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潜水艦撃沈:英国元艦長と日蘭の遺族 60年後奇跡の交流

2007年08月15日 | スクラップ
 太平洋戦争で海に沈んだ旧日本軍潜水艦乗組員の遺族が、父の艦に撃沈されたオランダ潜水艦乗組員の遺族、父の艦を撃沈した英国潜水艦の元艦長と出会い、半世紀以上を経て和解した。15日は62回目の終戦記念日。戦争を知る世代は減り、悲惨な体験の継承が年々難しくなる。一連の経緯を本にまとめた遺族に、出会いから和解に至るまでの気持ちや、父を奪った戦争への思いを聞いた。【三木幸治】



 鹿児島県出身で米国在住のビジネスコンサルタント、鶴亀彰さん(66)。父鶴一さんが機関長として乗り組んだ潜水艦は44年7月、マラッカ海峡で英国の潜水艦に攻撃され、艦長以下88人全員が戦死した。彰さんはこの事実を知らされないまま成人し、渡米した。

 「旧日本軍人との偶然の出会いが、父の足跡を追うきっかけとなりました」。03年2月、姉妹都市交流に協力し、千葉県柏市の男性をカリフォルニア州の自宅に招いた。元海軍士官で、鶴一さんの遺影を見て「海軍だったんですね」。軍服で分かったという。後日、戦死の経緯を調べた資料が男性から届いた。マラッカ海峡周辺で日英蘭の潜水艦が戦闘を繰り広げたことを知った。

 彰さんは同年11月オランダを訪れ、父の艦によって沈められた潜水艦乗組員の遺族に会う。「親のかたきの息子が会ってよいものか、会うまで迷い続けました」

 同国海軍基地内の潜水艦慰霊碑に花を手向けたところ、この話を海軍から伝え聞いたカチャ・ボーンストラさん(62)から「会いたい」というメールが届いた。迷いながら訪ねた家には、25歳で戦死した彼女の父の遺影があった。「どんな思いで死んだのか」。鶴一さんと重なり、涙が流れた。ボーンストラさんも泣き出した。

 父の艦を沈めた英国潜水艦についても調べると、元艦長がアイルランドで生存していることが分かった。「父の最期を教えてほしい」。手紙を出したが、返事は来ない。彰さんはボーンストラさんと一緒に04年5月、元艦長ウィリアム・キングさん(97)を訪ねた。

 キングさんは突然の訪問を受け入れた。「殺されるかもしれない」と思い、返事を出さなかったという。3日間の交流で、キングさんは鶴一さんの艦との交戦の状況や戦争で負った自分の心の傷について語った。「最後は、会えて良かったと笑いかけてくれました」

 3カ月後、彰さんはキングさん、ボーンストラさんと、各自の子や孫を連れてアイルランドで再会。永遠の平和と友情を誓い、キングさん宅の庭にリンゴの木を植えた。今も交流は続く。

 「戦争はあらゆる人を傷つけ、勝者などいません。でも、その傷は、相手の痛みを感じ、互いに心を通わせることで修復できます」

 経緯をまとめた本は「日英蘭奇跡の出会い」(学習研究社)で、父の命日の先月17日出版した。





毎日新聞 2007年8月15日 3時00分
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