新書。角川oneテーマ21。
「やはりこの人は尋常ではない!」と感嘆する部分と、「私もそう思っていた!」と意を強くする部分と、交互に襲ってくる。将棋がわからなくても読める名著。むしろ将棋を覚えたくなる。
ドッグイアー。
#(竜王戦で)先輩を立てて下座に座るべきか、タイトル保持者として上座に座るべきか毎局のように悩んだ。わざとぎりぎりに行って相手の人に先に座ってもらったこともあった。居心地の悪さを感じながら見事に一年で失冠、ほっとした。それからは自分はどんなに若かろうと未熟であろうとタイトルを持っている限りはその棋戦については代表であるのだから、それに沿った行動をしなくてはならない、その結果として反感を買っても仕方が無いことだと思っていた。
【付記:この後どうなるか、将棋ファンなら御存知のはず。羽生さんは言い訳をしなかったが、こういう伏線があったのだ】
#アメリカのカーネギー・メロン大学でロボットの研究をしている金出武雄先生から、面白いことを聞いた。学生を指導するときには、「キス・アプローチでやれ!」と言うそうだ。キス(KISS)というのは、"Keep it simple, stupid"の略である。
#仕事に行き詰まったときは整理整頓(羽生父)
#直感力の元になるのは感性である。
(略)中学校の幾何学で、図形の問題は、まず補助線が閃かないと得のが難しいが、将棋も、この補助線のような閃きを得ることができるかどうかが、強さの決め手になる。
#積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にする
#コートの中に入れば誰も私の邪魔をすることはできない(マイケル・ジョーダン)
#人間は、ミスをするものだ
#一人で考えるか、それとも何人かの人が集まって知恵を出し合うか、どちらがより有効かは、非情に面白いテーマだ。私は、基本的には一人で考えなくてはいけないと思っている。(略)一人で考えていき、あるところまで到達する――そのうえで共同して知恵を出し合うのでなければ意味がないと思っている。
#以前、私は、才能は一瞬のきらめきだと思っていた。しかし今は、十年とか二十年、三十年を同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている。
(略)逆に、一瞬の閃きとかきらめきがある人よりも、さほどシャープさは感じられないが同じスタンスで将棋に取り組んで確実にステップを挙げていく若い人の方が、結果として上に来ている印象がある。
#棋士になって一番うれしい日は、四段への昇段を決めた日である。四段になって初めて一人前のプロ棋士と認められる。(略)
昇段を決めた直後、二上先生から、お祝いの夕食の招待を受け、和服一式をプレゼントしていただいた。(略)
「早く、この和服を着るようになりなさい」
そういう願いと励ましが込められた師匠からの贈物であった。今でもそのときの熱い気持ちを思い出す。ぞして、私を育て、陰で支え続けてくれた師匠をはじめ、家族や周りの人たちのことを思うと、勝負という修羅場の中で「がんばろう」という気持ちが沸いてくるのである。