ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

29 ブラック・ユーモア入門 阿刀田高

2007-05-19 20:30:57 | あ行
 副題、恐怖と笑いのカクテル。改稿新版。ワニの本(新書)。
 本文イラスト、楢喜八。

 大学生時代の前半、著者にはまった。それまで、(自分ので言うのはなんですが)純粋に生きてきた私にとって、この毒をもった笑いというのはふれたことがなかった。『炬燵』『犀』にどきどきした。

 この本の白眉は巻末の後書き、『私のブラック・ユーモア論』である。
 現代人は精神的に追い詰められ、その補完として弛緩を求め、攻撃される前に自分の不幸をさらけ出す、という論理は見事。筆者の知性を感じさせる。

28 なぜ、男は「女はバカ」と思ってしまうのか 岩月謙司

2007-05-16 22:18:53 | あ行
 講談社+α文庫。

 いかにもノベルスらしい、キャッチーな書名。本屋で「手に取らせれば勝ちだ」という意図が透けて見える。

 鼻につくのは「別著、ナントカをご覧ください」というくだりが多すぎるのだ。そもそも結論が書名で出ているので、内容はその証例を並べるしかない。その証例を、他著に逃げてしまう。しょせんノベルスで、読者はそこまでやらんよ。

 着眼点はよいのかもしれないが、著者のスタンスに好意を覚えない本。

 ドッグイアー。

#かつて猫が風呂に入っているシーンがCMとしてテレビで放送されたがことがありました。(パトリック注・ふつう猫は水を浴びるのが嫌い)CM作成者は、なんと2000匹目でようやく風呂好きの猫を発見したのだそうです。

#女性なら誰でもできるこのことが男性にはできませんので、恋人との間に誤解や怒りを生む原因になっているのです。(略)「私のことをどんなふうに思い出しているの?」「私があなたを思い出すように、あなたも私を思い出している?」としつこく聞いてしまうのです。

#路上駐車する場合、良識ある女性は、交通の邪魔にならないように路肩ギリギリにクルマを寄せて停めようとしますが、結果的には自分が停めやすいようにクルマを停めてしまう傾向が強いのです。

27 B・A・シロニー 誤訳される日本

2007-05-07 21:59:46 | さ行
 光文社カッパビジネス(新書)、山本七平監訳。副題、なぜ、世界で除け者にされるのか。

 日本は世界に認められたいと思う反面、世界(特に欧米)には自国の文化は理解できないだろう、理解されないままでよい、と思う傾向がある(東洋の神秘、というやつだ)。これを喝破しただけ著者は偉い。

 「誤訳」とタイトルにある割には、それは少しだけでかつ強引な解釈で、著者の日本研究、特に天皇家への研究をつらつらつづったもの、という印象が強い。

 個人的にはこれは私が大学に入る前の受験旅行で買ったものである。青臭かった当時、これを真に受けて留学試験の小論文に、このロジックを書き連ねて不合格になった思い出がある。

 ドッグイアー。

#四方の海みなはらからと思ふ世になど波風の立ちさわぐらん
 この和歌では戦争に反対する気持ちは表現されていないが、人が安らかに暮らせず、戦わねばならぬことを深く憂えている。

 何を言っているのだ。どう考えても戦争反対としか読めないではないか。立憲君主国であり、独裁国家ではないから、自分の意見を無理やり通すわけにはいかない。ただ歌に国家安寧の祈りをこめる昭和天皇のご自分の立場への理解と臣下への尊重が、わからないのであろうか。


26 ドイツ参謀本部 渡部昇一

2007-05-05 21:42:34 | やらわ
 中公新書。
 フリートリッヒ大王またはモルトケに興味を持った方ならば、絶好の入門書であろう。

 フリートリッヒ大王からシャルンホルスト、クラウゼヴィッツ、モルトケ、シュリーフェンまで、精強を誇ったプロイセン/ドイツ参謀本部の有り様を描く。

 フリートリッヒ大王の、土地を取るのでもなく、戦闘に負けても戦争に勝てばよい斬新なドクトリン、モルトケの鉄道を用いた分散進撃外線包囲作戦など、わかりやすく書かれている。

 著者の専門は英語学だが、だからといって逃げるような記述はしない。それぞれの戦略をはっきり評価している。著者独特の、「ナントカ大学でナントカ教授の教えを乞う光栄に浴した」的な自慢話もない。

 繰り返して言うが名著。

 ドッグイアー。

#戦争は不幸にも国家間において正義を得るための唯一の手段であるから、すべての戦争は正義である。したがって戦争の正義は手段を選ばずに勝つことを許さない。戦争の目的は、本質的に言って公平にして永続的な平和の達成であるが故に、手段も正義に反してはならない。非戦闘員は保護されねばならず、被害を蒙らないよう配慮されなければならない。(スイスの法学者、エンメリッヒ・ド・ヴァッテル)

#「あれは運命だったのだと思うより仕方ない。あの戦はどう考えても自分の勝つべき戦だったのであるから」(ワーテルロー後のナポレオン)
 結局、最期まで自分の敗因がわからなかったということである。

#我々の目にふれるナポレオン伝は英語経由のものが少なくないため、ウェリントンの功績のみが重視され、プロイセン軍の出現はおまけみたいに扱われることがあるが、それでは不公平である。

25 超古代文明 奇跡の真相 佐和宙

2007-05-05 07:59:10 | さ行
 副題、ピラミッドが知っている人類創生の秘密。KKベストセラーズ、ワニ文庫。

 ピラミッド建設は当時の人類の技術では説明がつかない。さらに古いシュメール文明も、母体になる文明がない。宇宙人がやってきて文明を授けた、あるいは巨大建造物を造った、という説が述べられている。

 グラハム・ハンコック、ストーンヘンジ、エドガー・ケイシー、スフィンクス、ネバダ51、ノストラダムス、ファティマの奇跡、クロップ・サークル、ピリ・レイスの地図など、ごった煮のように登場する。
 結論はこの本が出版された1997年に何か新情報が明らかになる、というが。残念でした。

 ドッグイアー。

#(火星の)巨大人面石をはじめとする火星表面の建造物群が存在する地域は”シドニア”と名付けられた。