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2011年度作品。アメリカ映画。
詩人でジャーナリストのマーク・オブライエンの実話を基にした人間ドラマ。重度の障害を患った主人公が38歳で一大決心を下し、童貞喪失に挑む姿をユーモアを交えて描く。
監督はベン・リューイン。
出演はジョン・ホークス、ヘレン・ハントら。
障害者の性を描いた作品だ。
それを取り扱うボランティアがあることを知っているが、知識としてはないに等しい。
それだけにいろいろ考えさせられるものがあった。
だがこの作品の良さは、そうやって観客に障害者の性について考えさせつつも、問題意識を声高に主張しているわけでない点にある。
本作の主眼は、登場人物を描くことにある。そう見えた。
それこそが僕の感じた本作の美点だ。
主人公はポリオが原因で体を動かせなくなった、作家のマークだ。
彼も人である以上、性欲はある。しかし首以外の体が動かせないため自慰もできず、介護の最中に射精することもある。
マークも言う通り、それは大層惨めなことだろう。
恋をしてもフられるなど、マークの姿はどこか悲しい。
だが彼は思い立って、障害者の性を扱う団体と連絡を取り、童貞を捨てることにする。
そんなマークを見守る周囲の人たちがみんな優しくて、見ているだけで心が温かくなる。
神父は教義的には、彼の考えに抵抗はあるものの、マークの考えを尊重するし、ヘルパーの二人も、マークの意思に協力してくれる。
見ていると胸に沁みてならない。
セックスセラピストの女性も、マークのために非常に気を配っている。
マークの怯えや、生い立ちから来る性嗜好の考察などは卓見で、賢い女性であることが、それだけでもよく伝わってくる。
そうした積み重ねから見えるのは、マークやほかの人の心であり、互いの人間関係だ。
それを繊細に観察し、きっちり描いているあたりは見事である。
マークにとって見ればどれも大変で、惨めで、つらいこともあったのだろう。
しかしそれもどこか優しく明るい雰囲気で包み込まれていて、心に訴えるものがある。
その雰囲気が心地よく、いつまでも心に残る作品であった。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)
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