ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

180 生きてこそ光り輝く 石橋幸緒

2011-01-02 07:41:03 | あ行
 図書館より。PHP研究所。

 素晴らしい本に出会ってしまった。未熟児で腸の癒着があり、医者に「三日もたないかもしれない」といわれた命。何度も手術を繰り返す。四歳まで病院のベッドを下りたことがなかった。病弱のため養護学校に高等部まで通った。
 小学校三年生の夏、将棋教室に通い始めた。清水友市先生の教えは厳しかった。ポスターにきれいなお姉さんがいた。それは先生の娘、清水市代女流三冠(当時)だった。

 子供が読めるように漢字にはルビがふってある(すべてではない)。それでもぜひ大人にも読んで欲しい本だ。こんな人生があるなんて。
 何でもやりたがる本人の負けん気。孟母三遷を地で行く母親の愛情。的確な清水先生の教え。それらがあって十九歳で女流王将になったのだ。

 病を嘆く暗い話では決してない。ユーモアがある。最後にギャグを持ってくるところは落語的だ。赤ちゃんの自分をマヨネーズと言ったり、歩けない自分をクララと言ったり。
 アマ女王戦、女流アマ名人戦ともに相手が差し違えをして勝つところがある。そういうものなのか。
 好きな言葉は「万物生きてこそ光り輝く」。書道の名人でもある。原典では「光輝を生ず」だが、それよりいい解釈だと思う。

*学校に行ったら玩具がないので「何で遊ぶんだろう?」と不思議に思った。
#トランプのポーカーが好きで、給食のデザートを賭けて勝ち、一週間のデザートを独占していた。
*車椅子の子が著者の頭を靴で叩いた。授業参観に来ていた母はいじめかと驚いた。本人は驚かない。車椅子に乗せて欲しいというサインなのである。
#普通校も養護学校のように、生徒にとって魅力的な学校に変わればいいのに……
#「家で、お父さんやお祖父さん相手に将棋を指したことがある子は、気がつかないうちに変なクセがついている。何も知らない子は、正しい将棋を最初から覚えられる。そのほうが、後になって、絶対に強くなる」
#「どうしてでもいい。後からそれはわかってくる。今は、ただ覚えなさい」
#「中途半端に将棋を覚えて、これで将棋がそこそこ指せるようになったと思うのが一番よくない。そんな将棋は、弱い相手となら勝てても、強い相手とでは勝てない。勝てないと、将棋に嫌気が差してくる。そうなっては長続きしなくなる」
 三段論法を使って、そう言った。
「だから、私がいいと言うまで、誰とも将棋を指してはいけない」