時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

日曜の美術館:マルモッタン・モネー

2005年04月17日 | 絵のある部屋
 いつの頃からか美術館めぐりがひとつの習慣?となってしまい、気がついてみると、訪れた国内外の美術館はかなりの数になった。そのいずれもが、それぞれに思い出深いものがある。ルーブル、メトロポリタン、プラド、テート、故宮(台北)など大きな美術館は、それぞれ圧倒される内容を持っているが、どちらかというと小さな美術館が好みである。適度な数の作品を、疲れない程度の時間でゆっくりと鑑賞できること、観光客も少なく、混んでいない、特別展が多い、などが理由である。都内では、庭園美術館、世田谷美術館などが、なかなか素晴らしい展示を行っている。昨年から今年にかけての世田谷美術館「世界遺産:吉野・熊野、高野の名宝ー祈りの旅ー」などは出色の展示だった。
 中規模の部類だが、ニューヨークのグッゲンハイムなどは、学生時代は大変好きで、マンハッタンに出るたびに立ち寄った。このところ、比較的訪れる機会ができた「上海博物館」が外観(鼎の形のデザイン)はともかく、中に入った第一印象が、真ん中に吹き抜けがあり 、それを取り巻く回廊のデザインなど、かつてのグッゲンハイムによく似ているなあと感じたが、グッゲンハイムと提携してのカンディンスキーの特別展を行っていたのには驚いた。
  これらと比較するとよりはるかに小さな美術館だが、別の意味で気に入ったのはパリのマルモッタン美術館である。2004年春に、東京都美術館がベルト・モリゾ(1841-1895)の子孫であるルアール夫妻のコレクションを中心に展示を行ったので、ご存じの方も多いかと思う。マルモッタン美術館の目玉といえば、やはりクロード・モネ(1840-1926)の「印象・日の出」だが、残念ながらフランス国外への持ち出しは禁止となっている。
  パリの西部、16区、地下鉄ラ・ミュエットの駅に近いこの美術館は、モネ(Claude Monet 1846-1926)のコレクションで知られている。かつてこの辺りに1年余住んだ折、場所が近くであったことからその後も良く通った。19世紀の個人の館を美術館としており、地下1階、地上2階の小規模なものだが、あたりにはブーローニュの森に近く、緑も多く、一見すると外からは美術館とは見えない。このごろは、多くの美術館 がHPを開いているが、マルモッタン美術館のHPも小規模だが、大変好感のもてるHPである。
  この美術館は美術史家のポール・マルモッタンとその父親が収集した美術品を展示しているが、なんといってもモネの作品の多くが所蔵されていることで著名である(名前自体、マルモッタン・モネ美術館となっている)。とりわけ、地下1階は、モネ・コレクションと して、有名な「睡蓮」、「ばら」など圧倒的な数が展示されている。2階には、モネ、ゴーギャン、ルノワールなどの絵で飾られている。モネは日本人の好みに合うのか、観光客の数も比較的多い。しかし、ルーブル、オルセーなど壮大な美術館が多いパリのことゆえ、観光の主流から少し外れたこの美術館は訪れる人はそれほど多くなく、ゆっくりと鑑賞できる。絵画鑑賞の合間に、眺めることのできる中庭は木々の緑が美しく、目を休ませてくれる。
  「睡蓮」をテーマとする作品が展示された地下には、真ん中に気楽に座れる巨大な円形の椅子が置かれ、360度ゆったりとした雰囲気でモネの世界に浸ることができる。大変ぜいたくな美術館である。絵画を買うなどの余裕はないが、1995-96年にかけて、この美術館で開催された「フランス絵画の3世紀」展のポスターを1階のショップで買い求め、フレームに入れて楽しんでいる。

http://www.marmottan.com/index.html

Photo:Courtesy of Musée Marmottan Claude Monnet
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