温泉にゃんこのネコ散歩

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薬師寺・暁天講座

2006-07-21 17:39:19 | 神社・お寺の話
朝6時、五反田駅に降り立ち石段の坂道を行く。この日は「薬師寺・東京別院」で夏の3日間だけ行われる「暁天講座」の1日目に参加するために激烈早起きをしたのだ。朝6時半、奈良からいらした薬師寺の管主さまである安田瑛胤氏のお経から始まる。その後、大谷徹奘氏が「父母恩重経」についてお話して下さる予定だ。早朝にもかかわらず、80名あまりの人々が集まっている。その人々の前で大谷氏はこう切り出した。
「実は今日は病院からここに来ました。今日ここで皆さんに、父母恩重経についてお話できることに感謝します」
と言って目を潤ませた。病院からと聞いてお体の具合でも悪かったのかしら?と思ったのだが、そうではなかった。この日の朝4時、大谷徹奨氏のお父さまがお亡くなりになったという。大谷氏はそれを看取った足で、この場にいらっしゃった。
「奈良にいたら親の死に目に会えなかった。それは以前から覚悟していたことだが、今日たまたま父の最期に私だけが立ち会えたのは、お釈迦さまのお導きだと思う」
その後、全員で「父母恩重経」を一緒に読誦した。父母の子供に対する無償の愛が切々と語られるこのお経は、まさに今の大谷氏のためのものだと感じ、胸が詰まって途中から涙がこらえきれなくなってしまった。その場にいた人に、同じ思いが広がってゆく。



大谷氏がこの「父母恩重経」について語ることは、ずっと以前から決まっていた。その朝にお父さまが逝くとは…何というめぐり合わせなのだろう。
「ちゃんと看取って送り出してこられたのはありがたいことで、気持ちの整理も付いているんです。でも、やはり寂しいもんですなぁ」
とつぶやいた言葉が心に沁みた。人はひとりでは生きられない。ましてや赤ん坊は、父と母が護ってくれるからこそ日々生きていける。そういう時があったことを日常の中では忘れがちだ。大谷氏は、最後の方にあるこの一文を繰り返し語った。
『 常に報恩の心を懐きて、片時も忘失るること勿れ 』
小さい頃のことを思った時、やはりそこには愛情があった。そういうことを忘れないでいようと強く感じた、かけがえのない時間だった。

その後、参拝者に「茶がゆ」の朝餉が施された。初めて食べる茶がゆは、奈良の素朴な風景が浮かぶ滋味深いお味だった。しかしそこには沢庵が…にゃんこ、沢庵を食べたことがない。でも残すことは許されないそうで、最後に沢庵で器を綺麗にしなければならないという。えいやっ!と口に入れた…あっ、大丈夫かも?初めての沢庵体験も、この日の思い出になった。その後、お写経をして9時にはお寺を後にする。この日いただいたご著書に、大谷氏はこんなお言葉を書いて下さった。
『 あなたの笑顔が わたしのよろこび 』
朝の東京が、この日は何となくキラキラと違う景色に見えたのだ。

薬師寺・東京別院→http://www.yakushiji.or.jp/index2.html
大谷徹奘氏HP→http://www.tetsujo.net/
大谷徹奘著「自分で選んだ道なのに」→
http://pt.afl.rakuten.co.jp/c/021c97d8.d938ea6a/?url=http://item.rakuten.co.jp/book/3636889/