ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

178 ストレッチバイブル 長畑芳仁

2010-12-26 10:50:21 | な行
 図書館より。ベースボールマガジン社。ムック。アスリート編。

 よくできた本である。これまでのスポーツ本は「ちょっと見た目のいい知り合い」をモデルに使うことが多かったが、水野裕子さんというきれいな方である。存じ上げなかったが、スポーツや鉄道に詳しいタレントであるらしい。ほかにも大型二輪免許を持っていたり、すしや釣り、ゲーム『ゼルダの伝説』にも詳しいらしい。

 体の動きは文章よりも写真がいい。些細なポイントも、これはマル、これはバツと写真を載せている。わかりやすい。
 イラストも適当なものでなく、水野さんの似顔絵はちゃんと写真で実際に着用しているものを描いている。芸が細かい。

148 図形に強くなる ニュートン編集部

2010-09-16 05:54:20 | な行
 図書館より。ニュートンプレス。ムック。

 幾何学のイントロダクション。図形の性質から、黄金数、フィボナッチ数列、サム・ロイドのパラドックス(図形を切り裂いたら隙間の分だけ面積が1増えるあれだ)、エッシャーのだまし絵など大いに楽しめる。
 ペンローズ図形は不思議。初めて知った。

 しかしこれが2,415円。ちょっと自分では買わないなあ。学校で買うことを想定しているのか。

#2011年にもキログラムの定義が書きかわる可能性があり、その有力候補がこの方法なのだという。
(藤井賢一博士らがシリコン28で精巧な球を作り、その体積を計測することで球内部のシリコン原子の数を正確に見積もろうとしている。)

141 大人のための自転車入門 丹羽隆志・中村博司

2010-09-08 06:26:51 | な行
 図書館より。日本経済新聞出版社。

 大人向けに教科書を作ろうと鼻息荒く書かれた本。シマノの元学生チャンピオンと旅人ツーリストの方向性がまるで違う。チャンピオンは運動生理学や自転車置き場の未来など、ちょっと初心者向きでない情報が多い。かといって旅人のページは情報が少ない。
 チャンピオンが毎日30㌔通勤を続けていることに驚く。

98 待ってくれ、洋子 長門裕之

2010-04-03 17:07:46 | な行
 図書館より。主婦と生活者。

 本屋に平積みされたときから気になっていた本。
 老老介護。なんとさびしい言葉であろうか。

 台詞が「入らなく」なっていく南田洋子。ついに部屋と居間とトイレの往復だけになる。そんな中でも、奔放だった自分を愛してくれた洋子への感謝を持って、愛情をささげ続ける長門裕之。
 また自分のことをここまでできるか、と驚くくらい正直に告白している。借金のため豪邸を売ったこと(介護には広すぎることもある)、暴露本でバッシングを受けたこと、自分のおならで洋子が笑ってくれること。それがうれしいこと。決して二枚目ではない長門裕之がここまでになったのは、この誠実さも一因ではないであろうか。

 出会いのシーンもいい。無名の新人の長門が、豹革のコートの大女優に声をかけられる夢物語。表紙の笑顔も泣ける。

78 「超」旅行法 野口悠紀雄

2010-02-06 07:06:32 | な行
 図書館より。新潮社。

 旅に出てから「これを持ってくればよかった」と思うことは多い。でも帰ってくればそれきりで、また同じことを繰り返すことがある。そんな旅の小さなノウハウが詰まった本。
*持ち物のリスト
*トイレはどこを使えばいいか
*ホテルの部屋を替えてもらうならベッドカバーを外す前に
*大学でお土産を買おう(この辺、学者だ)
*海外の博物館はおもしろい(収奪品があるから)
*通貨ごとに別の財布を用意する

 勿体をつける文体にいささか抵抗を感じるが、体験談も豊富で、楽しく読める本。

72 ひとを〈嫌う〉ということ 中島義道

2010-01-11 20:24:09 | な行
 図書館より。角川書店。

 人を嫌う自分に気付いて嫌になった人へ。「それは誰でもあることなんだよ、人を嫌ってもいいじゃないか」というのが筆者の主張。
 さてそんな心理のことを、哲学者がどうやって論じるか興味がありました。自分と家族の齟齬を告白しながら、漱石、デュマ、三島、そんな先人たちの嫌いを自在に引用する。

 ドッグイアー。嫌いとは、この八つの理由に基づくそうです。そして先のものは後のものへと進みやすい。
#相手が自分の期待にこたえてくれないこと。
#相手が現在あるいは将来自分に危害(損失)を加えるおそれがあること。
#相手に対する嫉妬。
#相手に対する軽蔑。
#相手が自分を「軽蔑している」という感じがすること。
#相手が自分を「嫌っている」という感じがすること。
#相手に対する絶対的無関心。
#相手に対する生理的・観念的な拒絶反応。

58 世界の歴史11新大陸と太平洋 中屋健一

2008-12-28 11:28:43 | な行
 中公文庫。

 中表紙に私の字で、「’91・7・1」とある。大学生のとき、アメリカ文学の授業で買ったものだ。当時の私はアメリカの歴史なんて知らなかった。せいぜい、ワシントンと南北戦争くらいなものだ。あとはボストン茶会事件。名前がユニークなので覚えている。

 わずか数ページでジョン・スミスとポカホンタスが登場する。フランクリン、ジェファーソン、ビリーザキッド、ストウ夫人、リンカーン、ジェロニモなど、なんとなく聞いたことのある人物が語られる。どんどん読みすすめてしまう。
 アメリカ300年の歴史を、わかりやすい文章で、情熱的につづっている好著。私の陳腐なコメントより、豊富なドッグイアーをどうぞ。

 ドッグイアー。

#ハミルトンは(略)新首都を南部におくのとひきかえに(略)かくして、ワシントンと名づけられた新首都が、メリーランドとヴァジニアにまたがった地区にコロンビア特別行政区としてつくられ、一八〇〇年にここに首都がうつり、今日にいたっている。

#民主主義がうまく動くためには、それに参与する人々がすべて知識を持っていなくてはならない。

#ふつうの国では、西部といえばその国の西の方あるいは西半分をさすのだが、アメリカ合衆国ではそうではない。(略)独立当時の十三州以外の西方の土地全部をさすのである。

#もし、イライ=ホイットニイという男がいなかったら、南北戦争は起こらなかっただろうといわれる。
(ホイットニイが綿と種を分ける機械、綿繰機を発明し、せっかく世論が奴隷廃止の方向に動いていたのに、また奴隷を必要とするきっかけを作ったから)

#カウボーイたちが牛追いを始めるには、まず二千ないし五千の牛や仔牛をあつめ、これに焼き印をおし、所有者をはっきりさせてから出発する。

#(スワード国務長官のアラスカ購入に対し)多くの新聞は、「スワードの冷蔵庫」とか「北極熊の動物園」「スワードの愚行」というようなことばを使ってこれを皮肉った。(略)一九世紀の終わりには金鉱が発見され、しかも戦略的に重要な位置を示し、けっして「スワードの冷蔵庫」にとどまらなかったことを物語っている。

54 日本史に見る女の愛と生き方 永井路子

2008-08-15 18:09:27 | な行
 新潮文庫。
 近年の静かな日本史ブームにありそうな本だが、実は昭和58年発行である。
 まずは小野小町、お市の方、と、とっつきやすい美女の話から始め、賢女、愚妻、強女、幻女、傑女、艶女、妖女と話を進めていく。
 そもそも日本史というものは、小学校高学年から学んでいくものだが、女絡みのところはあまり触れられない。というか、どうしても情交がからむので、変な方向に興味のある高校生が「道鏡ってさあ」とにやにやして語ったりするのだ。えへん。
 著者のスタンスははっきりしている。貴賤にかかわらず、努力し、自分の道を定めた女をたたえる。意志がなく、成り行き任せの女には容赦がない。前者はお市であり、滝沢馬琴の息子の嫁おみちであり、後者は建礼門院徳子であり、秀忠の娘、千姫である。
 また紫式部と清少納言への人物評もおもしろい。

48 詭弁論理学 野崎昭弘

2008-02-25 21:45:51 | な行
 中公新書。

 前作、『詭弁論理学』が楽しかったので買ってみた。前作は、いきなり余談だが、遊びに来た友達が「譲ってくれ」と言ったので譲ってやった。

 しかし今回は半分理解できたかどうかいうところだ。「アキレスと亀」「ガリレオのパラドックス」「自己言及」までならなんとか追いつけるが、カントールまで出されるともう駄目だ。

#十五世紀のドイツの問屋では、荷箱の中の荷物の重さが、規定より多ければ+という印をつけ、規定よりも少なければ-という印をつけたそうです。

#もしパリをびんの中につめることができるならば、1たす1は5である。(略)
 これは、「前提がまちがっているときは、どんな結論をつけても、ウソをついていることにはならない(論理的には正しい)」という数学者の習慣によれば……(略)

39 消えた魔球 夏目房之助

2007-11-09 19:42:20 | な行
 新潮文庫。著者は文豪の孫である。もともとは『ナンバー』に連載されたものらしい。

 夏目さんがスポーツ漫画を模写し、解説を加える、というもの。その模写も、ほとんどは選ばれた名シーンなので、それだけで楽しめる。

 だが本書で唯一模写でないページがある。『あしたのジョー』だ。「この目は描けない!」という書き込みがある。力石戦後の、ちばてつや本人さえ描けないその表情。

 ほかにも、『ドカベン』『タッチ』『すすめ!パイレーツ』『タイガーマスク』『1・2の三四郎』『アストロ球団』『エースをねらえ!』など、著者独特の「模写による漫画評論」が読める。