ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

179 天体望遠鏡の使いかたがわかる本 藤井旭

2010-12-26 10:58:20 | は行
 図書館より。誠文堂新光社。

 ほぼオールカラー。まずそれがいい。白黒なのは「自作しよう」などという初心者向けでないページなのでまず関係ない。
 望遠鏡の選び方はあまり載っていないが、買ってからどのように見ればよいかがよくわかる本。ピント合わせや光軸合わせなど、わかりやすい説明がある。反射式望遠鏡の主鏡の真ん中にマーカーで印をつけるとよい、なんて玄人らしい。

 圧巻は後半の「いろいろな天体とその見かた」。写真が圧倒的に美しい。これを見るだけで楽しい。木製の縞、土星の輪と衛星、火星の極冠、天王星の青緑の色……。

 惜しむらくは誤字の多さ。誤変換らしきものもあり、チェックしていないのではないかと思ってしまう。

#天体望遠鏡で細かいところが見られる能力は、すべて「口径」で決まってしまいます。その能力以上にむやみに倍率を高くしても、像はボケ気味となり、しかも暗くなるので少しもよいことはありません。

178 ストレッチバイブル 長畑芳仁

2010-12-26 10:50:21 | な行
 図書館より。ベースボールマガジン社。ムック。アスリート編。

 よくできた本である。これまでのスポーツ本は「ちょっと見た目のいい知り合い」をモデルに使うことが多かったが、水野裕子さんというきれいな方である。存じ上げなかったが、スポーツや鉄道に詳しいタレントであるらしい。ほかにも大型二輪免許を持っていたり、すしや釣り、ゲーム『ゼルダの伝説』にも詳しいらしい。

 体の動きは文章よりも写真がいい。些細なポイントも、これはマル、これはバツと写真を載せている。わかりやすい。
 イラストも適当なものでなく、水野さんの似顔絵はちゃんと写真で実際に着用しているものを描いている。芸が細かい。

177 親馬鹿力のおかげです 林家木久扇・林家木久蔵

2010-12-25 07:53:06 | は行
 図書館より。岩崎書店。

 ここまでお坊ちゃんだと、すがすがしい。例えば小さん師匠の孫、柳家花禄は祖父と比べられることを嫌がっているそうな。二代目は心から親を尊敬している。人を信頼している。疑うことを知らない純粋培養。大丈夫かと心配になるほどだ。

 初代、現木久翁の若いころが読める。親は雑貨商で結構資産があったが、戦争の爆撃ですべてを失った。生活保護を受けるために離婚したら、本当に別れてしまった。妹がいたが父に付いていった。新聞配達、廃品回収、映画館のバイトをして家計を支えた。

#だからぼくは、自分が親になったとき、「なにがあっても、この子達の父親でいよう」と決めました。

#ぼくら落語家は父親になると、煎った豆がポンとはじけるように「一皮むける」ことが多いのです。
 せっかく授かった子どもをちゃんと食べさせていかなきゃと思えば、これまでのやり方じゃ駄目だと気付くもの。稽古にだって熱が入るし、周囲とのお付き合いも丁寧になります。(略)つまり、欲が出るんですね。お金のことだけではなく、生きるということ自体に前向きな意欲が湧いてくる。

#(小朝師匠が二代目に)過去の名人たちの落語をぜんぜん聞いたことがないというから、テープを貸して勉強させようとしたら、
「聞けないんです」
 なぜかといえば、すでに亡くなった人の声だからこわいんだそうですよ。
 

176 フーミンのお母さんを楽しむ本 柴門ふみ

2010-12-25 07:34:09 | さ行
 図書館より。PHP文庫。

 柴門ふみに人はどんな印象を持っているのであろうか。大ヒット作家。お茶大出の才媛。文章を読むと理詰めの理系に感じられる。私が読んだ最新作(?)『小早川伸樹の恋』では面倒くさげな描線が目立った。ネガティブですみません。

 この本を読んで目からうろこが落ちた。子供に対して100%の愛情を注いでいる。かわいくて、楽しくて、仕方がない。幼児の娘と赤ちゃんの息子に、心から出会えてよかったと思っているのだ。

 子供と接しているのは楽しい。私の場合、それをウェブに書こうと思っても忘れてしまうことが多い。あまりにも些細なことだからだ。それを著者は見逃さない。
 こちらは子供に早く食事をして欲しい。子供は「おかあさん、わたしのあしはゆかについているでしょうか、ついていないでしょうか」なんて他愛のない質問をして進まない。なんて屈託のない。

 スパイスとして夫ヒロカネさんが効いている。漫画ではあえて悪相に描かれている。メディアでは『島耕作』の作者として日本経済について論じているのに、ここではボックスティッシュや缶詰が安かった、と喜んでいる。

175 イギリス式年収200万円でゆたかに暮らす 井形恵子

2010-12-25 07:18:15 | あ行
 図書館より。講談社。

 セミリタイヤの勧め。40台、50台の働き盛りに高い地位を投げ出し、地方の小さな仕事に就く。
 結局は持ち家信仰の日本と、レンガ造りで何百年も持つため家を建てなくていいイギリスとの違いに収束していくと思われる。

 それでも見習うべきところはある。
*クルーズに行くときにはドレスよりもレインコートに金をかける。ハイキングのために。
*アクアスキュータムのスキュータムとは盾の意。
*日本の惣菜コーナーは素晴らしく、イギリス人は興奮するほどだ
*ペストでたくさんのロンドン市民が命を落としたころ、生姜を食べていた人は難を逃れた
*イギリスの家は石造りのため、後から配管を壁の中に通すことができない。B&Bの天井などに水道管が見えるのはそのため。
*なぜリタイアできるのか。(1)企業年金が手厚いため。(2)住宅市場が右肩上がりのため。都心の家を売ると財産ができる。そして自分は地方に住む。
*ホテルに泊まらず知り合いの家に泊まる。

174 図説天体望遠鏡入門 田中千秋

2010-12-12 08:13:18 | た行
 図書館より。立風書房。なんてロマンティックな社名。

 科学書なのに縦書きである。これから始める初心者のためにレンズの理論からやさしく解説した本、なのだが、それよりも破壊力があるものがある。

 それはモデルのお姉さんである。可憐だ。化粧気のない80年代の女性だ。
 高校生の同級生でいたような、頭頂で結んでそのまま広がった髪形。無造作な白いブラウス。ジーンズは股上が深く、へその辺りにベルトがある。10センチも足首が見える裾丈。もちろんスニーカーソックスではない。
 「観望会を開こう」なんて章があるが、このお姉さんのために観望会に人が集まっているのではないかと思えるほどだ。
 あ、著者は男性です。著者の住所が載っているところがまた昭和。

172 熱帯魚・海水魚の衣・食・住 松坂實

2010-12-12 07:58:53 | ま行
 図書館より。どうぶつ出版。なんて専門的な社名だ。

 サブタイトルは「60センチ水槽で飼う」ということで、一冊を通して特化している。ポンプのところで投げ込み式は紹介されていない。水作りのところで、休眠ろ過バクテリアを積極的に勧めているところが特徴。
 さまざまな熱帯魚・海水魚を紹介しているが、どの魚にも長所を紹介しているところに愛情が感じられる。
 水玉螢之丞ふうのイラストもかわいい。

171 グランドツアー 岡田温司

2010-12-12 07:43:09 | あ行
 図書館より。岩波新書。

 18世紀ヨーロッパの上流階級の子弟は、大人になる前の修行としてイタリアを目指した。それをグランドツアーと呼ぶ。本どうこう以前に、グランドツアーって素晴らしい習慣ですね。
 それをまとめた本というのはこれまでなかったと思う。特に前半、ゲーテがいつもの調子で装飾過剰に自分の精神的盛り上がりを語るところは興味深い。
 著者の専門は美術史なので後半の美術の章は専門的過ぎて私は読み飛ばした。

*ゲーテは北イタリアの城址をスケッチしていたら、役人に紙を取り上げられた。