その昔、小畑川の自然堤防に広がる古市村が
まだまだ草深い里でキツネやタヌキが、
たくさん住んでいた頃の潤福寺でのお話です。
潤福寺のお堂の下におみきさんと呼ばれる
キツネが住んでいました。
ある時、お堂の前に娘が座りこんでいたので、
村人が心配して声をかけると・・
うわぁ~!と腰を抜かしてしまいました。
なんとその顔は真っ白で目も鼻も口もない、
「のっぺらぼう」だったからです。
娘の正体はおみきさんで、
キツネに戻ったおみきさんは、
村人が落としていった大福をちゃっかりいただきました。
いたずら好きのおみきさんではありましたが、
村の人はかわいがっておりました。
ある日、おみきさんがいつもの様に軒下で昼寝をしていると
二人の泥棒が寺に忍びこんでいるではありませんか!
二人の泥棒は部屋の隅の小振りながらも、
黄金に輝く観音様をみつけて「きっと高い値がつくに違いない」と
汗をぬぐいながら盗んでいってしまいました。
「もう、ここまでくれば大丈夫!」と観音様を見たとたん、
泥棒たちは腰を抜かして驚きました。
観音様はいつの間にか恐ろしい顔をした
不動明王にかわっていたからです。
暫らくして元の姿に戻ったおみきさんは、
「今度は住職のおみやげでもいただくか」というと
また軒下で昼寝を始めました。