ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

191 ピンチに役立つ英語表現辞典 松浦庸夫

2011-02-05 15:40:48 | ま行
 図書館より。東京堂出版。

 タイトルどおり危機に際してのフレーズが並んでいる。
#HIV要請だと診断された。
#余命いくばくもないんだ。
#ご主人は今すぐ手術が必要です。
#バットで頭を殴られた。
#妻が人質になっている。
#彼女の服に引火した。
 かなり緊急である。

 難しい説明は避けた結果「という意味です」の連続なので、通読するにはつらいかもしれない。その単調さを薄めるコラムは楽しい。会社や学校で使うには便利かも。

#Akita to Okinawa non-stop fright
*I'm sorry.と言うと責任を追う可能性があるので、Don't get me wrong. / I didn't mean it.と言うとよい。
#Don't trouble trouble until trouble troubles you.

190 シリコンバレーから将棋を観る 梅田望夫

2011-02-05 07:12:28 | あ行
 図書館より。中央公論新社。副題、羽生善治と現代。

 羽生善治がいかに革新的であり、研究と勝負を両立させていったかがわかる本。
 著者はシリコンバレー在住のIT社長。あの「はてな」の偉い人でもある。

*趣味は将棋観戦
*これまでの将棋界は「好きな人」イコール「将棋が強い人」であった。だが「指さない将棋好き」がいてもいいじゃないか。
*量が質に転換する瞬間がある(羽生)
*連載『変わりゆく現代将棋』は「一章 矢倉」で終わった
#「超一流」=「才能」×「対象への深い愛情への没頭」×「際立った個性」
*羽生はタイトル戦の中継を見たことがなかった(自分が出ているから)
*佐藤康光に「5級向け」「初段向け」「五段向け」に解説を頼んだら、いい解説になって自分でも「できたできた!」と喜んでいる。
*「知のオープン化」 羽生は真理を究めるため手の内をさらすが、それでも勝つ。
*新聞には字数制限があるが、インターネットにはない。

189 ギョギョ図鑑 鷲尾圭司

2011-02-05 07:05:57 | やらわ
 図書館より。朝日新聞。

 いわゆる図鑑というわけではない。筆者は兵庫県明石の漁協に長く勤めていた。その瀬戸内の魚を中心に、魚のおいしさや漁業のあり方について真摯につづったエッセイである。イラストも水産に従事していた方ということでモノクロだが精緻である。色をつけないところなど、理科の観察のようだ。
 魚へのやさしい目線が心地よい一冊。

188 天文学の誕生 三村太郎

2011-02-05 06:54:22 | ま行
 図書館より。岩波科学ライブラリー。副題、イスラーム文化の役割。

 これは私の経験則だが、「イスラム」が「イスラーム」と表記されたら気をつけろ、と思っていいと思う。それはイスラーム世界にどっぷりつかっている証拠。イスラムマニア。
 つまり私はこれを読んでよくわからなかったのです。こんな調子。

#このアダミーの記述に従うならば、『シンドヒンド』はマームーンのころまで読みつがれていたことになる。その頃でも『シンドヒンド』の要約が必要とされ、フワーリズミーのズィージュが生まれたのだった。フワーリズミーは、インド計算法の著者として紹介したフワーリズミーと同一人物で、彼のズィージュが『シンドヒンド』の延長線上にあったことは、そのタイトルが『シンドヒンド・ズィージュ』であることからも明らかである。

 専門外が手を出す本ではありませんでした。

187 やっぱり楽しいオーディオ生活 麻倉怜士

2011-01-23 14:42:01 | あ行
 図書館より。アスキー新書。

 子供のころLPやカセットテープを聴いて、そしておじさんになってオーディオに再入門した人のための本。
 初心者にもわかりやすく親しみやすい文体で話は無理なく進む。
 確かにもう一度音楽を聴きたくなる。

#CDの規格はサンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット数16ビット。
*オーディオ評論は表現を競い合う
*ガラスCDの音はまったく違う(高音質) ただし値段は9万8700円
#CDは洗ってから聴け 特に新品はほこりがついている
#(CDを乗せて)トレイを一度開閉してから聴け
*視聴するときは曲の聴く順番を変えない
*デジタルケーブルで音がいいのは同軸(SPDIF)、光、iLInk、HDMIの順。
#接点を磨く
#スピーカーユニットのネジを締め直す
#(古典音楽で)エージングする
#iPodの取り込みは非圧縮の「WAV48kHz」が一番いい。さもなくば「appleロスレス」または「WAV44.1kHz」。曲数が多くても、音が悪ければ聴きたくなくなる。
*PCのサウンドカードはオンキヨーのがよかった。

186 最新図鑑熱帯魚アトラス 山崎浩二・阿部正之

2011-01-23 14:30:47 | やらわ
 図書館より。平凡社。

 まさに図鑑。1000種以上の魚を網羅している。その一つ一つに写真がついている。必要であればカラーバリエーションや稚魚・成魚の写真も載せるなど、写真に徹底したこだわりを見せる。その写真がきれい。著者二人ともカメラマンであり、水産学科や水産学部を出ているその筋の人である。

#掲載した写真の多くは、著者自らがモデルを厳選し、美しく成熟するまで丹精込めて育てたうえで、時間をかけて最高の姿を撮影したものである。

 ここまで言い切るだけの美しさがある。

185 書斎の作りかた 林望

2011-01-23 14:14:42 | は行
 図書館より。カッパブックス。

 リンボウ先生の本はテーマが好みなので手にとってしまうが、おもしろいと思えない。文章の薄さが気になる。口述をレコーダーで記録したかのような文体だ。
 「テレビゲームは書斎ですることではない」「地下室に書庫」などと言われると著者と私の距離が瞬間で遠くなってしまう。

 それなりにドッグイヤーはある。

*壁にシナベニヤを貼ると全体がクリップボードになる。
*照明は後ろから当てる。
*日本語は横書きにするべきだ。手が汚れることと、外国語文を引用することから。
*名作はまた買えるから捨てる。業界紙やマイナー雑誌はとっておく。

184 星座・天文 星座天文萌研究会

2011-01-23 13:56:57 | さ行
 図書館より。PHP研究所。

 萌えブームかける国際天文年(2009年)で安直にできたのがこの本。
 星座や惑星、よく知られた天体がすべて擬人化されている。コップ座も杯を持ったメイド、レチクル座も望遠鏡を抱えた女性の姿になっている。40人ほどの絵師が採用されているようで、趣味が合えば見ていて楽しい。

 だが。中身が圧倒的に雑なのだ。知らない人がネット検索でつなぎ合わせた文章。「マイペディア」から転載させていただきました、なんて部分もある。
 ミスもある。みずがめ座では「1月22日~」の人がその星座で、やぎ座は「~1月20日」とある。間の1月21日の人はどうなるのだ。
 メシエ天体では「M41とM91、M102は(略)未特定」とあるが次のページで「観察しやすいメシエ天体」としてM41が挙げられている。正しくはM40が欠番である。

 一番許せないのは、オールカラーでないことだ。
 カラーなのは表紙と口絵だけ。価格が1,900円ということで、2,000円台にはどうしてもしたくなかったのであろう。
 イラストを売りにするわりに黒赤二色印刷。ずいぶんおかしな話である。

183 星空を歩く 渡部潤一

2011-01-16 19:56:45 | やらわ
 図書館より。講談社現代新書。

 星空散歩という天文用語がある。素敵な言葉だ。特定の星を観測するのでなく、星座や惑星などを見つける気軽な星へのアプローチである。
 本書は季節ごとに見られる星たちの紹介が主であるが、話の引き出しが多くて楽しい。国立天文台の情報・普及のセクションを長く務めているからだ。バンプオブチキンの歌以来「天体観測」という言葉が子供にもわかるようになったこと。星を見るために何度も高速道路を運転したこと。そして一大エポックは木製へのシューメーカー・レビー彗星の衝突である。この興奮が臨場感を持って語られる。
 この本を見たらきっと星が見たくなる。

*今井美樹の「プライド」で「南の一つ星」というフレーズが出てくるが、それはみなみのうお座のフォーマルハウトのことである。

182 フレディから学んだこと 日野原重明

2011-01-08 07:55:04 | は行
 図書館より。童話屋。

 著者は日本でもっとも有名なお医者さんの一人。
 前書きに「童話屋に電話をして」なんてあるから童話作家を揶揄してそう言っているのかと思った。出版者の名前なのね。

 前半は著者の音楽劇の台本。フレディだダニエルだと片仮名の名前ばかりで、女の子はバレエを習い、葬式にはフォーレを歌う。西洋的だ。と思わせておいてクライマックスでいきなり「良寛が『うらをみせ……』と詠っている」とお坊さんが出てくるから仰天する。

 後半は著者の哲学的随想集。生死について突き詰めているのがよくわかる。「日本人の死への対応」で「無関心型、楽天型、現業型、あきらめ型、ゆりかご型(運を天に任せる)、覚悟型、受容型、対決型、恐怖型、逃避型」の十に分類しているのが興味深い。

 最後の読書の感想で、「死が怖くなくなりました」と子供も書いているが、私は底まで悟れない。ずっと恐れていくのかもしれない。