Courtesy of
http://www.wga.hu/html/u/uccello/4battle/1battle.html
そろそろ、ラ・トゥールのゆかりの地、リュネヴィルでの話に戻ろうと思っていた矢先、再びわき道に入ることになる。前回のブログで、ウッチェロに言及した後、友人からこの画家の他の作品、評価などについて聞かれ、ひとしきり話の種となった。ウッチェロは、ラ・トゥールよりさらに古い時代、15世紀イタリア・初期ルネッサンスの画家である。日本では美術史などの専門家は別として、ラ・トゥール同様知る人は少ない。
ウッチェロの作品を最初に見たのは、70年代頃であったと思う。ロンドン・ナショナル・ギャラリーであった。「サン・ロマーノの戦い」と題した作品である。もとはフィレンツェのメディチ宮殿のために描いた作品(3部作)が、ロンドン、パリ、フィレンツェに分かれて所蔵されている。独特の構図にひきつけられ、大変面白いと思った。いつか、暇ができたら画家の背景なども知りたいと思っていた。その後、オックスフォードのアシュモリアン博物館で『森の狩』に出会い、さらにこの画家への関心は深まった。
日本では知る人も少ない。しかし、15世紀のイタリア美術史の文献を見ていると、頻繁に登場する著名な画家である。一時はモザイク画家あるいは数学者あつかいもされていたようだ。ヴァザーリの『美術家列伝』にも登場する。初期にはあの名だたるギベルティ工房で活動していた。透視画法(遠近法)に寝食を忘れて没頭していたという逸話もあり、さもありなんと思ってしまった。
その後、ふとした折に、ジョバンニ・サンティGiovanni Santiという同時代の画家が、当時のイタリア、オランダなどで活躍する著名画家を詩の形で取り上げたリストに出会った。ちなみに、サンティは画家としては凡庸だが、詩などの才能に優れた教養人と評されてきた(わずかに残る絵画作品の写真などをみると素晴らしい絵と思うのだが、美術家の世界も毀誉褒貶が激しい)。
この詩には、フラ・アンジェリコ、マザッチオ、フィリッポ・リッピ、カスターニョ、ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ヤン・ヴァン・アイク、ピサネーロ、ベリーニなど、きら星のごとき画家たちが並んでいる。別に美術史を専門にしているわけでもなく、自分だけの好みで見ているので、なんのさしつかえもない。しかし、ちょっとうれしい思いがした。ごひいきの画家が評価されていたからである。ご参考までに、このリストを記しておこう。
Fra angelico (c.1387-1455)
Paolo Uccello (1396/7-1475)
Masaccio (1401-1428?)
Posellino (c.1422-1457)
Filippo Lippi (c.1406-1469)
Domenico Veneziano (died 1461)
Andrea del Castagno (1423?-1457)
Botticelli (c.1455-1510)
Leonardo da Vinci (1452-1519)
Filippino Lippi (1457/8-1504)
Jan van Eyck (died 1441)
Piero della Francesca (c.1410/20-1492)
Melozzo da Forli (1438-1494)
Cosimo Tura (c.1425/30-1495)
Ercole de' roberti (1448/55-1496)
Perugino (c.1445/50-1523)
Luca signorelli (c.1450-1523)
Rogier van der Weyden (1399/1400-1464)
Gentile da fabriano (c.1370-1427)
Pisanello (1395-1455/6)
Mantegna (c.1431-1506)
Antonello da Messina (c.1430-1479)
Gentile bellini (c.1430-1516)
Giovanni Bellini (c.1429/30-1509)
From the prose by Giovanni Santi quoted in Baxandall
Reference
Michael Baxandall. Painteing and Experience in Fifteenth Century Italy. Oxford:Oxford University Press, 1972, 1988(second edition).