また一緒

2008年12月20日 15時35分00秒 | B地点 おむ

 

「先生、ただいま」
「おお! お帰り!」
「この一週間、大変だったろう?」

「いえ、けっこう楽しい日々でしたよ」
「すまん。私がもっとお前の体調に気をつけてやればよかった」

「えっ?」
「許してくれ。この通りだ!」

「そんな……。どうか手を上げて下さい、先生」
「病気は、誰のせいでもありませんよ」
「それに、もうだいぶ良くなったんですから」
「また先生とご一緒できるのが、僕には何よりも嬉しいんです」

「……ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


身に覚えがあるらしい

2008年12月20日 15時18分00秒 | B地点 おむ

 

社長おむ耕作である。
御多分に洩れず、この不況下で彼もまた業績不振に悩んでいた。そこで彼は、腹心の部下、部長おかか豊作に、起死回生のアイデアを求めた。
「このピンチ、どう切り抜けたらいいだろう?」

「は、私の開発した新製品をご覧下さい」
「あれです」

「……普通のキャリーに見えるが?」
「ポータブル型の自動収監機です」

「何!? 自動収監機!?」
「法を犯した悪辣な経営者を瞬時に判別し、自動的に収監する機能を搭載しています」
「まさか! いくらなんでもそんなハイテクが……」
ガシャーン

「あっ、本当だ!」

 

※「おむ耕作」のシリーズは、「スペシャルメニュー」よりまとめてご覧になれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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サムイ外伝

2008年12月20日 14時49分00秒 | B地点 おかか

 

追忍の奸計によって、抜け忍オムイはキャリーの中に囚われてしまったのだった。

「しまったーッ!」
「ふふふ、オムイよ、その中で朽ち果てるがよいわ」
ところが……

スタスタ
「むおッ!? 一体どうやって出た?」
「ふふん、金網のロックを壊しただけさ! ろっくでもないロックだったな!」
「……ろっくでもないロック?」
「さ、寒ーーーッ!」
ガクッ

余りにも寒いダジャレ攻撃によって、追忍は凍えてしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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エスキモー・キッス

2008年12月20日 14時36分00秒 | B地点 おむ

 

「どうだ、帰って来たお祝いに、アレをやらんか?」

「え、アレって、まさか……」
「そうだ。エスキモー・キッスだ」
「ええっ」
「恥ずかしいなあ」

「何が恥ずかしい? 我々猫にとっては一般的な、親愛の情の表現ではないか。それに、読者もきっと期待しているぞ」
「じゃあ、せめて、イスの陰でお願いします」

「やれやれ」
「いいですか、いきますよ」

「早くせんか」
「どうも照れるなあ」

「さっさとしろっ!」
「ん~」

「ん~」

んちゅっ


※ 「感動の再会」では、同一の原板から別のトリミングでご覧になれます

「……」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


帰郷

2008年12月20日 13時59分00秒 | B地点 おむ

 

わっ どこ行くの?
ええっ!? おうちに帰るの!?
わくわく 早く着かないかなあ
ちょ、ちょっと! 写真なんか撮ってないで、早く出してよ(笑)
わーい!

この色、この音、この風、この香り……

帰ってきたんだな
……本当に、帰ってきたんだなあ
みんな、どうもありがとう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


宿痾

2008年12月20日 07時19分00秒 | B地点 おむ

 

ジキルとハイド。君子豹変。深更から夜明けまで、おむは別人になる。内なる野生が蘇るのか。

室外が気になる。屋外に出たがる。興奮し、緊張する。網戸越しに戸外を見せてやると、その時だけ、おむは動きを止め、耳を澄まし、食い入るように周囲に配視し続ける。

結局、今夜も一晩、鳴き明かす。叫び声も、「アーオー! アーオー!」明け方には声が嗄れてくるほど。やはり障子も破った。
この元気を、私は回復の証左と思いたい。

理想的な飼い主は見付からないので、明日リリースの予定だが、メンタルケアも極めて重要である。日中はおとなしくなるのだが、それはあくまでも、「今まで」のこと。だいぶストレスも溜っているようだし、もし今日、日中も落ち着かないようであれば、予定を早めてのリリースも考えよう。無論、医師の許可は下りている。リリースするなら、一週間の投薬後、今日一日は様子を見て静養させ、明日もしくは明日以降にしたかったが。

数年前、捨てられた時点で、命数が尽きていたかもしれないところ、僥倖を得たお前は、今日まで長く「幸福」に生きた。

今回も、もし、たまたま頻尿が観察されなかったら? もし、ボランティアさんが病院に連れて行ってくれなかったら? もし、その直後に保護されなかったら? ―― 恐らく、「とりかえしのつかない」事態に陥っていただろう。

宿痾を抱えたお前だ。これからは、一日でも、一時間でも、一分でも、長く生きれば儲け物。大丈夫、お前は強い。お前には運がある。お前なら、きっと……。

おむは朝食をもりもり食べ、たっぷり水も摂り、毛づくろいを終えた。
今、これを書いている私の後ろで、すこやかな寝息を立てている。