今日も地球は周ってる

管理人の趣味や日々のことを徒然に。宇宙戦艦ヤマト好きーが現在進行形。時々、六神合体ゴッドマーズ。ALの右オタも兼務

その手の先に…

2013-11-25 12:37:52 | GM_SS
「もう、絶対に離さない」

タケルの鳶色の瞳が揺らぎながらも、マーグの澄んだ碧い瞳を捉えた。
そう。
今まで離れていた分、そして、無理矢理敵味方に引き裂かれた分、俺達はずっと一緒にいるんだ。
失った17年を取り戻すんだ。

そう、タケルは心の中で決めていた。

「…マーズは赤ん坊の時から、甘えん坊のままだな」

小さくクスリとマーグが笑う。
初めてみる兄の心からの笑顔。
タケルの心が更に震える。

「え?赤ん坊の頃からっ…て?」
「父上や母上の記憶だ。お前には伝えきれていない記憶もある。
 いずれ伝えてやろう。
 マーズ、お前はね、本当に甘えん坊で、ちょっとでも母上が離れると我儘言って泣くんだ」

タケルの顔にサッと朱が差す。

「な…、に、兄さん!?」

心当たりがタケルにはあった。
明神夫妻に育てられていた幼少期、養母の静子の姿が少しでも見えないと、泣きながら後追いばかりしていた。
それを亡き養父、正から散々聞かされていたのだ。

「どうやら、地球でもそうだったみたいだな?マーズ」
「…」

頬を染めた弟の様子に、マーグは目を細める。

「(俺の弟。甘えん坊でやんちゃで…。今でもそのままなのだな。
 地球の両親が大切に育ててくれた、俺の大事な弟)」

不意にマーグがタケルの背に両手を回して抱きしめた。
マーグからのアクションにタケルは一瞬戸惑ったが、すぐにマーグの首の後ろに両手を回して、頬を寄せた。

「(温かい。この人が俺の兄さん。もう一人の俺。俺と同じ血を持つ、たった一人の肉親…)」

2人はそうやって暫く、互いの半身を強く感じていた。

「にい、さん…」

タケルがポツリと呟く。

「どうしたんだ?マーズ」

マーグの優しい声に、それだけでタケルの胸は喜びに満たされる。
渇望していた肉親の情。
今、それに自分が包まれている。

「にいさん…」
「マーズ?」

タケルが兄を呼ぶ度に、兄が優しく答える。
そのたびにタケルの頬を伝うものが増える。

「泣き虫なんだな、マーズ」
「兄さんのせいだ」

言葉を交わす度に、心も熔けあうような感覚がタケルを襲う。

「(これも、超能力…。超能力は戦う為だけの物じゃなかったんだ…。
 全然しらなかった。なんて、なんて温かくて幸せな力なんだろう)」

2人が抱きあっていたのはどのぐらいの時間だったのだろう。
戦いのさなか、ほんの僅かな時間だった筈だ。
それでもタケルにとっては、初めて感じる穏やかで長い、そして濃密な時間だった。

ヒュイーーーーン
遠くから聞こえる機械音が、スピードを上げてこちらに向かってくる。

2人はさっと互いから手を離した。
早くクレバスから脱出せねば。

「兄さん、さあ」
「ああ」

クレバスに落下して怪我をした兄に手を差し伸べ、タケルはクレバスを登った。

目の前に現れるバトルマシンの砲口。
その砲口が光った時、タケルは兄の手を放してしまった。

もう2度と兄の手を離さないと誓った筈なのに。

そして、タケルは2度と兄の温かい手を取ることは出来なくなってしまったのだった。

タケルがそれを思い知らされるのは、ほんの僅か後の事だった。





******************************************

あとがき

今日は11/25。
「いいふたご」の日ということで、なんと、小一時間で書いてしまいましたw

昨年春からずっとヤマト2199に漬かってて、ちょっとGMがお留守になっておりました。
ので、久々のSS更新です。

お気に召して戴ければ幸いです。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする