ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

22 もっとコロッケな日本語を 東海林さだお

2007-03-22 19:07:00 | さ行
 文春文庫。

 東海林さだおさんの本は、文春の『あれも食いたいこれも食いたい』関係と、オール讀物の『男の分別学』関係の二つに分かれる。これは後者。

 後者はページが多いので、冗長になる傾向にある。
 「ドーダの人々」「青春の辞典」がともにパート3まで進んでいることに危機を感じる。「野菜株式会社 リストラ編」もさんざんやった題材である。

 ちょっと不安を感じた一冊。

 ドッグイアー。

#(カバンを) この(揺すってみる)というのは、カバンの用途上あまり意味はないのだが、大抵の人はなぜか揺すってみる。

#T: パターンって幾つくらいあります?
 S: 結構あるほうだと思う。六通りぐらいはあるんじゃない。(略)食べ物だけで言うと、ルポものあり、考察もの、分析もの……あと何だろ、三つしかないな(笑)。

 Tは槁春男、Sは東海林さだおさん。 
 きっと東海林さんの頭の中では六つに別れているのだと思う。

21 科挙の話 村上哲見

2007-03-21 20:53:47 | ま行
 副題、試験制度と文人官僚。講談社現代新書。

 まず構成がすばらしい。序章の1節の題名は、「都大路の春」だ。
 辛酸をなめるような受験勉強のあと、ついに合格する。一団は知貢挙(科挙の最高責任者)を訪れ、感謝の辞を述べる。これが三日続く。
 続いて宮殿で宰相(今でいう総理大臣)から声をかけてもらう。
 ハイライトは長安、曲江での大祝宴。舟遊び。楽人。妓女。いつの間にか集まる群衆。将来のエリートの玉の輿に乗ろうと、若い娘が集まる。
 この宴会を離宴と言う。これで一同は解散し、一度郷里に帰り、文字通り錦を飾るからである。

 著者は教科書を書くことに慣れているのであろう。まず一番華やかな場面で始める構成。とりあえずざっくり説明し、詳しいことは後で説明するその手管。いくらでも難しく書けるテーマを、ここまでわかりやすく書けるとは脱帽。
 また、「~の話」という書名がいい。

 ドッグイアー。

 1180年、成都での「雨かんむり」をめぐるトラブル。これは引用できる分量ではないので、ぜひお読みいただきたい。知識人のユーモアに参った。

#(杜甫は)杜工部と称されるけれども工部に勤務した経験はなく、名目だけの官位をもらっていたのである。

 韓愈、白居易、文天祥、蘇東坡、王維、欧陽修(これは私はよく知らない)ら、有名どころがさすがにごろごろ出てくる。

20 マザー・グース 1 谷川俊太郎・訳

2007-03-10 07:38:49 | た行
 和田誠・絵、平野敬一・監修。講談社文庫。

 講談社のしおりで、マザーグースの一遍が載っているものがあった。
「ひねくれおとこがおりまして」
で始まる。ずっと「ひねくれ」なのがおかしい。

 ほかに、よく知られている「ハンプティ・ダンプティ」「きらきらちいさなおほしさま」(いわゆる「きらきら星」)などが載っている。

 個人的には、
|まかりでたのは
|しりがるジョーン
|だあれもそばにいなければ
|わたしはひとりぼっちです
 というのが、なんとなくおかしい。

 ただ原文は巻末にまとめられている。願わくは、見開きで、和訳・イラスト・英文が一覧できるようにして欲しかった。それだと子供には向かないと判断されたのであろう。
 英語わらべうたのライム(脚韻)を味わうことができたのに。