その翌日。 私は写真を用意して、なじみの獣医師がいる動物病院を訪れ、相談した。 |
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さしあたり、化膿止めが一週間分、処方された(「ゼナキル」、25mg/day)。 これを飲ませ、すんなり治れば、それでよし。しかし、もしも患部が膨らんでくるようなら、内部が化膿しているということなので、膿を出す処置が必要になる ―― というのが獣医師の見解であった。 |
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薬を持って、現地に行く。 おむさんの傷口は、乾いている。が、どうも昨日より炎症が酷くなっているようだ。 さっそく投薬した。かつては、おむさんに薬を飲ませるのに苦労したが、今は私もおむさんもすっかり慣れたので、錠剤の強制経口投与は五秒で終わる。 |
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食欲はある。 が、さすがに、つらそうだ。(もし人間が顔にこれだけの傷を負ったら、寝込んでしまうだろう。) |
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このまま良くなるといいのだが ―― 。 |
おむさんが、またケガをした。 前日の同時刻には無かった傷である。この24時間以内の出来事によるもの、ということになる。 |
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傷口の形状から見て、噛み傷である。ちょうど腫れてふくらんでいた部位を、がぶりとやられたようだ。 (※参照、「なんだか腫れてきた」) テリトリーを守るために、他の猫と闘ったのだろう。 |
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しかも、傷は一カ所ではない。 | |
A は五日前の傷である(参照、「顔にちょっとケガ」) B は今回の、最も大きい傷。腫れている。 C と D と E も今回の傷。恐らく、相手の爪で掻かれた傷である。まだ血が固まっていなかった。 食欲もあるし、足取りもしっかりしている。 今すぐ生死に関わる、というほどのケガではないので、 この日はとりあえず、手元にあったおかか先生用の眼軟膏(抗菌剤)を塗布しておいた。 |
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おむさんの傷、4日後。
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それはいいが ―― 傷より下部、頬のあたりが、なんだか腫れているようだ。 | |
傷の他に、打撲もあるのか? それとも、傷の内部が膿んでいるのか ―― ? |
名探偵ホおむズ 事件簿018 |
ロンドンの暗黒街を陰で操る、悪の帝王 ―― | |
モリアーティ教授! | |
ヨーロッパ全土にその名を知られた、希代の大怪盗 ―― | |
アルセーヌ・ルパン! | |
これらの宿敵との死闘により、名探偵ホおむズは、傷ついていた。 | |
文字通り、重傷を負っていたのである ―― 。
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そこへやってきた、この美しい女性は ―― アイリーン・アドラー。 | |
アイリーンは、ある事件で、ホおむズを出し抜いたことがある。 女嫌いのホおむズも、聡明なこの女性にだけは、一目置いていた。 それは、ホおむズにとって、恋だったのかもしれない ―― 。 |
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「ホおむズさん! あなたの傷を、癒して上げましょうか?」 「ふん。それには及ばん」 |
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「肉体的な傷など、問題ではないのだ」 | |
「わかっているわよ。あなたは、知性に生きる男だもの」 | |
「あなたの傷は、心の傷ね。モリアーティやルパンを逮捕できないのが、悔しくて堪らないんでしょ?」 | |
「む……」 ← 図星を指された |
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「そんなあなたの、心の傷を、私が癒してあげるわ」 | |
「……どうするというのだ?」 | |
「こうするのよ……」 | |
ちゅっ ← ソフトフォーカス |
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さて。こちらは、そばで二人を見ていた、ワトソンである。 ← おかか先生、一人二役 |
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「くそっ、ホおむズめ! 見せつけてくれちゃって!」 | |
「くう~っ!」 |