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今日も地球は周ってる

管理人の趣味や日々のことを徒然に。宇宙戦艦ヤマト好きーが現在進行形。時々、六神合体ゴッドマーズ。ALの右オタも兼務

十五夜

2011-09-12 19:35:53 | GM_SS
「おかあさん、なにつくってるの?」
キッチンに立つ静子のそばに、まだ幼いタケルが寄ってきた。
大きなボウルで何かを捏ねている静子は微笑んでタケルを振り返った。
「今日は十五夜って言ってお月見をする日なの。お母さんはお月様にお供えするお団子を作っているのよ」
「ふーん。ねえ、おかあさん、ぼくもおだんごつくりたい」
"十五夜"も"お月見"という言葉もまだタケルには理解できない様子で、それよりも静子が作っているお団子がタケルには気になるようだった。
ようやくキッチンに手が届くタケルが、一生懸命背伸びしてボウルの中を覗こうとしている。
その様子に静子は小さく微笑んだ。
「タケル、お母さんのお団子作りを手伝ってくれるかしら?」
母の声にタケルの顔が一気にほころんだ。


灯りを消したリビングの窓辺に、正と静子が座り、
窓の外で、歌を歌いながら跳ね回っているタケルを見ていた。

うさぎ うさぎ
なにみてはねる
じゅうごやおつきさま
みてはねる

タケルを照らすように月は煌々と輝いている。
月の光を背に、タケルが2人の元に駆け寄ってきた。
「ねえ、おとうさん」
息を弾ませたタケルが正の傍に来る。
「なんだい、タケル?」
「どうして、うさぎはおつきさまをみてはねるの?」
タケルの質問に正は一瞬とまどった。
が、すぐにタケルを見つめ微笑んだ。
「タケル、父さんの膝においで」
大きく頷いたタケルは大急ぎで正の膝に腰掛けた。
「そうだなあ。どうしてうさぎが月を見て跳ねるのか、タケルはどう思う?」
自分の膝に座るタケルの髪を撫でながら正がタケルに問う。
「うーんとねえー・・・」
初めに質問したのが自分であることも忘れ、タケルは眉を寄せながら一生懸命に考える。
「わかった!おつきさまがおだんごにみえるから、うさぎはおだんごがほしかったの」
一生懸命に考えた自分の答えに満足気なタケルを見て、正も静子も笑った。
「お月様がお団子に見えるとは、食いしん坊なうさぎだなあ」
「あらあら、お団子が欲しいのはタケルでしょ?」
「わらっちゃだめー」
タケルがふくれっ面で両親に抗議する。
「父さん達が悪かった。ゴメンよタケル」
正が笑いを堪えながらタケルに謝る。
それでもまだふくれっ面のタケルに正が話しかけた。
「ずっとずっと昔から、月にはうさぎが住んでいるって言われていたんだよ」
「うさぎが?」
半信半疑のタケルに正が言葉を続ける。
「そうだよ。ごらんタケル。お月様にうさぎの形が見えないか?」
「うーん・・・。あ、いた!うさぎさんがいた!」
目を凝らして月を見ていたタケルが嬉しそうな声をあげる。
「そっかー、おつきさまのうさぎにあいてくて、はねてたんだー」
「そうだな。タケルの言う通り、うさぎは月にいる仲間に会いたかったのかもしれないな」
「じゃあ、ぼくもっ!」
タケルは正の膝から降り、庭へ飛び出していくとぴょんぴょん跳ねまわった。
「おつきさまの、ずーーっとむこうまでいくんだ!」


タケルが正の膝でぐっすりと眠っている。
月の淡い光に照らされ、健やかな寝息をたてて。
「・・・タケルは知っているのかしら、自分のことを・・・」
静子がタケルの髪をそっと撫でながら不安げに正に話しかける。
「自分が宇宙から来たなど、タケルは判っていないだろう。
 だが、幼いなりに何かを感じ取っているのかもしれんな。
 星の彼方にいる、タケルの本当の家族の想いとか・・・」
正は自分に言い聞かせるように呟いた。
「いつか、タケルが星の彼方にいる家族に会える日が来るのかしら?」
「それは判らん。
 その時が来てタケルが地球を離れることがあれば、私達は黙ってタケルを行かせてやろう。
 タケルなら地球と宇宙を結ぶ絆になってくれるだろう。」
その言葉に静子は頷いた。

タケルに架せられた運命の重さを誰一人知らぬ、地球の静かな月の夜。

*****************************************************************

あとがきです。

何を思って書いたのだか、すっかり忘れてしまっていますけども(笑)
幼いタケルは、知らず知らずのうちに、マーグのテレパシーを受けていたのかもしれませんね。
57話でタケルの子供の頃のカットが出てきますが、どれも無邪気で可愛らしくて大好きです。
赤ん坊の時に実の両親から引き離されてしまいましたが、地球で優しい育ての親に巡り合えて良かったね。と、思います。

サイト初出 2005/09/18

2011-04-02 12:07:20 | GM_SS
風に吹かれ、淡い色の花弁がハラハラと散る。

「まるで…雪のようですね」

緑の髪の奥の青い瞳が細められる。
その傍らで鳶色の瞳が柔らかく微笑む。

「さくらふぶき って言うんだよ。」

「サクラ…フブキ?」

「そう。
 桜の花の散る光景を、雪が降る様子に例えているんだ。」

「…本当に雪のようですね。」

ロゼの呟きにタケルがそっと頷く。

「俺は…」

タケルの声音が少し深い色を帯びる。

「…雪はあまり好きじゃないんだ。」

その声にロゼがタケルを振り向く。

「雪は…哀しい…」


刹那。
ロゼの脳裏に一瞬よぎる光景。

雪の中に倒れていく緋色の外套をまとった女性が。
白い大地で碧い瞳を閉じていく緑の髪の少年。


「ごめんなさい。私…。」
「…俺の方こそすまない。君に思念が流れ込んでしまった…。」

瞳を伏せてしまったロゼを宥めるように、タケルが寄り添う。

「でも。
 今は俺は一人じゃない。」

伏せられたロゼの瞳が瞬き、タケルを見つめる。

「俺にはいつも傍にいてくれる人がいるから」

そう言ったタケルの視線がロゼから離れ、眩しい光を見るように細められる。

「君と…桜を見られて良かった。
 春を迎えられて良かった。」

穏やかなタケルの声に、ロゼが小さく頷いた。


「タケルさーん!」

桜吹雪の向こう側から声がかかる。

「タケルっ!遅えーよ!早く来いって!」
「そうそう、タケルとロゼが居なくっちゃ。今日の主賓なんですもの。」
「小母さんの弁当、旨そうだよー♪」

仲間達の声がタケルとロゼを招く。

その声に、2人は顔を見合わせクスリと笑った。

「すぐ行く!」

タケルの声が青空に届くように爽やかに響いた。


*****************************************************************

あとがき。

桜吹雪の中に立つ、タケルとロゼ。
すっごく久しぶりに地球に帰って来たら、桜の時期だったと。

雪を思うと切なくなってしまうタケルですが。
今はもう大丈夫。
ロゼがいますもんね。

このお話は、震災後に自分の心の平衡感覚を取り戻そうとして書いたものです。
今年は桜を愛でる余裕が無い方達も多いでしょう。
そんな方々も、いつか、桜を愛でる時が来ますように。と、願ってやみません。

夜明け

2010-05-03 20:01:52 | GM_SS

日付が昨日から今日に変わって数時間後。
窓の外は、まだ夜が続いている。

俺は部屋の中央、ビニールのカーテンに囲まれたベッドに静かに近付く。
カーテンの向こう側では、胸や腕が医療器具や点滴に繋がれたタケルが横たわっている。
浅く早い呼吸音が耳に入る。規則正しいものではなく、不規則で弱々しいそれ。
眉根が寄せられ唇を薄く開いて、意識が無いにも関わらず苦しそうな表情をしている。

ドクターは"脳波がしっかりしているだけ、昨日の朝の状態よりは良い"とは言っていた。
しかし"だからと言って、今後の容態は私には何とも言えません。タケル君次第です。"とも。

「…タケル…苦しいよな。辛いよな。すまない。俺のせいで…」

小さな声で俺-ナオト-はタケルに詫びる。



あれから24時間も経っていない。
ナミダがタケルの異変を察知し、ようやく俺がタケルを発見した昨日の朝から。



タケルは弱った身体で、たった独りで敵の攻撃に耐えていたのだろう。
今にも止めを刺そうとする敵の前に力無く横たわっていた。

-タケルガシンデシマウ-

辛うじて敵を撃退した俺は、タケルがバトルキャンプに運ばれるまで、タケルに呼び掛け続けた。

「タケル!死ぬな!!絶対に死ぬな!!」



音や光や痛み、色々な刺激に対して全く反応を示さないタケル。
脳波はほぼ平らな波形を描くだけである。
痙攣するように弱々しい動きの心臓と不規則な呼吸。
それ以外の身体の機能をタケルは止めてしまった。

"普通の人間ならとうに命は…"

もう、治療の術がないとドクターは言う。


…タケルの生命の灯火は、今まさに消えようとしていた。


それを知るズールは、地球に大軍団を送り込んだ。
一気に地球を殲滅せんがために。

極秘に開発されていたゼロワン。
それは、タケルが万一戦えなくなった時、ズールに対抗するために作られた特攻兵器。
無人ではゼロワンの発射が出来ないと知った俺は、単身ゼロワンに乗り込みズールに立ち向かった。

俺が意を決してゼロワンを爆破しようとしたその時、敵の攻撃で気を失った。
気付いたのは、昏睡状態だった筈のタケルがゴッドマーズで自分を救ってくれた時だった。

「俺一人の命で地球が救えたら、なんてね」

そうタケルに言い残してズールの軍団に突っ込み、自爆した筈の俺。

なのに、バトルキャンプの医務室で目を覚ました。
最初は「天国ってのはもっと色気があるところだと思うんだがな」なんて思っていた。
そんな俺は本当に馬鹿野郎だった。



隣の集中治療室では、タケルがその日2度目の意識不明状態に陥っていた。

辛うじて最初の昏睡状態から脱したものの、歩くことすらままならない身体で出撃したと聞いた。
おばさん-タケルのお袋さん-が必死で止めても、

「仲間を見殺しにできない」

そう言って出撃したと。
俺がゼロワンで飛び出したと知ったが為に。

俺を地球へ連れ帰るために。



だから俺はタケルに言いに来たんだ。

「タケルの大馬鹿野郎!俺なんかより、自分の命を大切にしやがれ!」

ってな。

だけど、こんな、こんなタケルを見ちまったら言える訳ないじゃないか。
だから…。

「…タケル…苦しいよな。辛いよな。すまない。俺のせいで…」

俺は、ビニールのカーテンの向こうのタケルに詫びた。



「…オト…」

ビニールのカーテンの向こうから、小さな声が聞こえた。
微かな、掠れた声が。

「ナ…オト…」
「タケル!!気がついたのか?大丈夫か?っと、いや、答えなくていいぞ。今は無理に喋るな!」

意識が戻ったらしいタケルが俺の名を呼んだ。
そのせいで俺は軽くパニクってしまった。
とりあえず何か話そうとするタケルを制止しようとしたが、

「ナオト…ぶじ…よか…た…」

途切れがちな小さな声は俺を心配していた。

「喋るなっつーてるだろーが!」

俺は涙声になりながらタケルを制止しようとした。が、もう、何も言えなくなった。

-タケルがビニールカーテン越しに…点滴の刺さった、細くなってしまった腕を…俺の方に…一生懸命伸ばしてきたんだ-

俺はビニールカーテンごと、タケルの手を両手で包み込んだ。
ひんやりとしたビニールの向こう側から、タケルの手の温もりが伝わってくる。
俺の声は言葉にならず、ただ、"うん、うん"と頷くしか出来なかった。

「…まもりたい…ナオト…みんな…ちきゅう…」

タケルが苦しげな息の下、焦点の合わない瞳で空を見たまま、うわ言のように言葉を紡ぐ。
俺は溢れる涙を止めることはできなかった。
こんなにもタケルは生きようとしている。
皆を、地球を守りたいと必死に生きようとしている。

「ああ、俺も守りたいんだ。地球を…そしてお前を…」

ようやく言えた俺の言葉に、タケルが微かに微笑んだように見えた。



その後、タケルの意識の回復をモニターしたドクター達に俺は部屋から追い出されてしまった。

俺は信じている。
タケルは、必ず蘇る と。
さっき、微笑んだタケルの手に力が籠められたのが俺には判ったから。



長かった夜が、今、明ける。

            





**********************************************************************

あとがき です。

このお話は61話「タケル、最後の誕生日?」をベースにしています。
個人的に61話というのは、あくまでタケルの地球での誕生日だと思っているのですが、
今回はそれがギシン星での誕生日だったという設定にしてみました。
このストーリーの中には直接出て来ないけど、本編では兄さんもでてきているので、ま、いっかな、と。

アバウトですいません。

しかも、バースデーに関係したのアップなのに、中身が重いったら。
ラストで希望に繋がっているってことで、お許しください。



61話で、ナオトがズールのメカ軍団を追っていった時ですら、ゴッドマーズは、タケルは動けなかった。
それは、タケルがもはやゴッドマーズを動かすことすら出来ない程の状況にあったとしか思えない。
少しでも余力があれば、タケルはナオトを制して自分が戦いに行ったはず。

そんなタケルがナオトを連れて地球に戻ったら…

きっと、力尽きてナオトを救いに行く直前の状態と同じになってしまうのじゃないかと…。


そこからこのストーリーが生まれました。
一度書いたことがあったのだけど、データを保存していたUSBメモリを飼い犬に噛み砕かれまして(泣)、 新たに今回書き直しました。

---------あとがき ブログ掲載に寄せて---------
暗くて重いです…orz

ブログ掲載に際して読みなおしてみたのですが、本当に暗い。

そうなんですよね。
地球編って本当に話しが重くて暗いですよね。
でも好きなんですよ、地球編。
いたぶられる主人公にもえ…(以下略
じゃなくてですね、タケルの想いがひしひしと伝わってきて。
その純粋さが痛いぐらいで。
リアルタイムで見ていた時は、本当に辛かったです。
それだけに最終回の最後の笑顔は嬉しかったなあ。泣けたなあ。

子供向けで始まったはずの番組だったのに、終わりの時にはすっかり中高生女子向け番組になっていた不思議アニメ「六神合体ゴッドマーズ」

久々に57話と61話を見てみようかな。

-サイト初出 2007.06.28-


タケル

2010-04-24 23:27:56 | GM_SS
SSではありませんが、このカテゴリーで掲載します。

昔、サイトに載せていたタケルのイラストです。

          

らくがき帳に書いたものをスキャンしたので、色調が淡くなっています。
多分、気ままに描いたら雰囲気よく出来たので、スキャンしちゃったんじゃないかと。

昔読んだGMの二次創作に、長髪のタケルが出てくるお話があったのですが、
そのタケルがとても美人さんで大好きでした。
それが意識の底にあるようで、長髪のタケルが結構好きだったりします。

最近めっきり描いてないなあ。
らくがき帳も底をついたし、今度100均で買ってこようっと。

a dirittura

2010-04-19 20:01:38 | GM_SS

変身したサグールとの超能力戦は激しかった。
猛獣、怪鳥、大蛇とその身を変えたサグールの超能力は、今までタケルを襲った暗殺者などと比べ物にならないほどの強さだった。
やっとのことでサグールを振り切ったタケルだったが、すでに体力も超能力も限界に近かった。
思わず膝をつき、やっとのことで身体を支える。息が上がり呼吸も苦しい。

「!」

顔を上げると、サグールがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

「(まずい、今攻撃されたら・・・俺はもう戦えない)」

身を堅くして、タケルは近づいてくるサグールを見つめた。
タケルの目の前に立ち、タケルを睨みつけるサグール。
空気が一瞬張り詰める。
が、その場にサグールが倒れた。

「(・・・俺が勝ったのか・・・)」

だが、タケルの心は晴れず、何かが胸につかえているような気がしていた。
やっとのことで立ち上がったタケルは、自分の足元に倒れているサグールを静かに見つめていた。
やがて、サグールが起き上がり、タケルと対峙した。

「何故とどめを刺さん?情けをかけようと言うのか?
 おのれぇ!敵に情けなどかけられてたまるか!来い!マーズ!!」

サグールが悔しさと憎しみに満ちた声をタケルに向ける。
この期に及んで、尚も戦おうとするサグールの姿に、タケルは憐れみと怒りを覚えた。

「・・・そうまでして何故戦う?誰の為に戦うのだ!」

静かな、しかし怒りに満ちたタケルの声が響く。

「知れたこと!ズール皇帝の為だっ!」

「人間を人間とも思わず、バトルマシンとして利用するだけのズール皇帝の為にか!?」

タケルの荒ぶる声が空気を震わす。その怒りはサグールからズールへと向かう。
ズールにバトルマシンとして利用されたのは、暗殺者やサグールだけではない。
その身を反陽子爆弾の生ける起爆装置とされた自分もまた、明神夫妻に育てられなければ星を破壊するバトルマシンとなっていたに違いないのだから。

「俺は違う!!」

そう叫ぶのがサグールには精一杯だった。


その時、ワールの司令船から戦闘メカが出撃し、サグールとタケルに向けてビームを放つ。
咄嗟にタケルはサグールを抱え、攻撃から逃れた。
安全な場所にサグールを避難させ、タケルはガイヤーで戦闘メカに向かっていった。
サグールは、ガイヤーと戦闘メカの戦いを呆然と見つめながら、先ほどのタケルの行動を思い起こしていた。

「(何故、マーズは敵である俺を助けたのだ?敵を倒すためならば、味方に殺されても仕方のないことだというのに、何故だ?)」

 そう言えば、どれい惑星でロゼがやはりマーズに命を助けられたという。
 そのロゼにどのような心境の変化が起こったのだろうか、今やロゼはマーズに、地球側に付いている。
 そして今、己の心が揺れていることにサグールは気付いた。

「(全てはマーズか・・・。
 マーズの存在がロゼや俺の心の奥に眠っていた何かを揺り起こしたのだ。ズール皇帝に従って以来、忘れ去っていた物を。
 そして、あの静かに怒れる瞳は、昔どこかで見たことがある・・・あれは何時のことだった?)」

いつの間にかサグールの心の中からタケルに負けた悔しさが消え、いつか見たことがある、タケルの瞳に似た人物のことを思い起こしていた。


ゴッドマーズとギシン星戦闘メカの戦いはゴッドマーズの圧勝に終わった。
合体を解いた六神体が、サグールを囲むように降り立ち、ガイヤーから降りたタケルがサグールの傍らに膝をついた。
サグールは戦いを終え自分の所に戻ってきたタケルの琥珀色の瞳を見つめる。

「マーズ、やはりお前はイデアの子だ。その真っ直ぐな眼差しはイデアにそっくりだ」

そう呟くと、サグールは寂しく笑った。
琥珀色と濃青色と瞳の色は違っても、そこに宿る光は同じ色をしている。そうサグールは思った。

「俺が父に?」

「お前の父イデアは己の信念に従ってズール皇帝に立ち向かった。そして、反逆者として処刑された。」

タケルはサグールを抱き起こし、黙ってサグールの言葉を聞いていた。

「科学長官にまでなった男が馬鹿なことをしたものだと、俺達はイデアのことを嗤ったものだ。
 お前がズール皇帝の皇子として召し上げられることで、イデアの地位は揺ぎ無いものになる筈だったからな」

敵である男の口から、思いもかけず自分の父のことを聞かされ、タケルの心は揺れていた。
しかも、今のサグールの声音には父に対する好意すら感じられる。
そんなサグールの言葉に促されるように、タケルは話し始めた。

「父は、ギシン星だけでなく宇宙の平和を願っていた。
 だからこそ、俺が反陽子爆弾の起爆装置としてズール皇帝に奪われた後、信念に従ってズール皇帝に逆らった。
 そして俺もだ。地球は俺が育った大切な故郷だ。その故郷を守る為、宇宙の平和の為ならば、俺は相手が誰であろうと戦う!」

タケルの強い意志を感じさせる言葉に、サグールはしばしタケルを見つめた。
そして、手を伸ばしてタケルの頬にそっと触れた。

「あの赤子がこれほどまでに成長していたとはな・・・。我らがお前に勝てなかったわけだ」
サグールの手がタケルの頬から力なく離れていった。

「俺もどうやらバトルマシンに過ぎなかったようだ。」

苦しげに呟くサグールを、タケルは悲しい瞳で見つめる。

「・・・俺が、馬鹿だった・・・」

「サグール長官・・・」

いつの間にかクラッシャー隊と共に現れたロゼがサグールに声をかけた。
もはや力をなくしつつあるサグールの瞳がロゼを見つめる。
サグールの視線を、言葉もなくロゼが受け止めた。

「(ロゼ、お前にはまだ未来がある。生きるんだ、マーズと共に・・・)」

視線と共にロゼの脳裏にサグールの弱いテレパシーが届く。
と、同時にサグールは優しい微笑みをロゼに残し、息絶えた。

「・・・くっ!」

タケルはサグールを抱かかえたまま、うつむき唇を噛んだ。
ようやく心を通わせることができた人間を救えなかったことが、タケルは悔しく、そして悲しかった。


サグールを静かに横たえると、タケルは立ち上がって天を仰いだ。
まるでそこにズールがいるかのように、タケルのその瞳は激しい怒りの色で天を睨みつけていた。

   

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素材提供 空色地図様

"あとがき"という名の"わるあがき"的補足 ※サイト掲載時のあとがきです※


このお話しは23話に私の解釈を付け加えたものです。
戦闘メカとの戦いを終えたタケルが、何故サグールの元に戻ったのか、どうしてサグールを抱きかかえていたのか・・・
と、気になってしまったんですよ。
それに「俺もどうやらバトルマシンに過ぎなかったようだ」のセリフの前に、サグールは絶対にタケルに何か言っている筈だ!って思ってたんです。
「お前は父に似ている」これがそのセリフだと、私は自分の中で思い続けてきました。
そんなこんなで、ようやく自分が長年思っていたことを形にできました。
まだまだ書き込みが足りないような気もしますが、今の"書きたい!!"という勢いで書いて載せてしまいました(笑)
ロゼに続いてバトルマシンであることに気付いたサグールに、きっとタケルは色々な思いを持ったことでしょう。
そして、サグールに生きていて欲しかったと思ったでしょう。
その辺りが上手く書けなかったことが反省点です。

-サイト初出 2005.04.12-


ERTHLING

2010-02-25 23:05:53 | GM_SS
洪水が去った後、死の星には緑が蘇りはじめていた。
マイナス超能力者も、クラッシャーのメンバーも芽吹きはじめた死の星に降り立ち、この奇跡を喜んでいる。
そんな様子をフロンティア号の艦橋で、タケルとガッシュが並んで見ていた。
特に2人の間で会話は交わされていなかったが、タケルは何か言いたげな表情をしていた。

「・・・ガッシュ、聞きたいことがあるんだ」
「なんだ?」
「この前、"マーズは地球の人間"と言ってたが、あれはどういう意味なんだ?」

それは数日前のことだった。
地球を追放されたタケルが、ガッシュ達に協力を申し出た時
「マーズは地球の人間。これは我々マルメロ星人の問題だ。」
と、ガッシュはタケルの協力を断った。
拒否されるであろうことは予測しておりさほどショックはなかったのだが、
"マーズは地球の人間"
という一言がタケルの脳裏からどうしても離れなかったのだ。

「どういう意味もない。お前は地球の人間だろう?だからそう言ったまでだ」

どうしてそんなことを聞くのか判らないといった風にガッシュが答える。

「・・・俺は・・・自分が本当に"地球の人間"なのか判らないんだ・・・」

小さく、掠れた声でタケルが呟く。

「俺は地球で育った。故郷は地球だと、自分は地球人だと思っている。
 俺のことを"マーズ"と呼ぶ人が俺をギシン星人だと言うのは仕方がないと思う。紛れも無い事実だし。
 でも・・・俺を"明神タケル"と呼ぶ人の中に、俺のことをギシン星人だと・・・
 地球に住みついた厄介者だと思ってる人が大勢いることを知ってしまったんだ。」
「・・・」

ガッシュは独り言のようなタケルの言葉を静かに聞いていた。

「その人達が俺を疎んじていること、持て余していることも・・・。」

言葉が途切れたタケルを、ガッシュが見遣る。
固く握られた拳が小さく震えている。
そんなタケルを見たガッシュが口を開いた。

「・・・良いではないか、疎んじられても」

ガッシュの言葉にタケルがガッシュを振り返る。
目を大きく見開いたタケルはどこか不安げな怯えた表情をしていた。
初めてみるタケルの表情に、ガッシュは驚きつつもその表情の理由を察していた。

「(この少年は自分の信じてきたものを全て覆されてしまった。
 その中で地球という一つの星の運命を背負いながら必死に生きて、ようやく"現在の自分"を掴んだのだ。
 しかし、その自分の存在が、自分の中で危うくなってきている。
 "現在の自分"を否定する者がいるために・・・)」

否定する者の存在を露わにしたのがマルメロ星の内乱だと思うと、ガッシュはタケルを放っておく気にはなれなかった。

「我々は"海賊"と人から恐れられ非難されている。
 だが、我々はマルメロ星のためと信じて行動しているからこそ、どんな非難も甘んじて受けることにしている。
 マーズ、お前もそうではないのか?」

タケルを見つめるガッシュの瞳からはいつもの冷徹さが消えていた。
代わりに優しさが満ちている。
年少の弟に言い聞かせるようにガッシュが言葉を続ける。

「全ての人がお前を疎んじ、遠ざけようとしている訳ではないだろう?
 お前を愛してくれる人々、お前が愛する人々が地球にいる。
 それで良いではないか。
 お前が地球と共に生きようとするなら。」

静かにガッシュの言葉を聞いているタケルの脳裏に、静子やクラッシャーのメンバー姿がよぎる。
そして、胸に熱いものがこみあげてきた。

「まして、呼び名など・・・。
 お前が"マーズ"と呼ばれようと"タケル"と呼ばれようと、お前はお前以外の何者でもない。
 呼び名一つでギシン星人や地球人に簡単に変われるものでもないだろう?」

心の奥底で凍りついていたものが融けていくのを感じた時、タケルの瞳に光るものがあった。
袖口で目許を拭った後、タケルの瞳には強い意志の光が宿っていた。
その瞳を見たガッシュは思った。この少年が自分の存在について思い悩むことはもうないだろうと。

「・・・ありがとう、ガッシュ。」

微笑むタケルに微笑み返したガッシュだが、一瞬の後にはいつもの冷徹な表情のガッシュに戻っていた。


この数日後、ガッシュはマルメロ星の雪原に散った。

愛するミカを守るために。




***素材提供Moonlitさま***

---------あとがき ブログ掲載に寄せて---------
これは私が初めて書いたSSです。
GMのDVDを購入して喜んで見ていた時、ふと気になったガッシュの言葉がきっかけでした。
その言葉をタケルはどんな思いで聞いたのだろうと考えて出来たお話です。
EARTHLINGとは"地球に住むもの;地球人"という意味だそうです。

-サイト初出 2005.02.01-