時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

花と華を見て

2012年05月01日 | 午後のティールーム

 

  連休に入る少し前、国立東京博物館『ボストン美術館日本美術の至宝』展を訪れた。連休中はとても見るどころではないことを予想したからだ。ボストン美術館の日本美術の収蔵作品は10万点を超えるそうだが、1876年開館時は5600点であったので、およそ135年の間に想像を超える日本の美術品が太平洋を渡ったことになる。

 展示作品の中には、かつて日本であるいは滞米中や旅の合間に見た作品もあったが、初めて接したものも多く、大変興味深かった。日本にあったならば、国宝、重要文化財指定は間違いないと思われる作品が多数あり、それらが日本で見られないことに残念な気はするが、かえって外国に流出したために逸失・滅失を免れた作品も多いはずだと考えなおす。ラ・トゥールもフェルメールも、自国外に分散、所蔵されているがために、世界的に注目を集め、客観的な評価が可能になっている部分もある。美術品の流出・散逸の問題については、かねて調べてみたいテーマもあるのだが、もはや時間がない。

 今回の企画展にも『平治物語絵巻』、『吉備大臣入唐絵巻』など、見どころ多い華のある作品が目白押しだったが、奇才曽我粛白の『雲龍図』を見られたことは幸いだった。画面から発するすさまじいエネルギーに力をもらった。

 館外では庭園が開放され、多くの花見客で賑わっていた。こうした光景だけを見ていると、騒然たる世俗の世界を忘れることができるのだが。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 労働市場イメージの再編成 | トップ | 二人のヨハネを結ぶもの »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
美術作品 (Olde Pygmaios)
2012-05-07 21:45:56
上野の桜が蕾の頃、この特別展に行きました。又、ゴールデンウイークを挟んで、絵画と建築物の鑑賞が趣味の友人に誘われ、オランダなど3カ国にパック旅行をして、一昨日帰国しました。レンブラント、ゴッホ、フェルメールの名画を目の当たりにして(ガイドの解説附き)、鑑賞眼はないのですが、素晴らしさで感動しました。
「雲竜図」なるもの全く知らなかったのですが、確かにすごいエネルギーを感じました。
日本の博物館や美術館の中には、資金的に大切な作品を維持管理することが困難なところが出てきており、海外の金持ちの中で、維持管理毎それらを一定期間引き取りたいとの申し出が出ていると、友人から聞きました。本当ですかね?
それと質問です。
なぜ、国宝級の逸品が大多数アメリカに流れたのですか?岡倉天心などにも責めがあるのでは?
返信する
清濁渦巻く世界 (old-dreamer)
2012-05-08 10:13:22
Olde Pygmaiosさん
素晴らしい旅行をされたようですね。オランダはキューケンホッフ公園などチューリップのシーズンで、楽しまれたのでは。美術の旅は圧巻ですね。レンブラント、ゴッホを見られたのは素晴らしい! 
オランダ美術品のアメリカ流出の経緯は、日本の美術品の流出と並んで、大変興味深いテーマです。
ボストンの東洋部門の充実は、フェノロサ、ビゲロー、モースなどの美術家の日本美術への研鑽と収集努力が大きいのでしょう。岡倉天心が美術顧問で招聘された20世紀初めにはすでに京都、奈良の美術館に次ぐ世界的コレクションになっていたようです。岡倉の助言は名品の獲得に影響したでしょう。山中などの古美術商の役割も大きいようです。これが日本にあったらと思う作品は多いのですが、太平洋戦争などを考えると、アメリカに流出していたことが幸いした面もあるかもしれません。「雲龍図」も1911年、ウイリアム・スタージス・ビゲロー・コレクションの寄贈ですね。
アート・ビジネスはいろいろなアイディアが出ているようです。近年、私は中国系富豪・コレクターの資金力に注目しています。底知れぬ財力に驚かされたことがありました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

午後のティールーム」カテゴリの最新記事