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社説 [沖縄密約控訴審] 葬っていい問題ではない

2008年02月22日 | スクラップ
(2008年2月21日朝刊)



 沖縄返還交渉の取材で国家公務員法違反(秘密漏えいの教唆)罪に問われた元毎日新聞記者・西山太吉氏が国に謝罪と慰謝料を求めた控訴審で、東京高裁は一審同様、日米政府間の「密約」について判断せず、西山氏の請求を棄却した。

 西山氏がこの間一貫して問うてきたのは、沖縄返還交渉をめぐって米国との間に「密約」はなかったとする政府の姿勢と言っていい。

 だが、昨年三月の東京地裁判決は「除斥(時効)期間の経緯により(西山氏の)請求権が消滅した」と判定。

 西山氏が証拠として提出した米公文書や、当時、返還協定にはない「税金(四百万ドル)」の裏金負担を認めた吉野文六元外務省アメリカ局長の証言にも踏み込んでいない。

 高裁も一審同様、密約の存在について判断を示さなかったことになる。

 それにしても、返還交渉の陣頭指揮を執った元局長の「密約はあった」とする発言に全く触れないのはなぜか。西山氏の側に除斥期間があるからといって納得できるものではない。

 確かに西山氏が訴えた部分に時効が付いてまわるのは分かる。

 しかし、国民が知りたいのは、西山氏の裁判を通して政府に「協定の偽造」がなかったかどうかである。つまり、国の調印の在り方に違法性はなかったかどうかということである。

 もしあるとしたら、一審、二審の判決はその違法性に目を閉ざし、結果として政府の罪を黙認したことになる。

 言うまでもないが、二国間の問題であれ法的に問題があれば司法として法的立場から毅然と判定しなければならない。それが民主主義国家の三権分立の在り方であり、責任だろう。

 国民を欺いてきた事実が当事者の証言や公文書で明白なのに、司法がそれを無視するのは責任の回避と言わざるを得ず、司法への信頼を落とす。

 沖縄返還交渉では、米軍の核兵器持ち込みを認めた密約も米公文書で確認されている。これについても政府は、原状回復補償費と同じく密約はないと言い続けている。

 政府に対する私たちの不信感は、あるのにないと言い張る政府の強弁であり、日米間の重要事項が常に米公文書によって明らかにされることだ。

 調印した外交文書をすぐに国民に知らせることはできなくても、一定期間を過ぎれば公開する。その原則を確立する時期にきていると考えたい。

 日米同盟が重要であるなら、なおさら密約を闇に葬ってはなるまい。西山氏の請求を棄却することで東京高裁が自らの責任を回避したのが残念だ。



沖縄タイムス
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