ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

168 もてない男 小谷野敦

2010-11-28 12:09:35 | か行
 図書館より。ちくま新書。副題、恋愛論を超えて。

 なにか心に残る本ではないが、著者の読書寮に驚く。古今東西の本をあまねく読んでいる。少女マンガはちょっと遠慮しておくが。
 「おれは東大卒なのになぜもてない」というルサンチマンが楽しい。エッセイストが向いているのではないか。
 著者近影も自己主張を感じる。

*筒井康隆は医者に酒と煙草を止められて、何を楽しみに生きたらいいのかとわめいた。奥さんは「あたしがいるじゃないの」と言った。

165 翻訳家列伝101 小谷野敦

2010-11-14 09:38:14 | か行
 図書館より。新書館。「こやの・とん」と読む。

 偏執的なまでの調査は幼い頃からの読書量によるものであろう。
 坪内逍遥、二葉亭四迷、上田敏、木下順二、小田島雄志、柳瀬尚紀、柴田元幸、福島正美、小尾芙佐……。その範囲は広い。

 ただしルサンチマンをぶつけるような文体は人を選ぶかもしれない。わたしは読んでいて「学会に復讐してやるのだ!」というナリハラ博士を思い出した。

*木下順二はシェイクスピアを訳した
*鴻巣友季子は美人
*柳瀬尚紀の英語力は完璧
*福島正美は47歳で亡くなった
*四迷はロシア語に通じた
*『星の王子様』の内藤濯(あろう)は円楽に怒りをぶつけていた

 41ページに機種依存文字らしい「・魂珠」(ろざりよ)という表記がある。
 

164 金魚の買い方・育て方 勝田正志・大森光子

2010-11-14 09:29:56 | か行
 図書館より。成美堂出版。この二人は監修者。

 これ一冊あれば、金魚の選び方から育て方、繁殖、水草、病気の対処まですべてわかる。
 写真が多く、その写真が美しい。金魚の魅力を余すところなく伝えている。水槽のライティングも美しい。見ているだけで楽しい。
 私は初期水槽で難儀しているので、その記述が少なかったのが残念。
 金魚鉢を忌避する人もいるが、この本では「どこにでも置けて便利」「江戸風情」と紹介している。「上見(うわみ)」が好きなのであろう。

144 バナナの皮はなぜすべるのか? 黒木夏見

2010-09-09 05:59:43 | か行
 図書館より。水声社。どこだ。

 「バナナの皮ですべる」というギャグを徹底的に集めた本。著者はバスター・キートンの大ファン。チャップリンからケロロ軍曹まで、あるいは20世紀初頭のアメリカ、大正文学のバナナまで、手広く網羅している。著者いわく「本の森をさまよい、ネットの海を漂った」だそうだ。

 網羅はいいが、結論に向かっていく感じがないため、読み進める高揚感はない。イラスト・写真が少ないもの残念。

#バナナ剝く夏の月夜に皮すてぬ 芥川龍之介
#ふんでゆくバナナの皮に秋の蝿 高浜虚子

143 USTREAM世界を変えるネット中継 川合拓也

2010-09-09 05:53:52 | か行
 図書館より。ソフトバンク新書。

 ソフトバンクがユーストリームに出資したのを気に、本を真っ先に出そうと突貫工事で書かれた本。それでも、視聴の仕方、放送の仕方など丁寧に解説されている。デジハリ講師の知識の賜物。「ソーシャル鍋」「ソーシャル引越し」などアイデアがよい。「そらのちゃん」が男前である。

#ユーストリームは誰が見ているかをソーシャルストリームで可視化したことで、これまでにないダイナミックなメディアになったのです。

126 名人 小林信彦

2010-07-15 06:51:01 | か行
 図書館より。朝日新聞社。副題、「志ん生、そして志ん朝」。

 副題通り、二人の名人についてあちらこちらに書いた原稿をまとめたもの。だから一度読んだ話が何度も出てきて、ページを間違えたかと思う。
 回顧談、それ以外の何者でもない。ひとを選ぶ本。

#文楽からの話があったとき、朝太が「勘弁してよ、父ちゃん」と辞退したことを、志ん朝の弟子の志ん五が証言している。
(朝太は志ん朝の前の名前。父ちゃんは志ん生のこと。志ん五は見たことがあるが、志ん朝の弟子だなんて!)

125 アストロバイオロジー 小林憲正

2010-07-10 16:25:11 | か行
 図書館より。岩波科学ライブラリー。副題、宇宙が語る〈生命の起源〉。

 話はパスツールから始まる(パストゥールと表記)。生命が地球に初めて発生したときのメカニズム、彗星や隕石に見られる生命の跡、そして木星や土星の衛星(エウロパやタイタン)に生命が存在する可能性を考察する。
 南極の地下4,000㍍に湖があり、独自の進化を遂げた生物があるかもしれない、なんておもしろい。

 こんな学問もあるのか、と引き込んでくれる好著。図もわかりやすい。

123 靴の事典 岸本孝

2010-07-10 15:11:05 | か行
 図書館より。副題、下駄をはいた? 文園社。

 靴の歴史や世界の民族靴など、雑学本のように気楽に読める。特に歴史については詳しい。履き物の歴史には、開放的なサンダルと閉塞的な革袋のような靴の二つがあることがわかる。
 書き手が気楽になりすぎたが、自分から笑っているような文章が鼻に付く。元新聞記者ということで、文章は上手で取材力もあるのだが。

#野口雨情の童謡『赤い靴』の詩には、モデルがありました。その女の子の名前は『きみちゃん』。きみちゃんは赤ん坊のとき、いろいろな事情でアメリカ人宣教師の養女に出されます。母、かよさんはきみちゃんがアメリカに行って幸せに暮らしていると信じて有情にこのことを話し、この詩が生まれました。しかし、きみちゃんは病気のためにアメリカには行きませんでした。
*岩崎きみちゃんは父無し児のため預けられ、結核により9歳で亡くなった。

122 アクセントの法則 窪園晴夫

2010-07-05 05:51:56 | か行
 図書館より。岩波科学ライブラリー。

 大学時代友達に「授業でこんなことを習ったよ」と教えてもらい印象に残った話がある。「未知の外国語の単語があると、後ろから三つ目を強く読む」
「ベススメルトヌイフ」 ヌを強く読んでしまう。

 これは自分で考えたもの。
「後ろから二つ目の音節を強く読むと、英語っぽい」
「ナガーノ」「アオモーリ」「アキータ」 (長音のところを強く読む)

 そんな不思議を体系的に解説した本。
#語末から数えて三つ目のモーラを含む音節にアクセントが置かれる。

 手軽に読めるこのシリーズにしては、ちょっととっつきづらいか。

112 新落語的学問のすすめ 桂文珍

2010-05-30 10:47:10 | か行
 図書館より。潮出版社。

 文珍師匠が慶應大学で笑いについて語った講義録。
 その知識に驚く。まるで大学の先生だ。西洋の笑い『ほら吹き男爵』の話あり、英語の笑う動詞の多様性(laugh, smile, giggle, grin, sneer, ridicule)、狂言、浄瑠璃、何でもござれ。
 創作『心中恋電脳』もオチ以外読める。

#(落語は)右剥いて話しているときには、話し相手が右にいることを想定しているし、またその後ろには別の人物がいたりする。そういう架空の場所に人物がいるのを演じているのに、それをTVカメラがスイッチングで変えてしまうと、空間が全部つぶれてしまいまして、何のためにやったかわからないということになるわけです。(略)落語はテレビ向きではないんだなあという感じがしてまいります。

 ただ、あくまでも口述したその通りなので、冗長である。例えば上に引用した文章も、最初から本として執筆しておれば、「ということになるわけです」「んだなあという感じがしてまいります」の部分はないであろう。学生と問答している部分なんて冗長そのものである。