ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

130 アディダスVSプーマ バーバラ・スミット

2010-07-27 21:08:07 | さ行
 図書館より。ランダムハウス講談社。

 昔ドイツにダスラーという兄弟がいた。兄がルディ(ルドルフ)、弟がアディ(アドルフ)と言った。兄弟は靴作りの職人であったが、仲が悪く川の両側に分かれて住むようになった。
 ルディは「ルーダ」というブランドを使っていたが、冴えないので「プーマ」にした。
 アディはアディ・ダスラーから「アディダス」というブランドを使い出した。

 アディダスの後継者、ホルスト・ダスラーはロビー活動に長け、アディダスを営業力で世界一のスポーツブランドにした。狙った選手のバスの隣の座席に偶然を装って座るなんて朝飯前。

 私はアディダス好きであったが、嫌気がさしてしまった。この厚い本に、アディダスの品質のよさを示す部分はたった一か所だけ。アメリカにおけるバッシュの品質の一点。あとは「レンガのように固い靴」なんて悪評ばかり。アディダスは品質でなくて営業力ありきなのだ。もちろんこの本に載っていないだけで、製造現場は努力をしていると思う。
 でも「これからはアシックスを買おう」と改めて決心した私だ。

129 袖すりあうも他生の縁 清水義範

2010-07-27 21:00:43 | さ行
 図書館より。

 巻頭の「仄聞」はつまらないので投げ出したくなるが、我慢して読むと、傑作が現れる。
「二十五年ぶり」「夫の親友」「同期の桜」なんてすばらしい。本音と建て前の違いを、ずばり読み取っている。

 これはお勧め。

128 芦原すなおのビートルズ巡礼 芦原すなお

2010-07-27 20:53:13 | あ行
 図書館より。文藝春秋。

 あの『青春デンデケデケデケ』の人。書名で惹かれていつか読んでみたいと思っていたが、未読。

 うわあおもしろい。出発するまではぐだぐだだが、出発してもぐだぐだなのがいい。ロンドンではアビーロードを渡り、警察官に怒られる。リバプールでは「マジカルミステリーツアー」バスに乗る。実は私も同じ道を通ったのだ。ガイドがいる分、ずっと楽しめている。いいなあ。

 ドイツ・ハンブルクのページはつまらない。いや読むとおもしろいのだが、著者がつまらなく感じているのが伝わってきて、おもしろい。 

127 イメージ脳 乾敏郎

2010-07-27 20:48:14 | あ行
 図書館より。岩波科学ライブラリー。

 つかみにアインシュタインを持ってきて、素人さんをなんとか引っ張ろうとするが、始まってしまえば心理学・脳科学の実験手法が並ぶばかり。実験の結果を踏まえて日常の疑問を語る、というスタンスにすればおもしろくなったであろうに。例えばバーチャル・リアリティーなんて読者は期待したはずだ。

*他人がくすぐるとくすぐったいが、自分でくすぐるとくすぐったくない。それは刺激が予測から外れないからだ。

 素人向けに書こうとして、結局軽い専門書の域を出なかった書。

126 名人 小林信彦

2010-07-15 06:51:01 | か行
 図書館より。朝日新聞社。副題、「志ん生、そして志ん朝」。

 副題通り、二人の名人についてあちらこちらに書いた原稿をまとめたもの。だから一度読んだ話が何度も出てきて、ページを間違えたかと思う。
 回顧談、それ以外の何者でもない。ひとを選ぶ本。

#文楽からの話があったとき、朝太が「勘弁してよ、父ちゃん」と辞退したことを、志ん朝の弟子の志ん五が証言している。
(朝太は志ん朝の前の名前。父ちゃんは志ん生のこと。志ん五は見たことがあるが、志ん朝の弟子だなんて!)

125 アストロバイオロジー 小林憲正

2010-07-10 16:25:11 | か行
 図書館より。岩波科学ライブラリー。副題、宇宙が語る〈生命の起源〉。

 話はパスツールから始まる(パストゥールと表記)。生命が地球に初めて発生したときのメカニズム、彗星や隕石に見られる生命の跡、そして木星や土星の衛星(エウロパやタイタン)に生命が存在する可能性を考察する。
 南極の地下4,000㍍に湖があり、独自の進化を遂げた生物があるかもしれない、なんておもしろい。

 こんな学問もあるのか、と引き込んでくれる好著。図もわかりやすい。

124 バードケージ 清水義範

2010-07-10 15:26:09 | さ行
 図書館より。NHK出版。

 主人公の予備校生は、「一億円を三ヶ月で使いきる」というゲームを引き受けることになる。寄付やコレクション、クルマ(免許がない)など自分の楽しみにならないといけない、というルール……。

 こういう突飛な設定は、「どう落とし前をつけるのであろう」と読者を引っ張る。オースターならギャンブルで使い果たすか盗まれておしまいだが。

 楽しみを奪わないように結末は書かないのだが、この本は何を言いたかったのか、よくわからない。
 お金の幻影か。それとも教育の恩恵か。
 N国のレポートとして見るとおもしろい。

123 靴の事典 岸本孝

2010-07-10 15:11:05 | か行
 図書館より。副題、下駄をはいた? 文園社。

 靴の歴史や世界の民族靴など、雑学本のように気楽に読める。特に歴史については詳しい。履き物の歴史には、開放的なサンダルと閉塞的な革袋のような靴の二つがあることがわかる。
 書き手が気楽になりすぎたが、自分から笑っているような文章が鼻に付く。元新聞記者ということで、文章は上手で取材力もあるのだが。

#野口雨情の童謡『赤い靴』の詩には、モデルがありました。その女の子の名前は『きみちゃん』。きみちゃんは赤ん坊のとき、いろいろな事情でアメリカ人宣教師の養女に出されます。母、かよさんはきみちゃんがアメリカに行って幸せに暮らしていると信じて有情にこのことを話し、この詩が生まれました。しかし、きみちゃんは病気のためにアメリカには行きませんでした。
*岩崎きみちゃんは父無し児のため預けられ、結核により9歳で亡くなった。

122 アクセントの法則 窪園晴夫

2010-07-05 05:51:56 | か行
 図書館より。岩波科学ライブラリー。

 大学時代友達に「授業でこんなことを習ったよ」と教えてもらい印象に残った話がある。「未知の外国語の単語があると、後ろから三つ目を強く読む」
「ベススメルトヌイフ」 ヌを強く読んでしまう。

 これは自分で考えたもの。
「後ろから二つ目の音節を強く読むと、英語っぽい」
「ナガーノ」「アオモーリ」「アキータ」 (長音のところを強く読む)

 そんな不思議を体系的に解説した本。
#語末から数えて三つ目のモーラを含む音節にアクセントが置かれる。

 手軽に読めるこのシリーズにしては、ちょっととっつきづらいか。

121 赤めだか 立川談春

2010-07-02 05:52:57 | た行
 図書館より。扶桑社。

 談春師の、入門から前座、二つ目時代を書いた半生記。傑作。
 お笑いには笑いに関係ない部分をそぐという作業が必要だが、これが徹底している。まず書き出しが凄い。
#本当は競艇選手になりたかった。
 まずこれでつかむ。唸らされる。

 会話の再現力が凄い。談志家本との会話が一つ一つおもしろい。
 また落語会は狭いのか、私が最近読んだ、談四楼師、花緑師などが登場してからむのも楽しい。
 赤めだかとは家本の飼っている金魚のこと。大きくならないからそう陰で呼ばれている。育てても育てても大きくならない金魚。それは談志と談春たち前座のことだ。この本のテーマは師弟関係の深遠さだ。

#よく芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えたとおり覚えればいい。盗めるようになれば一人前だ。時間がかかるんだ。教える方に論理がないからそういういいかげんなことを云うんだ。いいか、落語を語るのに必要なのはリズムとメロディだ。それが基本だ。