またしても猫と無関係

2008年12月25日 13時07分19秒 | [ 吟遊中 ]
中山道、木曾路は奈良井宿、
杉の森酒造の濁り酒。
原酒(未加水)なのでアルコール度数19度。
生酒(酵母が生きている)なので、
12℃以上では醗酵が進んでしまう。
発泡性。
開栓時は中身が吹き出ないよう注意。

一句。

猫おらず濁る霙の奈良井宿



ナイーブ忍者

2008年12月23日 16時13分00秒 | B地点 おかか

 

「むっ! あんなところに追忍が!」


※おかか先生、実はおしっこ中

「よし。女装して、からかってやるか」
「ちょっとそこの渋い忍者さん、あちきと遊ばない?」
「えッ! 俺みたいなおぢさんと遊んでくれるのかい?」
「ううッ、なんて優しい娘なんだ。おぢさん涙出ちゃったよ」
「ふっふっふ、騙されたな追忍め。俺はオムイだよ!」

「ええッ!?」
「そ、そんなぁーーーッ!」
ガクッ

今回の追忍は、ひどくナイーブだったらしい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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脱兎の如く

2008年12月22日 15時19分00秒 | B地点 おむ

リリース後、49時間。
前日とは打って変わって、身を切るような寒風に枯葉が舞い、冷たい雨滴が頬を打つ。
私の膝に乗ったおむは、毛布に包まれ、かっきり一時間、暖を取ることができた。
給餌のボランティアさんの自転車の音を聞き分けるや否や、おむは毛布を撥ね除け、脱兎のように食事の場所へと走り寄る。
私はまた旅に出なければならない。その間は、何もしてやれない。どうか健やかでいておくれ。

 

 

 

雨に濡れるよ
走っておいで
風が冷たいよ
こっちへおいで
僕の陰で 風を避けなよ
この橋の下で 待つといい
あわてろ あわてろ ごはんが来るよ
ごはんが来たよ さあお食べ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


その翌日

2008年12月21日 15時14分00秒 | B地点 おむ

 

15時04分。
おむ不在の一週間、おかか先生にトラブルがなくて何よりだ。
15時11分。
向こう岸にはサビ猫。おそらく男爵Aであろう。
15時14分。
おむが現れる。リリースされてから25時間後である。
15時16分。
さっそく「社長のイス」に乗る。
同じく15時16分。
広大なテリトリーに返り咲いた王者の風格。
15時21分。
水を飲む。これが、彼の好みの水飲みスタイルなのだろう。

拙宅で保護されていた間、水を水だけとして飲むことは、決してしなかった。療養食(ドライフード)を水に浮かべて与えれば、結局は容器を空にしてしまうのだが。
15時24分。
16時30分。
ボランティアさんによる給餌。

この日私は90分ほどおむを観察したが、排尿行動は見られなかった。その限りでは、「私の前で排泄しない、以前のおむさん」に戻ったわけだ。
おむが使った食器と、使わなかった食器。

「散歩のついでに猫に餌をやる」のを趣味としている人は、とても多い。この日は日曜だったので、特に目に付いた。ニボシなどを与えている人もいる。いわゆる「無責任な餌やり」ではあるが、それによって救われている猫が多いことも事実であろう。
私に言わせれば、「地域猫」という概念は、概念 (Begriff) ではなくて理念 (Idee) である。理念に過ぎない、とまでは言いたくないが……。
療養食のみの給餌を恒久的に継続することが不可能であれば、おむは近い将来また結石でやられるだろう。それが、おむの主治医の見解である。が、室内に閉じ込めたら、おむはストレスで参ってしまうだろう。これは私の実感である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


また一緒

2008年12月20日 15時35分00秒 | B地点 おむ

 

「先生、ただいま」
「おお! お帰り!」
「この一週間、大変だったろう?」

「いえ、けっこう楽しい日々でしたよ」
「すまん。私がもっとお前の体調に気をつけてやればよかった」

「えっ?」
「許してくれ。この通りだ!」

「そんな……。どうか手を上げて下さい、先生」
「病気は、誰のせいでもありませんよ」
「それに、もうだいぶ良くなったんですから」
「また先生とご一緒できるのが、僕には何よりも嬉しいんです」

「……ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


身に覚えがあるらしい

2008年12月20日 15時18分00秒 | B地点 おむ

 

社長おむ耕作である。
御多分に洩れず、この不況下で彼もまた業績不振に悩んでいた。そこで彼は、腹心の部下、部長おかか豊作に、起死回生のアイデアを求めた。
「このピンチ、どう切り抜けたらいいだろう?」

「は、私の開発した新製品をご覧下さい」
「あれです」

「……普通のキャリーに見えるが?」
「ポータブル型の自動収監機です」

「何!? 自動収監機!?」
「法を犯した悪辣な経営者を瞬時に判別し、自動的に収監する機能を搭載しています」
「まさか! いくらなんでもそんなハイテクが……」
ガシャーン

「あっ、本当だ!」

 

※「おむ耕作」のシリーズは、「スペシャルメニュー」よりまとめてご覧になれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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サムイ外伝

2008年12月20日 14時49分00秒 | B地点 おかか

 

追忍の奸計によって、抜け忍オムイはキャリーの中に囚われてしまったのだった。

「しまったーッ!」
「ふふふ、オムイよ、その中で朽ち果てるがよいわ」
ところが……

スタスタ
「むおッ!? 一体どうやって出た?」
「ふふん、金網のロックを壊しただけさ! ろっくでもないロックだったな!」
「……ろっくでもないロック?」
「さ、寒ーーーッ!」
ガクッ

余りにも寒いダジャレ攻撃によって、追忍は凍えてしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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エスキモー・キッス

2008年12月20日 14時36分00秒 | B地点 おむ

 

「どうだ、帰って来たお祝いに、アレをやらんか?」

「え、アレって、まさか……」
「そうだ。エスキモー・キッスだ」
「ええっ」
「恥ずかしいなあ」

「何が恥ずかしい? 我々猫にとっては一般的な、親愛の情の表現ではないか。それに、読者もきっと期待しているぞ」
「じゃあ、せめて、イスの陰でお願いします」

「やれやれ」
「いいですか、いきますよ」

「早くせんか」
「どうも照れるなあ」

「さっさとしろっ!」
「ん~」

「ん~」

んちゅっ


※ 「感動の再会」では、同一の原板から別のトリミングでご覧になれます

「……」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


帰郷

2008年12月20日 13時59分00秒 | B地点 おむ

 

わっ どこ行くの?
ええっ!? おうちに帰るの!?
わくわく 早く着かないかなあ
ちょ、ちょっと! 写真なんか撮ってないで、早く出してよ(笑)
わーい!

この色、この音、この風、この香り……

帰ってきたんだな
……本当に、帰ってきたんだなあ
みんな、どうもありがとう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


宿痾

2008年12月20日 07時19分00秒 | B地点 おむ

 

ジキルとハイド。君子豹変。深更から夜明けまで、おむは別人になる。内なる野生が蘇るのか。

室外が気になる。屋外に出たがる。興奮し、緊張する。網戸越しに戸外を見せてやると、その時だけ、おむは動きを止め、耳を澄まし、食い入るように周囲に配視し続ける。

結局、今夜も一晩、鳴き明かす。叫び声も、「アーオー! アーオー!」明け方には声が嗄れてくるほど。やはり障子も破った。
この元気を、私は回復の証左と思いたい。

理想的な飼い主は見付からないので、明日リリースの予定だが、メンタルケアも極めて重要である。日中はおとなしくなるのだが、それはあくまでも、「今まで」のこと。だいぶストレスも溜っているようだし、もし今日、日中も落ち着かないようであれば、予定を早めてのリリースも考えよう。無論、医師の許可は下りている。リリースするなら、一週間の投薬後、今日一日は様子を見て静養させ、明日もしくは明日以降にしたかったが。

数年前、捨てられた時点で、命数が尽きていたかもしれないところ、僥倖を得たお前は、今日まで長く「幸福」に生きた。

今回も、もし、たまたま頻尿が観察されなかったら? もし、ボランティアさんが病院に連れて行ってくれなかったら? もし、その直後に保護されなかったら? ―― 恐らく、「とりかえしのつかない」事態に陥っていただろう。

宿痾を抱えたお前だ。これからは、一日でも、一時間でも、一分でも、長く生きれば儲け物。大丈夫、お前は強い。お前には運がある。お前なら、きっと……。

おむは朝食をもりもり食べ、たっぷり水も摂り、毛づくろいを終えた。
今、これを書いている私の後ろで、すこやかな寝息を立てている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2008年12月19日 18時04分00秒 | B地点 おむ

 

「病気療養も退屈だなあ」
「でも、まあ、毎日けっこう楽しいこともあるよ」
「だけど、夜になると、おかか先生のことが、とっても気になるんだ」

「またテレパシーで呼びかけてみようかな? ……いや、ここはひとつ、肉声で!」

※作者注: いや、あの、だからね、襖は、元々こういう模様なんですってば。ホントですってば。

「おーい! おかか先生ーっ!」
「……なーんてね。ふふっ。遠く離れてるんだもの、聞こえるわけないよね」
その頃おかか先生は……

「いやいや、ちゃんと聞こえてるよ」
「お前の声は、いつでもどこでも、私にはちゃんと聞こえるのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


投薬終了

2008年12月19日 16時57分00秒 | B地点 おむ

 

今回処方された薬の、最後のひとつ。
苦いお薬、頑張ってよく飲みました。えらいなあ。

私は今日、おむさんの主治医に再びお目にかかって、今後についてお話をうかがった。

おむさんの未来は、獣医学的観点からして、明るいとは決して言えない。 ―― しかし、それはあくまでも、単に獣医学的観点からして、である。

私事で恐縮だが、二箇月前、余りに早すぎる兄の死に臨んで、私はあらためて、物事を色々と考えたり感じたりするようになった。私の愛するこの猫についても、想いは千々に乱れるが、しかし大切なのは恐らく ―― 沈黙すること、であろう。