放送劇に思う

2011-11-01 22:53:28 | インポート

子供の頃の我が家では、テレビが入ったのは他所の家庭よりもずっとおそかった。その代わりに父は子供にもラジオは与えてくれていたから、小学生の頃からラジオ放送には親しんでいた。なかでも楽しみだったのは当時の子供向けのラジオドラマだった。本を読むのも好きだったが、ラジオの放送劇という、音と台詞だけで成り立っている世界も大好きだった。

おとなになってからもかなり後々までラジオドラマは愛好していたのだが、放送時間の変化や自分の生活時間の変化でいつの間にか、ラジオドラマを聴かなくなっていたのだった。

ところが、今になって、パソコンの動画サイトを利用し始めてから、再びラジオドラマの世界を取り戻しているようだ。ラジオドラマのファンたちは、ドラマを再び甦らせることを望んだわけだ。いや、わたしもカセットテープで採ったラジオドラマを何作も残しておいてあったのだが、たびたびの引越しのときにほとんど処分してしまった。実に惜しいと思っている。こういう場をもっと早く得ていたらあの消えたドラマの数々も残せただろうにと思う。

いまさら言っても仕方がないが、一度放送された番組はよほど優秀な作品以外は消えてしまう。もったいないはなしだ。テレビドラマのように面白いものはDVDになったりしていつまでも人に見られていくものとはこの辺が大きく違うわけだ。昔のNHKの放送劇の数々、すごいものがいっぱいあったのだが、作者の著作権の問題もあるし、当時の技術の問題もあって、今、聞けるものは本当にわずかだ。

パソコンのサイトで、ラジオドラマの再放送の一部を聞けるとは夢にも思わなかったのが、先日、ふとしたことでそれを知ることができた。何のことはない、水谷豊さんのまだ見ていない動画がないかと検索していたところ、古い水谷さん主演のラジオドラマが丸ごと一作出てきて、それでわかったのだ。まあ、玉石混交で、これはというものから屑までいろいろだが、これは目を使わなくてすむのも有難い。

ラジオドラマ、つまり音と台詞だけの世界での演技のできる役者さんはなんと言っても本物だと信じていたので、水谷さんのこの作品を聞いて、来年のゴールデンウイーク頃に上映されるという新作映画『HOME 愛しの座敷わらし』が非常に楽しみになった。この演技力だ、刑事もの以外の世界でも十分にいきるだろう。普通の家庭の冴えないお父さん役も生き生きと演じて見せてくれることと思うのだ。