「僕、今日、病院に行ってきましたよ」 | |
「病院? 私の眼の件でかね?」 | |
「そうです。先生の眼のことを、またお医者さんと相談してきました」 | |
おかか先生は、この眼軟膏の塗布を、もうしばらく続けることになったのだった。 | |
「今まで通り、僕が毎日つけてあげます」 | |
「すまん」 | |
「お前には苦労をかけるなあ」 | |
「苦労だなんて、とんでもない」 | |
「……でもね先生。病院嫌いはよくありません。自発的に病院に行くようにしないと」 | |
「そ、そりゃそうだ。解ってはいるんだが……」 | |
「だがな、誰だって、病院に行くのはイヤなもんだよ……」 | |
「そんなことありません。ほら、シンジ君をご覧なさい」 | |
「ん? シンジ君?」 | |
シンジ君は今から、このキャリーに乗って、病院に行くことになっているのだった。 | |
ひょい | |
ひょいひょい | |
「ほら。あんなに積極的じゃありませんか」 | |
「先生も見習わないと」 じろっ | |
「そ、そうだな……」 ぽりぽり |
「おや? 何だい、これは?」 | |
「あ、そうかい。リュックサックかい」 | |
「乗らせてもらうよ。ああ、いい気持だ」 | |
「……ん?」 くんくん | |
くんくん くんくん | |
「こ、これは……若いオトコの香り!」
| |
「はぁはぁ……あたしゃ、若いオトコの香りに弱いんだよ」
| |
「うう……たまらないねえ」 | |
「あああ」 | |
バッ | |
「はぁはぁ、はぁはぁ」 | |
「はぁあああ~ん」 | |
「……」 | |
「……あたしとしたことが」 | |
「いい年をして、興奮しちゃったよ」 | |
「やれやれ。恥ずかしいねえ」 | |