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今日も地球は周ってる

管理人の趣味や日々のことを徒然に。宇宙戦艦ヤマト好きーが現在進行形。時々、六神合体ゴッドマーズ。ALの右オタも兼務

a dirittura

2010-04-19 20:01:38 | GM_SS

変身したサグールとの超能力戦は激しかった。
猛獣、怪鳥、大蛇とその身を変えたサグールの超能力は、今までタケルを襲った暗殺者などと比べ物にならないほどの強さだった。
やっとのことでサグールを振り切ったタケルだったが、すでに体力も超能力も限界に近かった。
思わず膝をつき、やっとのことで身体を支える。息が上がり呼吸も苦しい。

「!」

顔を上げると、サグールがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

「(まずい、今攻撃されたら・・・俺はもう戦えない)」

身を堅くして、タケルは近づいてくるサグールを見つめた。
タケルの目の前に立ち、タケルを睨みつけるサグール。
空気が一瞬張り詰める。
が、その場にサグールが倒れた。

「(・・・俺が勝ったのか・・・)」

だが、タケルの心は晴れず、何かが胸につかえているような気がしていた。
やっとのことで立ち上がったタケルは、自分の足元に倒れているサグールを静かに見つめていた。
やがて、サグールが起き上がり、タケルと対峙した。

「何故とどめを刺さん?情けをかけようと言うのか?
 おのれぇ!敵に情けなどかけられてたまるか!来い!マーズ!!」

サグールが悔しさと憎しみに満ちた声をタケルに向ける。
この期に及んで、尚も戦おうとするサグールの姿に、タケルは憐れみと怒りを覚えた。

「・・・そうまでして何故戦う?誰の為に戦うのだ!」

静かな、しかし怒りに満ちたタケルの声が響く。

「知れたこと!ズール皇帝の為だっ!」

「人間を人間とも思わず、バトルマシンとして利用するだけのズール皇帝の為にか!?」

タケルの荒ぶる声が空気を震わす。その怒りはサグールからズールへと向かう。
ズールにバトルマシンとして利用されたのは、暗殺者やサグールだけではない。
その身を反陽子爆弾の生ける起爆装置とされた自分もまた、明神夫妻に育てられなければ星を破壊するバトルマシンとなっていたに違いないのだから。

「俺は違う!!」

そう叫ぶのがサグールには精一杯だった。


その時、ワールの司令船から戦闘メカが出撃し、サグールとタケルに向けてビームを放つ。
咄嗟にタケルはサグールを抱え、攻撃から逃れた。
安全な場所にサグールを避難させ、タケルはガイヤーで戦闘メカに向かっていった。
サグールは、ガイヤーと戦闘メカの戦いを呆然と見つめながら、先ほどのタケルの行動を思い起こしていた。

「(何故、マーズは敵である俺を助けたのだ?敵を倒すためならば、味方に殺されても仕方のないことだというのに、何故だ?)」

 そう言えば、どれい惑星でロゼがやはりマーズに命を助けられたという。
 そのロゼにどのような心境の変化が起こったのだろうか、今やロゼはマーズに、地球側に付いている。
 そして今、己の心が揺れていることにサグールは気付いた。

「(全てはマーズか・・・。
 マーズの存在がロゼや俺の心の奥に眠っていた何かを揺り起こしたのだ。ズール皇帝に従って以来、忘れ去っていた物を。
 そして、あの静かに怒れる瞳は、昔どこかで見たことがある・・・あれは何時のことだった?)」

いつの間にかサグールの心の中からタケルに負けた悔しさが消え、いつか見たことがある、タケルの瞳に似た人物のことを思い起こしていた。


ゴッドマーズとギシン星戦闘メカの戦いはゴッドマーズの圧勝に終わった。
合体を解いた六神体が、サグールを囲むように降り立ち、ガイヤーから降りたタケルがサグールの傍らに膝をついた。
サグールは戦いを終え自分の所に戻ってきたタケルの琥珀色の瞳を見つめる。

「マーズ、やはりお前はイデアの子だ。その真っ直ぐな眼差しはイデアにそっくりだ」

そう呟くと、サグールは寂しく笑った。
琥珀色と濃青色と瞳の色は違っても、そこに宿る光は同じ色をしている。そうサグールは思った。

「俺が父に?」

「お前の父イデアは己の信念に従ってズール皇帝に立ち向かった。そして、反逆者として処刑された。」

タケルはサグールを抱き起こし、黙ってサグールの言葉を聞いていた。

「科学長官にまでなった男が馬鹿なことをしたものだと、俺達はイデアのことを嗤ったものだ。
 お前がズール皇帝の皇子として召し上げられることで、イデアの地位は揺ぎ無いものになる筈だったからな」

敵である男の口から、思いもかけず自分の父のことを聞かされ、タケルの心は揺れていた。
しかも、今のサグールの声音には父に対する好意すら感じられる。
そんなサグールの言葉に促されるように、タケルは話し始めた。

「父は、ギシン星だけでなく宇宙の平和を願っていた。
 だからこそ、俺が反陽子爆弾の起爆装置としてズール皇帝に奪われた後、信念に従ってズール皇帝に逆らった。
 そして俺もだ。地球は俺が育った大切な故郷だ。その故郷を守る為、宇宙の平和の為ならば、俺は相手が誰であろうと戦う!」

タケルの強い意志を感じさせる言葉に、サグールはしばしタケルを見つめた。
そして、手を伸ばしてタケルの頬にそっと触れた。

「あの赤子がこれほどまでに成長していたとはな・・・。我らがお前に勝てなかったわけだ」
サグールの手がタケルの頬から力なく離れていった。

「俺もどうやらバトルマシンに過ぎなかったようだ。」

苦しげに呟くサグールを、タケルは悲しい瞳で見つめる。

「・・・俺が、馬鹿だった・・・」

「サグール長官・・・」

いつの間にかクラッシャー隊と共に現れたロゼがサグールに声をかけた。
もはや力をなくしつつあるサグールの瞳がロゼを見つめる。
サグールの視線を、言葉もなくロゼが受け止めた。

「(ロゼ、お前にはまだ未来がある。生きるんだ、マーズと共に・・・)」

視線と共にロゼの脳裏にサグールの弱いテレパシーが届く。
と、同時にサグールは優しい微笑みをロゼに残し、息絶えた。

「・・・くっ!」

タケルはサグールを抱かかえたまま、うつむき唇を噛んだ。
ようやく心を通わせることができた人間を救えなかったことが、タケルは悔しく、そして悲しかった。


サグールを静かに横たえると、タケルは立ち上がって天を仰いだ。
まるでそこにズールがいるかのように、タケルのその瞳は激しい怒りの色で天を睨みつけていた。

   

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素材提供 空色地図様

"あとがき"という名の"わるあがき"的補足 ※サイト掲載時のあとがきです※


このお話しは23話に私の解釈を付け加えたものです。
戦闘メカとの戦いを終えたタケルが、何故サグールの元に戻ったのか、どうしてサグールを抱きかかえていたのか・・・
と、気になってしまったんですよ。
それに「俺もどうやらバトルマシンに過ぎなかったようだ」のセリフの前に、サグールは絶対にタケルに何か言っている筈だ!って思ってたんです。
「お前は父に似ている」これがそのセリフだと、私は自分の中で思い続けてきました。
そんなこんなで、ようやく自分が長年思っていたことを形にできました。
まだまだ書き込みが足りないような気もしますが、今の"書きたい!!"という勢いで書いて載せてしまいました(笑)
ロゼに続いてバトルマシンであることに気付いたサグールに、きっとタケルは色々な思いを持ったことでしょう。
そして、サグールに生きていて欲しかったと思ったでしょう。
その辺りが上手く書けなかったことが反省点です。

-サイト初出 2005.04.12-