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Dr.北村 ただ今診察中:第153話 「小・中学生に携帯電話持たせるな」に疑問

2008年05月31日 | スクラップ


「一日何回もネットにつなぐよ」。携帯はなくてはならないツールだ(写真は本文と関係ありません)=大阪市中央区で2008年2月8日、梅村直承撮影
「一日何回もネットにつなぐよ」。携帯はなくてはならないツールだ(写真は本文と関係ありません)=大阪市中央区で2008年2月8日、梅村直承撮影




 政府の教育再生懇談会の第1次報告で注目されていた小・中学生による携帯電話使用の制限は規制色の薄い表現になったとはいえ(毎日新聞5月27日付)、「そこまでやるの?」の疑問は消えません。問題は携帯電話ではなく使い方なのですから……。

 内閣府が昨年3月に実施した調査では、小学生の31%、中学生の58%、高校生は96%が携帯電話やPHSを使用しているといいます。携帯電話の便利さを日ごろ人一倍感じている僕としては、「オトナといわず子どもだってそうだろうに」と思わずにはおれません。同懇談会は「強制力はない」「保護者をはじめ社会に対するメッセージ」「GPS(全地球測位システム)機能に限定した小・中学生向け携帯の開発を求める」「閲覧制限の機能を付けることを法的に義務づける」と、国民から起こり得る批判を想定した弁解の余地を残してはいますが、どうしても釈然としません。

 教育とは字のごとく、「教え育てる」ことであり、ことごとく制限を加えることで安全を確保できるわけではありません。一例を挙げれば、川に落ちると危険だからといってふたをするわけにはいきません。自動車の運転とまではいかなくても、交通事故を恐れて外出を禁じることはできないのです。危険をはらんでいる川との付き合い方、道路の歩き方、信号機の見方、横断歩道の渡り方、などを学ばせることによって、できるだけ危険率を低くするための努力をしてこそ教育ではありませんか。

 もう一つ言わせてもらえば、携帯電話を持つことによる危険から守らなくてはならないのは小・中学生だけでしょうか。オトナと呼ばれる人たちが事件に巻き込まれる、犯罪に手を染める姿は子どもたちの目にどう映っていることやら……。

 子どもたちにとって、携帯電話が果たす本来の役割として期待されるのは、保護者とつながっている安心と安全の確保であると考えます。共稼ぎ、ひとり親家庭など、学校の時間に自分の生活を合わせることのできない親にとって、無事帰宅したことを確認できる、非常時に子どもからのSOSを受け止められるなど、親子双方にとって携帯電話の活用は当たり前のように生活に溶け込んでいます。

 「今帰った!」の文字が「ただいま」代わりとすれば、保護者からの「おかえり」も子どもの耳に、目に届けるチャンスが生まれます。母子家庭で育ち母親が昼夜を問わず働いていた僕としては、幼少時代に抱いた不安や寂しさがどれほど軽減できたろうかと当時に思いをはせ、親子のきずなツールを奪わないでほしいと願わずにはおれません。このニュースに心が騒いだ理由はそんな自分自身の体験が影響しているのかも知れません。

数年前に厚生労働科学研究の一環として「親と子のコミュニケーション」について検討する機会を得ました。親とどんな会話があると子どもは快く思うか、親から言って欲しくない言葉はどんなものか、あるいは思い出に残る会話とは何かなどを調査し、教育やカウンセリングの専門家と議論しました。険悪なやりとりの後でも「さっきはゴメンネ」「私も言い過ぎたかな」と面と向かって言うには気恥しい言葉が、メールでなら素直に伝えることができる訳です。顔文字・絵文字など言葉にはない表現も活用しつつ、親子関係を円滑にしていることはメールの功績として評価すべきものといえます。

通勤途上に出会った修学旅行先に向かうという中学3年生女子のひとりは、「休みがちだった私に、学校の様子をつぶさに伝えてくれた友人からのメールが届かなかったら、今の私はなかったかも知れない。電話だとお金がかさむけれど、メールの場合定額制を使えますしね」と真剣な表情で語ってくれました。

メールでの会話は味気ない、語彙が乏しくなるといった批判や、その手軽さから、イジメの道具、子どもを狙うトラブルに巻き込まれやすい環境、他人を装う卑劣な行為、悪質な犯罪に近い利用など、事件が発生するたびに暗部ばかりがクローズアップされ、携帯電話=危険と捉えられがちですが、機械を悪者に評論するだけでは何の解決にもなりません。  

ある日、通勤電車の中で7人掛けの席に座ったオトナ全員が携帯電話を取り出し、画面に見入っている光景を目にしました。今やハンカチ、定期券、携帯電話は外出時の必携品かと思われるこのご時世。取り上げるより、使うことを前提に施策を講じるほうが有効だと思えてならないのです。




毎日新聞 2008年5月29日

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2 コメント

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素晴らしい!! (みんき)
2008-05-31 02:56:24
まったく同意見です!!

本当にその通りです。

私は二人の小さい子供がいるのですが、
この物騒な世の中、子供と一緒にいない時間、

子供が危険にさらされていないか


淋しい思いをしていないか

辛い思いをしていないか、

親を今、すぐに必要としているのではないかと、


いつも不安に思うのです。
でも、子供の後をつけて回るわけにもいかないし、それでは自主性がそこなわれる。

かといって、今日一日のことを根掘り葉掘り聞いていたら欝陶しいがられるだけ。

そんな時に携帯が大活躍するのですよね!


メールで、ちょこっとお手伝いしてくれたことを褒めてあげたりして、
母さんは忙しくても、いつもあなたのことを気にしているよと、伝えられる。

困った時、助けて欲しい時にはいつも繋がる携帯電話。

親子にとってまさになくてはならない存在です!!


政府のやることは、子供から取り上げることではなく、子供を守ること!

手っ取り早いからって手抜きしないで欲しい!!
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みんきさんへ (ルナ)
2008-06-21 10:03:07
みんきさん、おはようございます。

> 政府のやることは、子供から取り上げることではなく、子供を守ること!

わたしも、携帯を規制しようというのは本末転倒だと思います。ご意見にはまったく同感です。



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