今日も地球は周ってる

管理人の趣味や日々のことを徒然に。宇宙戦艦ヤマト好きーが現在進行形。時々、六神合体ゴッドマーズ。ALの右オタも兼務

土星にて

2013-05-02 11:30:01 | GM_SS
まだ幼さの残る頬の線、よく動く大きな瞳。はにかんだ笑顔。

「(幸せに、大切に育てられたのだな。良かった…)」

マーグは双子の弟マーズの顔を見て大きく安堵した。

育った環境が違うからだろう、体格も幾分か異なっている。
弟は軍人であるにも関わらず全体的に小柄で、ギシン星人としてみれば華奢な方になる。
ズールの城で軟禁状態で育った自分の方がよほど体格が良い。
双子だと言うのに、何故か弟が歳の離れた、まだやんちゃな年齢に見えて仕方がない。

「(父母の記憶がそうさせているのか)」

マーグの記憶には、父の記憶と母の記憶が残されている。
その為なのか、マーグにとって弟の存在は双子の兄弟と言うよりも、絶対に守るべき者と思ってしまうのだ。

マーズに救助され、地球防衛軍の土星基地に保護されてまだ数時間と経っていない。
伝えるべき両親の記憶はマーズに全て伝えた。
その時にマーズが地球で育った様子の片鱗が垣間見えた。
優しそうな育ての親、幸せな家庭。
これが今のマーズを形作ったのだと思うと、マーズを育ててくれた地球の夫妻に感謝しなくては。と、思う。
その間にも、マーズは何かと口実を作っては病室へとやってくる。
「兄さん」「兄さん」
何の屈託も無く、マーグを兄と呼ぶ弟が愛おしい。

「兄さん、ギシン星ってどんな空の色をしてるんだい?」
「兄さん、ギシン星から見える星ってどんな星?」
「兄さん、ギシン星ってどんな花が咲くの?」

マーズは事あるごとに、マーグにギシン星の事を尋ねる。
地球を破壊せんとする皇帝の息子で無い事が判り、初めてギシン星人である自分を認めることができたのだろう。
そして、まだ見ぬ生まれ故郷に思いを馳せているのだろう。

だが、マーグにはこの優しく愛しい時間が長く続くことは無いと思っていた。
あのズール皇帝が、自分をこのまま地球に亡命させるような事は絶対にすまい。
何が何でも自分をマーズから引き離し、処刑せねば皇帝の気が治まる筈がない。
ならば、少しでも弟に、地球側に被害が及ばないようにしなくては。

マーグは、マーズが部屋を離れた後、独り、宇宙に面して開けた展望室へ向かったのであった。

「(済まない、マーズ。一緒に地球へ行くことは…絶対に無理だ。
 どうかお前が挫ける事無くズールを倒すことを俺は祈っている。
 マーズ、生き抜け!何があっても怯まずに前へ進め!)」


「兄さん!此処に居たんだ!」

弟の声を耳に焼き付けた時、マーグは凄まじい光の奔流と共に土星基地から消え去った。
弟の大きな嘆きを土星に残して。



******************************************************

土星で双子が一緒に居られた時間て、どのくらいだったのでしょうね。
もっとお互いの事を話す時間があれば良かったのでしょうに。

マーグはマーズに両親の記憶を伝える時に、マーズの無意識の記憶を垣間見ています。
幸せに育てられて良かった。きっとマーグはそう思ったことでしょう。
マーグにとってマーズとは庇護すべき存在ですから。
でも、マーグはマーズに自分の事を語ることはありませんでした。
時間が無かったのもさることながら、自分が味わった辛く苦しい日々を、弟にまで疑似体験させたくなかったのでしょう。

2人が共に居られたのは、土星、南極を併せても半日にもならなかったかもしれませんね。
むしろ、敵として戦っていた時間の方が長かったでしょう。

しかし、GMを大人になってから検証すると、本当にシビアで残酷な話だと思います(苦笑)
シリーズ構成の藤川氏がGMに関わっていらっしゃったのは、確か、今の私とさして歳が違わない頃だったかと思います。
ティーンエイジャーに、こんなシビアな話を美しく見せるなんて、なんと凄い方なのでしょう(苦笑)
私はその二次創作で精いっぱいですよ(笑)

ふと思ったのですが、GMがロボット物じゃなかったら、今で言うラノベみたいなお話だったのでしょうね。
それもそれでアリな気もしますが。

あ。「凍」に続いてタケルを泣かせてますね、私w
GMはタケルが苦しんでなんぼだと思ってますからww
ええ、勿論、大大大大大と大がたくさんつくタケルファンですよ(爆)
裕さんのあの声と相まって、タケルが泣き叫んだり苦しんだり悩んだりするのが、とても好きなんです(鬼畜)
大抵のタケルファンの方はきっとそうだと思いますけれども(苦笑)

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6 コメント

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じーんときます (にゃもか)
2013-05-03 20:09:07
最初の行を読んだだけで、じーんときてしまいました。

マーズとマーグのことを考えると、切なすぎて、幸せな時間が瞬間、というくらい短すぎて、胸が苦しいです。
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ありがとうございます (koo)
2013-05-03 23:15:36
いつも読んで下さってありがとうございます。

最初の行は、GMのあるポスターの図柄で思いついた表現なんです。
左上にタケル、右下にマーグ(洗脳後) 中央では、2人が両腕を突き出して衝撃波を発するポーズを取っているという、そんなレイアウトの。
原画は恐らく平山智氏。
その絵のマーグの頬はスッキリとシャープに、タケルの頬は若干丸みを帯びて、そして大きな黒い瞳が印象的だったんです。

30年を経た今だからこそ、双子の切なさがより判ってくるような気がします。
シリーズ構成の藤川氏の年齢に近づいたり、明神夫妻の年齢になってきたからでしょうか。
藤川氏が、大人の視線のまま作った作品 と、どこかで仰っていた記憶があります。
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懐かしいです ()
2013-05-05 19:44:20
こんばんは、初めまして。
宇宙戦艦ヤマトで探していて…まさかGMにたどり着くとは…
GMは勿論リアルで見ていて…泣きました
とくにこのお話のモチーフとなっている土星のお話では……
ズールの冷酷さに思わず手に汗握る日々でした

久しぶりにGMにふれ、マーグとマーズの切なさにちょっと泣いちゃいました

また来させていただきたいと思います。
それでは今回はこれにて失礼します。


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ようこそ (koo)
2013-05-05 20:02:44
炎さま
ようこそ此処をみつけておいで下さいました。

ここの管理人はヤマトとGMで構築されておりますので、このようなサイトになっております。
カテゴリーでヤマトやGMがお選びいただけますので、お好きな時にお好きなカテゴリーをお楽しみくださいませ。

これからもまた、よろしくお願いいたします。
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Unknown (希望)
2013-05-07 07:19:01
お久しぶりです、希望です。
そう! あの時マーグが展望室にわざわざ赴いたのは、
土星基地の被害を最小限にするためだと、
私も思っています。

ホント、隅々まで丁寧に作られたアニメですよね。
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Unknown (koo)
2013-05-07 08:45:36
希望さま、お久しぶりです(^-^)

マーグのことですから、次にズールがどのような行動をするか予測もついていたでしょう。
だから、自分を容易に連れ去り易く、土星基地への被害を最も減らせる展望室だったのだと思います。

GMは今沢氏の演出の凄さが際立った作品だと思っています。
大人になってから見直すと、細かい?はさておき、各キャラのキャラの立ちっぷりとか、物語上での人物の言動とか、本当に練られていると思います。
こういう事が判ってしまうと、GMから離れられなくなってしまいますね。
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