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おむさんは、カメラのお兄さんの膝の上に乗っていた。 |
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ところがお兄さんは、魚眼レンズを手に入れたばかりなので、おむさんの鼻ばかり撮ろうとする。 |
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お兄さんがあまりにしつこいので、おむさんはウンザリしてしまった。 |
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だんだんイライラしてきた。 |
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―― そこへ、おかか先生がやってきた。 |
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先生の尻尾が、ネコジャラシのように揺れる。 |
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猫の本能とイライラとが相俟って、おむさんは思わず猫パンチしてしまった。
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こうなると、もう止まらない。 |
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先生の背中にまで、猫パンチ! |
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怒った先生は、報復措置をとった。 |
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おむさんのお気に入りのリュックを、占領してしまったのである。 |
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だが、おむさんも負けてはいない。 |
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かくして、一つのリュックに、ふたりとも乗ってしまった。 |
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「名無レ」史上初の、椿事である。 |
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チビ君である。 チビ君はいつも、川の対岸にいる。 |
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さて、既にお伝えした通り、チビ君はこのワンちゃんが大好きである。 |
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この日もチビ君は、ワンちゃんと遊びながら歩いていた。 |
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夢中になって歩いているうちに、いつのまにか、自分のテリトリーから遠く離れてしまった。 |
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おむさん達のテリトリーに入ってしまったのである。 |
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そしてチビ君は ―― シンジ君と出会ったのである。 |
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い、一体、どうなるコトか!? |
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……特にどうということもなかった。 ワンちゃんの飼い主さんが、チビ君を誘導して連れ帰ってくれたからである。 |