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観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

高槻先生の最終講義を聴いて-『唱歌「ふるさと」の生態学』担当編集者より

2015-03-02 21:30:40 | 15
井澤健輔(株式会社山と溪谷社自然図書出版部)

 最終講義、退官記念パーティー、参加させてくださりありがとうございました。講義もパーティーも、とてもなごやかですてきなものでした。
 シカの話はもちろん面白かったのですが、植物から昆虫、哺乳類まで生物のさまざまなつながりのお話が印象的でした。昔、今西錦司さんが書かれた「生物社会の論理」がありましたが、現代の生態学の視点からの生物社会の論理を知りたいと思いました。
 また、出版に関わる者としては、「本は著者が亡くなった後も、人に影響を与え続ける」という言葉も印象に残っています。私も本は、一生の財産になるし、その人の生き方にも影響を与えると思うので、そういう事に関わりたいと思ったのが、現在の会社に入った動機のひとつでした。
 そして懇親会の最後の「ふるさと」改めてよい歌だと思いました。最高のしめくくりに思えました。
 最近では、多自然型河川工法や自然復元の話もひと昔前より増えているように感じます。かつての「ふるさと」のように、生活のための草刈り、伐採などが「自然と」里山の自然を維持する形とは違うかもしれませんが、人と自然が共存する世界が広がっていければよいなと思います。

記載と標本の蓄積に尽くされた高槻先生

2015-03-02 21:19:44 | 15

久保麦野
高槻先生

3月7日は退官記念講演だったとのこと、聴きに行けず本当に残念でした。博物館の三河内さんが写真をメールで送ってくれましたが、懐かしのパリタさん達のビデオレターもあったそうで、さぞかし盛り上がったのではと思います。
長きにわたり、地道に生物の記載を続けてこられた先生の功績は本当に素晴らしいと思います。先生のように後世に引き継がれるような仕事をし、また後進を育てられるような研究者になりたいとは思いますが、まだまだ自分のことで手いっぱいで 駄目ですね。
これからもご指導・ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

久保麦野さんは高槻が東大総合研究博物館にいたときに指導し、シカの頭骨の研究をしています。パリタさんは当時スリランカから留学していてスリランカの人で、奥さんのローズさんとともに、ビデオメッセージを送ってくれました。現在はオーストラリア在住です。(高槻)


はじめに

2015-03-02 20:55:45 | 15
私は観察という言葉と実際に観察することが好きです。それが生物を理解するいちばん大切なことだと思うからです。そういう思いがあったので、研究室の学生に自然についてエッセーを書いてもらうことにし、そのタイトルを「観察 Observation 」としました。
 観察すれば文章が書けるということはありませんが、観察しなければ文章が書けないのは確かです。だから観察の勧めとしての機能を持たせました。同時に人に文章を書くという意識を持ってもらうことで、観察そのものに主体性を持ってもらうことを期待しました。そう、観察とは網膜にものが映ることとはまったく違うことを知ってもらいたいと思ったのです。また観察したことを文章に表現するには正確な言葉と表現が必要なことや、技術も要ることを体験してもらおうと思ったのです。
 そうして8年ほどが経ちました。私は毎月文章を書くようにし、学生には担当を指定して文章を書いてもらうようにしました。簡単なレポートくらいしか書いたことがない3年生はだいたいうまくいきません。でも、自分が見たオリジナルな体験があれば、アドバイスすることで見違えるようによい文章になりました。そのことで文章を書くことのよろこびを知った人もいるはずです。研究の成果は卒業論文に集約され、その中から学術論文になったものもありますが、オブザベーションの記録もまたこの研究室8年間の活動の蓄積になったと思います。
 2007年に麻布大学に赴任して、この3月で定年となり退職することになりました。このエッセーシリーズが引き継がれることを期待しますが、それはどうなるかわかりません。断続的でも続けてもらえれば幸いです。それでもこの号が大きな節目になることはまちがいないことで、私は最後の文章を載せることになりました。その最後の文章は最終講義の内容にすることにしました(3月8日以降掲載)。
 そうしたこともあり、いつもは扉の写真をそれぞれの季節を象徴するような写真にしていましたが、勝手ながら私がモンゴルの草原で群落記載をしている写真を載せるわがままをさせてもらいました。
 それから卒業生に声をかけたところ、いく人からの人が文章を寄せてくださいました。また、ご挨拶を送ったら、返事をくださった方、最終講義に参加して感想を寄せられた方もあり、了解を得て掲載させてもらいました。ありがとうございました。
 研究室のみなさんがこれからも観察することを研究の基本とし、野生動物学研究室が自然から学ぶという姿勢で活発に研究を進めてくれることを期待しています。8年間たいへんお世話になりました。

お疲れ様でしたークマを調べた橋本

2015-03-02 18:18:16 | 15
高槻先生

 先日は記念講演と記念パーティ、お疲れ様でした。とてもお疲れになったのではないでしょうか。予想以上に多くの、そして多彩な方々が参加しておられたので驚きました。

 講演ではこれまで聞いてこなかったような様々な研究結果が聞けましたし、先生の信条というか、いわば「高槻節」ともいえるお話もあり、大いに刺激を受けました。特に、麻布に移られてから、論文数も対象動物も増えたことは印象的でした。
 それらの中でタヌキの研究をご報告されていましたが、私は同じ食肉目のツキノワグマを対象としており、そのご指導をしていただいたことが何かお役に立ったのではないか、などと、自惚れたことを思いながらお話を伺っていました。

 東大では一つの研究テーマを深く掘り下げることを求められ、そのためにツキノワグマの研究も長く行うことの重要性を指摘しました。しかし期間が短い研究でもレベルの高い研究はできること、ただし、それをするには長い研究・観察の経験が必要であることなども感じさせられました。
 ただ、このような研究をする上で、生活が安定していることも本当に重要だとも感じています。この点では先生を羨ましく思う限りです。

 パーティでは多くの方々のお話が聞け、内容も豊富で、それだけでお腹いっぱいでしたし、同窓会にもなりましたのでとても楽しめました。おまけに岸元さんや羽澄さんの引退宣言?まであり、いろいろな情報が得られ、とても有意義でした。

 とはいえ、これからもまだまだ調査を続け、多くの論文を読ませてください。社会に向けての発言をもっとして欲しいと南さんはおっしゃってましたが、高槻先生はしていないわけではないし、(特に大学の)研究者は
色々あっていいと思っています。


森に問いかける

2015-03-02 15:49:58 | 15
吉田裕之(株式会社環境総合研究所)

高槻成紀 様

 大勢の研究仲間や先生のご指導を頂戴した方達に囲まれた先生のお姿は、何時にまして、凛として、清々しく、達成感に満ちているように感じておりました。
 最終講義をお聞かせ頂き、少ししか理解できていないにも拘わらず、判ったような誤解をし、「森に問いかけもせず」に結論付けをしている現在の自分を恥じました。
お時間が取れましたら、谷戸沢にもお出かけ頂ければ幸いです。今後ともご指導賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
 吉田様は最終講義で紹介した東京都西部の日の出町にある廃棄部処分場跡地での調査でお世話になっています。最終講義で私が論文を書くときには「森に、書いてもいいですかと聞いてから書く」という意味のことを言ったことについてのことです。(高槻)