アオリ止

2008年12月16日 19時04分00秒 | B地点 おむ

 

おむさんが障子を器用に開けることは既に述べた。

(←うっ、すごいホコリだ……。お恥ずかしい。)

そこで、これまでは障子をクランプで固定し、更に布団で押さえていたが、不便でもあり不完全でもあるので、今日は、こういうものを購入してきた。
「アオリ止」という名称を寡聞にして知らなかったが(私はこれを「掛金」だと誤解していた)、ともかく、どこにでもある簡易な戸締まり用の金具である。
まず、両端の障子は、上部に木ネジを打って固定する。
両端の障子と中央の障子とを、アオリ止でつなぎ、
更に、中央開口部の内側と、
外側に、アオリ止を付ける。無論、高い位置に。そして、ご覧の通り、ちょっと細工をして、しっかり曲げておく。簡単には外れないように。

これで、内側からも外側からも、障子が動かないよう、閉め切ることができるようになった。
なお、プラスチック障子紙も用意した。専用の両面テープも。

しかし、これは使わなくて済みそうだ。
そもそもおむさんは、人間の住居というものについてかなり正確な概念を持っており、「傷つけてはいけないものである」ということを知っているらしい。

しかも、今夜のおむさんは、昨夜とは一変して、おとなしい。

恐らく彼は、今後は、部屋から出たがることはあまりないだろう。彼は利口なので、むやみに出たがっても詮ないことである、と理解したに違いない。
追記。

この記事を書いている間、私の後ろでウトウトしていたおむさんが、「アオ~ン!」と叫び声を上げた。私が振り向くと、おむさん自身も目をぱちくりさせ、「んにゃ?」と寝ぼけていた。どうやら、夢を見て寝言を言ったらしい。緑の岸辺でおかか先生と遊ぶ夢でも見ていたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


何かの手違いで

2008年12月16日 15時06分00秒 | B地点 おむ

 

抜け忍オムイを追う刺客は、なにやら怪光線を発する装置を入手したらしい。
これがその発射ボタンである。

「ふふふ、これでオムイも一巻の終わりよ」
「発射!!」

カチッ
ピカッ

「うッ、何だ、この光は?」
ピカーーーッ

「うわあッ!?」
「うわああーーッ! 気持いいーーッ」
「うーん、暖かい!」

ほこほこ ぬくぬく
「あー、最高だなあ」

……怪光線ではなく快光線を発する装置だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ほこほこぬくぬく

2008年12月16日 14時51分00秒 | B地点 おむ

 

「うむ、エネループカイロ、あったかいなあ」

ほこほこ
「……そういえば、奴はどうしてるかな?」
「よし、テレパシーを送ってみるか!」
ピッ

「おい、あったかくしてるかね?」
ピピピッ

「あっ!? 先生!」
「ええ、大丈夫。あったかく過ごしてますよ」
「いい気持で、うとうと眠くなりますよ」

ぬくぬく
「だから、安心して下さいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


長い夜

2008年12月16日 05時18分59秒 | B地点 おむ
日付の変わる頃から、おむは鳴き続ける。
部屋の外に出たがるのだ。
「鳴き」続けるというより「叫び」続けるに近い。
クランプで挟み、更に敷布団で押さえて、凄まじい重さにしてある障子も、とうとう引き開けてしまった。
体調が良くなるにつれ、「望郷の念」が一層つのってくるのだろうか。

部屋の外に出してやっても、無論そこは彼が満足すべき場所ではなく、
彼は途方に暮れたかのような瞳で私を見上げ、また叫び続ける。

2時間の後、憑き物が落ちたかのように彼は沈黙し、私の横にそっと座る。
死のような、しかし暖かい、不思議な静寂に私達は包まれる。

 * * * 

やがておむはトイレに入り、排尿した。
シャーという威勢の良い音を私は初めて聞いた。
膀胱も尿道も、快方に向かいつつあるに違いない。