ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

44 校則の話 坂本秀夫

2007-12-29 14:40:44 | さ行
 副題、生徒のための権利読本。三一書房。

 初刷りが1990年なので、今となっては価値がない。
 ただ、当時、校則に反対した生徒やPTAのよりどころになっていたかもしれない、と空想する。生徒がこういう本を手に取るかどうかは疑問だが。

 ドッグイアー。

#例えば教師が生徒の髪型や服装を細かく決定したならば、(略)物差しを持って校門に立ち、女生徒のスカートの長さを測る教師の姿に生徒が尊敬の念を抱くとは考えられないではないか。
 しかし生徒に決定権を与えるならば(略)例えば頭髪・服装の社会史、それらが生徒の人権・権利にどうか関わるか、それを調整するための校則の原理は何か、……等について生徒は自ら調べ、教師の指導を求めてくるであろう。

 と、このように、現実の校則については綿密な調査を行なっているが、自分の理想については「きっと……だろう」「はずである」「かも知れない」と根拠のないことばかり並べ立てているのだ。

 2007年1月、まだお元気のようである。今度は教育行政を撃つ。

43 どぜうの丸かじり 東海林さだお

2007-12-27 19:53:38 | さ行
 文春文庫。

 表題作(ではないが)、『どじょう鍋をどうじょ』がおもしろい。理屈よりも気分的にああではなくてこうではならぬ、という感覚を書かせたら天下一品である。
 『おじさん”スタバデビューす”』も共感できる。

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 ドッグイアー。

#「皿の上の食べ物はすべて寝ている」という格言はあまり知られていない。(略)春巻きも、エビの天ぷらも、アジの開きも寝かしつけられている。ライスやスパゲティは集団で寝かしつけられている。サンマの塩焼きや春巻きを、皿の上に垂直に盛りつけようという料理人はいない。

#シュガーポットに砂糖が入っていて、女性といっしょに喫茶店に入ると、それほど親しくなくても「おいくつ?」と訊いてくれ、「三つ」などと答え、熱いコーヒーカップにポチャポチャと三杯入れてもらっていた時代、ナツカシーナー。

#僕が、この「丸かじり」のシリーズを読んでいて共感できる数多くのことのひとつは、まず、食べ物の栄養分についてほとんど書かれていないことです。(注・田崎真也の後書き)

 このソムリエの一言はどうだ。目から鱗が落ちた。最高だ。繰り返す、最高だ。この著者のスタンスに、そしてそれに気がついたソムリエに、つまりプロとプロの出会いにおける発見に、皆さん驚愕して欲しい。

42 自動起床装置 辺見庸

2007-12-22 19:00:22 | は行
 文春文庫。

 『もの食う人びと』で人口を膾炙した、もと共同通信のルポライターの芥川賞受賞作。

 著者独特の、硬質なような、ぬめぬめと気持ち悪いような、その二つの間隔が同居する文体は冴えている。

 昔の国鉄は枕の下の丸太ん棒を叩いたそうだが、今は布団の下の空気袋をふくらましているそうですね。