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ジキルとハイド。君子豹変。深更から夜明けまで、おむは別人になる。内なる野生が蘇るのか。
室外が気になる。屋外に出たがる。興奮し、緊張する。網戸越しに戸外を見せてやると、その時だけ、おむは動きを止め、耳を澄まし、食い入るように周囲に配視し続ける。
結局、今夜も一晩、鳴き明かす。叫び声も、「アーオー! アーオー!」明け方には声が嗄れてくるほど。やはり障子も破った。 この元気を、私は回復の証左と思いたい。 |
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理想的な飼い主は見付からないので、明日リリースの予定だが、メンタルケアも極めて重要である。日中はおとなしくなるのだが、それはあくまでも、「今まで」のこと。だいぶストレスも溜っているようだし、もし今日、日中も落ち着かないようであれば、予定を早めてのリリースも考えよう。無論、医師の許可は下りている。リリースするなら、一週間の投薬後、今日一日は様子を見て静養させ、明日もしくは明日以降にしたかったが。 |
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数年前、捨てられた時点で、命数が尽きていたかもしれないところ、僥倖を得たお前は、今日まで長く「幸福」に生きた。
今回も、もし、たまたま頻尿が観察されなかったら? もし、ボランティアさんが病院に連れて行ってくれなかったら? もし、その直後に保護されなかったら? ―― 恐らく、「とりかえしのつかない」事態に陥っていただろう。 |
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宿痾を抱えたお前だ。これからは、一日でも、一時間でも、一分でも、長く生きれば儲け物。大丈夫、お前は強い。お前には運がある。お前なら、きっと……。 |
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おむは朝食をもりもり食べ、たっぷり水も摂り、毛づくろいを終えた。 今、これを書いている私の後ろで、すこやかな寝息を立てている。 |