめりこんで、仕事でミスもする。父娘とも見えるのに若い女にハマる老人。恋に慣れないせいで、女を相手に戸惑うことも多い。
そんな老いらくの恋はどこか醜い。
でもだからと言って、こんな結末を迎えるのは、いささかかわいそうという気もする。
実際、このどんでん返しはむごい。
どんでん返しに対するカタルシスよりも、主人公への同情の方が強いのはいささか難だ。
しかしそんな悲劇を迎えたヴァージルだけど、記憶の中には女との幸福な時間が色褪せず残っている。
ヴァージルが迎えた老後は、客観的に見れば不幸だろう。
しかし主観的に見るならば、必ずしも不幸ばかりとは言い切れないのかもしれない。
それがある意味救いと見えなくもない。
個人的には、ラストのせいで幾分もやっとする映画である。
しかし物語として見るなら伏線も巧妙で、レベルの高い作品と感じた次第だ。
評価:★★★(満点は★★★★★)
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