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本と雑貨と手作りのブログ。

「月の砂漠をさばさばと」

2006-06-06 | 小説
「スキップ」を読んで、久しぶりに読みたくなった本。北村薫さんの「月の砂漠をさばさばと」です。

北村 薫, おーなり 由子 / 新潮社(2002/06)
Amazonランキング:45,496位Amazonおすすめ度:


 <目次>
くまの名前/聞きまちがい/ダオベロマン/こわい話/さそりの井戸/ヘビノボラズのおばあさん/さばのみそ煮/川の蛇口/ふわふわの綿菓子/連絡帳/猫が飼いたい/善行賞のリボン


9歳のさきちゃんと作家のお母さんのお話12編。「ダオベロマン」や「ヘビノボラズのおばあさん」など、題名だけでもなかなかユニーク☆面白い話もあれば、考えさせられるような話・切ない話など、いろんなお話がつまっています。全体的に大人向けですが、面白さは子どもにも伝わると思います~。

さきちゃんのお母さんは作家ということで、いつもさきちゃんにお話を語ってくれます。例えば、「ダオベロマン」の話では、ベランダに干していた書道の筆がなくなったことから、書道教室までの道にいるドーベルマンが筆を持っていったお話が始まります。それはちょうど富安さんのホラ話のように、愉快な不思議を感じさせてくれます。このお母さんはさきちゃんの難しい質問にも丁寧に答えていて、子どもと真剣に向き合っている大人だなと思いました。

また、お母さんだけでなく、さきちゃんのお話も楽しい!突拍子もない「聞きまちがい」の話など、お母さんとのちょっとした会話が面白くて笑えます。「こわい話」や「川の蛇口」などは子どもの感じ方や発想などが描かれていて、大人は学ぶことがいろいろあります。

二人暮しのさきちゃんとお母さんの関係は親子というより、姉妹に近いような印象。べたべたしすぎず、離れすぎていない関係でいいな~と思ったり。子ども心を持ったおちゃめなお母さんに対し、さきちゃんはしっかり者という感じで、ホントにいいコンビです。

この作品の好きなところは、親子の日常が描かれているところ。布団を並べて寝ていたり、自転車に乗る練習をしていたり、台所で料理の仕度をしていたり。子どもがいる人には当たり前の光景かもしれませんが、思わず自分の子ども時代が懐かしくなってしまいます。他にも、台風が来た日のことなど、誰もが体験するような出来事からストーリーが生まれていて、とても興味深いです。

おーなりさんのイラストが物語の優しい雰囲気にも合っていて、すごく気にいっています☆可愛かったり、綺麗だったり、いろんなイラストが楽しめて、おーなりさんの作品の中でも、特に素晴らしいと思います!