ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

185 書斎の作りかた 林望

2011-01-23 14:14:42 | は行
 図書館より。カッパブックス。

 リンボウ先生の本はテーマが好みなので手にとってしまうが、おもしろいと思えない。文章の薄さが気になる。口述をレコーダーで記録したかのような文体だ。
 「テレビゲームは書斎ですることではない」「地下室に書庫」などと言われると著者と私の距離が瞬間で遠くなってしまう。

 それなりにドッグイヤーはある。

*壁にシナベニヤを貼ると全体がクリップボードになる。
*照明は後ろから当てる。
*日本語は横書きにするべきだ。手が汚れることと、外国語文を引用することから。
*名作はまた買えるから捨てる。業界紙やマイナー雑誌はとっておく。

182 フレディから学んだこと 日野原重明

2011-01-08 07:55:04 | は行
 図書館より。童話屋。

 著者は日本でもっとも有名なお医者さんの一人。
 前書きに「童話屋に電話をして」なんてあるから童話作家を揶揄してそう言っているのかと思った。出版者の名前なのね。

 前半は著者の音楽劇の台本。フレディだダニエルだと片仮名の名前ばかりで、女の子はバレエを習い、葬式にはフォーレを歌う。西洋的だ。と思わせておいてクライマックスでいきなり「良寛が『うらをみせ……』と詠っている」とお坊さんが出てくるから仰天する。

 後半は著者の哲学的随想集。生死について突き詰めているのがよくわかる。「日本人の死への対応」で「無関心型、楽天型、現業型、あきらめ型、ゆりかご型(運を天に任せる)、覚悟型、受容型、対決型、恐怖型、逃避型」の十に分類しているのが興味深い。

 最後の読書の感想で、「死が怖くなくなりました」と子供も書いているが、私は底まで悟れない。ずっと恐れていくのかもしれない。

179 天体望遠鏡の使いかたがわかる本 藤井旭

2010-12-26 10:58:20 | は行
 図書館より。誠文堂新光社。

 ほぼオールカラー。まずそれがいい。白黒なのは「自作しよう」などという初心者向けでないページなのでまず関係ない。
 望遠鏡の選び方はあまり載っていないが、買ってからどのように見ればよいかがよくわかる本。ピント合わせや光軸合わせなど、わかりやすい説明がある。反射式望遠鏡の主鏡の真ん中にマーカーで印をつけるとよい、なんて玄人らしい。

 圧巻は後半の「いろいろな天体とその見かた」。写真が圧倒的に美しい。これを見るだけで楽しい。木製の縞、土星の輪と衛星、火星の極冠、天王星の青緑の色……。

 惜しむらくは誤字の多さ。誤変換らしきものもあり、チェックしていないのではないかと思ってしまう。

#天体望遠鏡で細かいところが見られる能力は、すべて「口径」で決まってしまいます。その能力以上にむやみに倍率を高くしても、像はボケ気味となり、しかも暗くなるので少しもよいことはありません。

177 親馬鹿力のおかげです 林家木久扇・林家木久蔵

2010-12-25 07:53:06 | は行
 図書館より。岩崎書店。

 ここまでお坊ちゃんだと、すがすがしい。例えば小さん師匠の孫、柳家花禄は祖父と比べられることを嫌がっているそうな。二代目は心から親を尊敬している。人を信頼している。疑うことを知らない純粋培養。大丈夫かと心配になるほどだ。

 初代、現木久翁の若いころが読める。親は雑貨商で結構資産があったが、戦争の爆撃ですべてを失った。生活保護を受けるために離婚したら、本当に別れてしまった。妹がいたが父に付いていった。新聞配達、廃品回収、映画館のバイトをして家計を支えた。

#だからぼくは、自分が親になったとき、「なにがあっても、この子達の父親でいよう」と決めました。

#ぼくら落語家は父親になると、煎った豆がポンとはじけるように「一皮むける」ことが多いのです。
 せっかく授かった子どもをちゃんと食べさせていかなきゃと思えば、これまでのやり方じゃ駄目だと気付くもの。稽古にだって熱が入るし、周囲とのお付き合いも丁寧になります。(略)つまり、欲が出るんですね。お金のことだけではなく、生きるということ自体に前向きな意欲が湧いてくる。

#(小朝師匠が二代目に)過去の名人たちの落語をぜんぜん聞いたことがないというから、テープを貸して勉強させようとしたら、
「聞けないんです」
 なぜかといえば、すでに亡くなった人の声だからこわいんだそうですよ。
 

156 フォークの歯はなぜ四本になったか ヘンリー・ペトロスキー

2010-10-16 20:23:26 | は行
 図書館より。平凡社ライブラリー。副題、実用品の進化論。

 今はやりの、キャッチーな書名だが、これは翻訳書、親切さを期待してはいけない。退屈なエピソードがだらだらと垂れ流される。
 問題のフォークの歯も、「初めナイフの二本使いで、突き刺して回転しないように日本になり、三本になり、四本になり、それ以上増えると大きくなって口に入らないから四本」というもの。

 ファスナーやペーパークリップの由来など、楽しいところはある。
 その道の人には評価が高い本のようである。
「形は機能に従う」に疑念を呈している著者の主張に同調できるなら。

154 愛でもくらえ ビートたけし

2010-10-10 12:23:42 | は行
 図書館より。祥伝社。

 もう本当に「おねえちゃん」と「やりたい」という欲望をストレートに出せることに驚くというかうらやましいというか(待て待て)。
 それでも何百万円で始末をつける金銭感覚はやはり庶民のものではない。
 前半では古きよき時代の、芸人に温かい浅草が語られる。これがいい。

#「あの人のかみさんになれば食いっぱぐれがないって思った、あたし」

#いちばん上の兄貴は相当、頭がいいんだ。小説を読みたいからというんで、全部英語の本で読んでいたんだもの。(略)兄貴はそれ(ペーペーバック)を、高校ぐらいのときにはすでに読めていたっていうからね。だからそれは、日本語の小説を読んでいるとお袋にぶん殴られるからじゃないかと思う。英語だったらおふくろもわからないから(略)。

#最後まで押し通せなかったら
#やさしさではない
#途中でくじけるなら
#悪人になればいい
#やさしさは根性です

140 漫才 ビートたけし

2010-08-14 14:52:24 | は行
 図書館より。新潮社。

 不思議な本である。ビートたけしとビートきよしの漫才で250㌻ほどの本になっている。「おことわり」を読むと、「当時のネタを再現したものに、現代ネタを追加したもの」とある。たしかに見えないはずの漢字に突っ込んでいたり、やたら饒舌に人名を列挙していたりするのだ。
 連載でもないし、語りおろしでもないし、不思議なコンセプトの本。

 あとはひたすら下品。そうでないのをドッグイアーで一つ。

#ソクラテス、プラトン、(中略)哲学者や数学者たちがギリシャで色々物を考えているときにだな日本は弥生時代だぞ。あいつらがいろんな哲学を考えているときに、日本は米食って動物、石で叩いていたんだぞ。

134 天体写真の写しかたがわかる本 藤井旭

2010-08-10 07:18:34 | は行
 図書館より。誠文堂新光社。

 本なのだけれどほとんど写真とイラストで、ムックのように気軽に読める。読むというよりは図を見る感じ。
*天文台の望遠鏡を覗かせてもらったら、携帯電話のカメラでも写真を撮るとよい。
*シャッターの手ぶれを防ぐには、レリーズかセルフタイマーを使うとよい。
*レンズに露がつくのを防ぐには、携帯カイロで温めるとよい。
*フォトショップで修正、合成できる。

 とりあえず三脚が欲しくなった。

120 太陽は23歳!? 日江井榮二郎

2010-06-27 16:03:48 | は行
 図書館より。岩波科学ライブラリー。副題は皆既日食と太陽の科学。

 副題通り、皆既日食の研究を軸に、最新の知見を含め太陽の概観を紹介する。
 黒点、コロナといった誰でも知っているものから、フレア、太陽風、プロミネンス、白斑、CME(いい和訳が欲しいね)まで、易しい文章で書かれている。
 「ひのとり」「ひので」「ようこう」など人工衛星も脇役で登場します。

#自然界について、深く深く熟考し、常に常に考えを巡らせていると、自然界の女神がちらとその姿を見せてくれると、朝永振一郎が本に書いています。自然のままの地球に学び、太陽の声を素直に聴き、自然界を統べる「きまり」の根源を深めたいと私は願っています。

119 新・貧困なる精神 本多勝一

2010-06-27 15:32:26 | は行
 図書館より。講談社。

 この大物ジャーナリストの本を読むのは久しぶりだ。
 「(一人称)俺」「NHK受信料は払えない」「信州あるいは信濃県」「マーク=トゥヱーン」など、相変わらずでうれしくなる。
 また山岳部出身の山男らしく、自然保護や無謀な登山への批判は厳しい。ディズニーランドへの攻撃もいちゃもんであるが楽しい。金大中へのインタビューは、流し読みした。

 わかっていないのはカバーの紹介文を書いた人だ。筆者のローマ字表記を、奥付では「ちゃんと」Honda Katuitiとしている。カバーではKatsuichi Hondaとしている。二つも「誤り」がある。こんな基本的なこともわかっていないようでは失格と言えよう。